激人探訪 スピンオフ TORU(TEARS OF TRAGEDY)スペシャルインタビュー
どうも皆さん、YU-TOです。
音楽業界が混乱の渦に巻き込まれた2020年も過ぎ去り、2021年に突入して数日。
世の中の混乱は未だに続き、今年の予定や、本格的なライブ活動の復帰が未だに不鮮明なアーティスト達も多いと思う。
だが、そんな時代にも負けず、昨年は様々なアーティスト達が新たな作品を世に生み出してくれた。
ライブの自粛に伴い、作品のリリースまでもが延期になるケースも多々あったとは思うが、2020年リリースの作品には"当たり"が多かったと個人的に感じているし、そう思っているのは自分だけではないはずだ。
そんな中でも、国内メタルシーンでのリリースで大きなトピックになったのはTEARS OF TRAGEDYが4年振りとなる最新作『TRINITY』をリリースした事ではないだろうか?。
何を隠そう、自分YU-TOがサポートドラマーとしてレコーディングに参加させて頂いた作品で、11曲の中の9曲でドラムを叩かせて頂いている。
自分が参加した作品を"2020年のトピック"と形容するのは妙な気もするが、本当にそう例えてもおかしくないくらいに、この作品に対する周りからの反応はすこぶる良い。
特に同業のミュージシャン達からの評価がかなり高く、超絶テクニックと美しいメロディ、綿密に練られた楽曲アレンジなどは、TEARS OF TRAGEDYというバンドが持つポテンシャルの高さをこれでもかと感じさせる圧巻のクオリティを誇っている。
その高い評価に自分のドラムが貢献していると嬉しいのだが、『TRINITY』という作品が他を圧倒させるクオリティに仕上がったのは、やはりメインコンポーザーであるTORU氏の並々ならぬ音楽力の高さが故である事が大きいだろう。
はっきり言い切ってしまうが、「この作品に"自分(YU-TO)の要素"を入れる事が出来たか?」と聞かれたら、「入れてない」と答える。
というよりは、「入れる必要が無かった」と答えた方が正しいかもしれない。
最初にTORU氏からデモをもらった時点で、もうそこに打ち込んであるリズムはほぼ完璧なまでに完成されており、後はTORU氏の細かい要望や、ニュアンスの付け方を表現すれば良いという状態だった。
もちろん、キーボーディストのHAYATO氏が作曲した楽曲もあるが、特にTORU氏が作曲した曲のフレージングはかなり明確な意図を持ったものになっており、そこに自分のセンスが入り込む必要が全く無いドラムだったのだ。
「如何にTORU氏の頭の中で鳴っているフレーズを自分の力で表現出来るか?」それを念頭に置いたレコーディングは大変な面もあったが、ドラマーとして非常に勉強になる経験であった事もまた事実。
今回のスペシャルインタビューでは、そんなアルバム制作の裏側なども振り返りつつ、TORU氏の音楽制作に対する姿勢や、今後の活動の展望などの話を聞いていこうと思う。
TORU氏の音楽に対する価値観やルーツは、激人探訪Vol.3で既にお伝えしてあるが、そこでの彼の発言などを思い返して読んでみると、如何に彼がブレない確固たる姿勢で自身の音楽と向き合っているかが分かるインタビューとなっている。
そちらも合わせて、是非読んでみて欲しい。
きっと、『TRINITY』という作品が、より一層の輝きを持って皆さんの耳に飛び込んでくる事になると思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー今回は『TRINITY』発売記念インタビューという事で。もう結構、ファンの人達からの反響が返ってきている時期だと思うんですけど、どうですか?
TORU:まあ久し振りだしね。良い感じだと思うよ(笑)。
ー"だと思う"(笑)。今のところ、どんな声が多いですか?。
TORU:「予想より良かった」っていうのが多いんじゃないかな。「予想より激しかった」とかね。今回は自分でも、みんなが予想しているクオリティは越えれたと思うから、、"お陰様"でね(笑)。
ーいえいえ(笑)
TORU:「やってやったぜ!」って感じだよね。
ーその「みんなが予想してたクオリティ」ってどの位のところだったと思います?。前作の延長線上的なところですかね?。
TORU:そうそう。こんなに激しくなるとは思って無かったと思う。速い曲も多いし、ドラミングも勿論激しいしね。今までの3枚と比べると1番速い曲が多いアルバムだから。
ー確かにそうですね!
TORU:テクニカルでもあるしね。でも、だからって「テクニックを聴け!」ってアルバムにはなってなくて、全部"曲の為のテクニック"にはなってるとは思うけどね。
ー結構、同じバンド界隈の人達からの反響がすごく良いような気がするんですけど、どうですか?
TORU:「なめんなよ?」って感じかな(笑)。
ーはははは!
TORU:いや、マジでマジで(笑)。エースさん(※THOUSAND EYESスタッフ)とかにはデータで送っても良かったんだけど、送っても多分買ってくれるから敢えて送らなかったんだよね。それで、「もうどんだけハードル上げてもらっても、越えられる自信があるから」とかめちゃくちゃ言ってたの(笑)。
ーすげえ(笑)
TORU:聴いてくれたエースさんも、その通りみたいな感想を言ってくれてたし、あとは「曲が強いアルバムだ」というような事を言ってくれた人がいたりとかもして。
ー全曲キラーチューン的な。今回1番最初に出来た曲ってどの曲なんですか?
TORU:どれだったかな〜、、、?。2017年のある時期に、3ヶ月くらい朝から晩までずっと曲を作るって日々を送ってて、だからネタとしては結構な曲数がその時点であったんだよね。
ーそうだったんですね
TORU:最初はそのネタがあるから「2018年にはアルバム出せるかなー」って思ってたんだよ。
その時からの曲が元になった楽曲もあるから、どれが最初か?って聞かれたら答えるのが難しいんだけど、、。
でも、"幽玄”とか"Outsider"、"Frost Flower"辺りは間違いなく2017年くらいからあった。
ーへーっ!。そんな前から、、
TORU:アルバムを作るにあたって、大体イントロからサビまでのワンコーラスを作って他のメンバーに聴かせるっていうのが自分の中の定番なんだけど、もう"幽玄"とかはサビをメンバーに聴かせる前にもう1回全部作り変えたりだとか、なんか色々あったんだよね。
ーワンコーラスだけ作って他のメンバーに聴かせるっていうのは、その先の曲展開を考える為とかなんですか?
TORU:いや、とりあえず「こういう曲を作ったよ」って言って投げるだけというか。他のメンバー、特にHAYATOに「この曲があるからこっちの曲は無くて良い」とか言ってもらったり。あとは「速い曲書いて欲しい」とかリクエストをもらったりして、曲出しをしていく感じかな。
ー大体、他のメンバーさんの意見が返ってくるまでは、フルコーラス作らないんですか?。
TORU:作らないかなー。もちろん、サビから作るパターンとかもあって「取り敢えずサビだけ作った」って聴かせる事もあるし、、いや、それは今回無かったかもなー。
今回は全部律儀にイントロから作っていったかもしれない。俺的には"イントロ"ってすごい重要で。
ーおっ、どんなところがですが?
TORU:"最初はかったるくても途中から良い"とかって、そこまでの間が辛くない?(笑)。
ーそうですね(笑)
TORU:そういうのがあまり好きじゃないんだよね。もうポチって再生したら最初から良いって思えるような曲を作りたいから、イントロにはこだわってるんだよ。
ー具体的にはどんな部分にこだわってたりします?
TORU:何だろうね?(笑)。何がグッとくるかは、言葉にするのは難しいんだけど、、。自分の好きな曲とかを思い返して欲しいんだど、もう開始2秒でカッコ良くない?(笑)。
ーカッコ良いです(笑)
TORU:「よしっ!!」ってなるじゃん?(笑)。そういうのを目指してるから。
"長く聴かないと分からない"みたいな曲にはしたくないかなー。もちろん、「噛んで味が出る」みたいなのも悪くないと思うけど。
ー例えば、サビから作曲する場合ってメロディから作っていくんですか?
TORU:そうだね。サビからっていうか、"最終的にサビになる"みたいな事が多いかもしれないけど。
俺の作曲って基本的には"コード進行ありき"なの。コード進行の上にどんなメロディを散りばめるかを考えたり。でも、それだけだと同じような感じになるから、"リズミカルにメロディを作ろう"みたいな事も考えたりして、そういうのって意外とメタルじゃない音楽が参考になったりもするんだよね。
ーあまりギタリストでメロディから作曲する人っていないかもしれないですね
TORU:そう。それがメタルの"良いところ"でもあり、"弱点"でもあり。
"リフありき"なのは、そりゃあそうなんだけど、やっぱり"歌もの"だと思って演ってるから、色々なキーで色々な表現がしたいっていうのがあって。
ギターから作曲すると、ついつい同じキーになりがちになるっていうのはあるんだよね。
ーなるほど
TORU:それでもカッコ良いっちゃカッコ良いんだけど、「結局そのキーのカッコ良いコード進行ってそうなっちゃうよなー」って色々なバンドを聴いて思ってて。
勘で作ってるんだとしても、"こういうのがカッコ良い"っていうのは、もう繰り返されてきてるから。
もっと皆んな「自分のカッコ良いと思う曲って何なんだろう?」って事を考えて作れば良いのにって思っちゃう。
ーTORUさん自身が"カッコ良い"って感じる楽曲って、やっぱり90年代J-ROCKだと思うんですけど、個人的に『TRINITY』ではその影響がかなり出てるなって感じます。
TORU:そう。もう3rdくらいから気にしなくなったというか。「自分の好きなものを出そう」みたいな。
ー特にボーカルのメロディに凄い"90年代"を感じるんですよ
TORU:何か、ぶっちゃけ「90年代にしよう」って思ってるわけじゃ無くて、その辺の音が自分の青春な訳だから、もう取れないよね(笑)。"自分が良いと思うメロディの基準になってしまってる"っていうかさ。
これはもう世代の問題で、自分より若い世代だったら00年代になるだろうし、もっと若い世代だったら2010年代のメロディが基準になるんだろうしね。2000年がもう20年前っていうのも信じられないけどさ(笑)。
ーああ、そうか、もう20年前だ!
TORU:頭抱えるけどね(笑)。でも、L'Arc〜en〜CielとかLUNA SEAって、未だに現役だったりするじゃない?。だから自分が好きだったバンド達がまだ現役でいるっていうのは、それだけ強いバンドだったって事なんだろうし、やっぱり曲も強かったんだと思うんだよ。
ー今回はかなり"ラルク感"みたいなのは感じましたけどね
TORU:おっ、本当に?。ラルク感はもう仕方ないよね、、、人生でラルクを1番歌ってるかもしれないから(笑)。本当にL'Arc〜en〜CielとSIAM SHADEは、別に"研究"とかじゃないね、聴きまくってるから(笑)。
ーははは!!
TORU:めちゃくちゃ聴いてきたし、未だに聴いて「カッケェ!」って言ってるから(笑)。1stの時とかは、いかに海外バンドみたいにするかにこだわってて、日本のバンドとかを聴かなくなってた時期もあってね。
でも、ふと立ち返ったときにSIAM SHADEとかJanne Da Arcとかを改めて聴いた時に「もう、嘘付けない」みたいな(笑)。そういう気持ちが段々出てきて。
ー意識しなくても、その辺のバンド達からの影響が出てしまうんですね
TORU:逆に、前は意識して影響が出ないようにしてたからね。海外バンドからの影響だけを取り入れてやろうとしてて、自分の好きなものがあるのにそれを出そうとしてなかったっていうのが1stの頃だったかな。
ーもう今回は、正直に影響を出したと?
TORU:うん。あと意外かもしれないけど、中田ヤスタカの楽曲を凄い研究したのもあるから、意外と曲の作り方とかコード進行は、ラルクとかじゃなくてその辺からの影響なんだよ。宇多田ヒカルとかもそうだし。
最近って訳ではないけど、ゲスの極み乙女とかも凄い好きなのね。だから全部の影響が90年代っていう感じでもないんだよね。
ーやっぱりメタルよりも、J-POP寄りの楽曲を聴く事の方が多いですか?
TORU:多いね。Spotifyのさ、"2020年あなたが1番聴いたジャンルランキング"の1位、やっぱりJ-POPだったもん(笑)。2位はプログレッシブメタルだった(笑)。
ーああ、もう"正に"ですね(笑)
TORU:そう、"正に"(笑)。あと、ゲーム音楽はめちゃくちゃ影響あるよ。それは間違いないね。
ーゲーム音楽というのは、やっぱりRPG系の?
TORU:そうそう。もうベタに"ファイナルファンタジー"とか"ロマンシングサガ"とかね。
ーその影響っていうのは、やっぱり"壮大さ"みたいなところ何ですかね?
TORU:いや、何なんだろうね?。音楽演る前はゲーム会社に就職したかったし、ゲーム以外に興味のない人生だったから。
当時は、誰が曲を書いてるかなんて知らなかったけど、ゲームばっかやってる訳だから当然ゲーム音楽が馴染むよね。
ー自身の楽曲で、例えばアレンジとかの部分で1番色濃くゲーム音楽からの影響が出てるポイントってどこだと思います?
TORU:やっぱりキャッチーなところじゃない?。あとは、意外とファイナルファンタジーのラスボス系の曲って変拍子とかのプログレ要素が入ってたりするんだよ。
ー自分はゲームとかやらないんですけど、確かにそんなイメージはありますね。緊張感がある感じというか。あっ、そういえば数日前にインストアライブをやってましたよね?
TORU:うん、やったやった。
ー退院後、すぐのライブでしたけど、大丈夫でした?。
TORU:まあ、ギリギリ(笑)。入院してなければ、あともう1曲出来たんだけどなって感じだったけど。
ーアルバム発売前後は結構バタバタでしたよね?
TORU:バタバタしてたねー。アルバム発売前に入院して、入院してる最中にアルバムが発売して、インストアライブも間に合うかどうかギリギリだったんだよね。
最初は12月4日に退院って言われて、「えっ!?1日しか時間無い!」ってなったけど、何とか1週間で退院出来たから、その後すぐにアコースティックのアレンジを固めて、練習してって感じで。
ーやっぱり、制作の疲労が溜まってたんですかね?
TORU:いやー、分からない。お腹が痛いのは小さい時からあるから。結局、普段だったら入院しないけど、今回はたまたま入院になったって感じだったと思う。良くあると言えば良くある感じなのね。
ーお大事にして下さい、、。話をアルバムに戻して、、個人的に今回は"メロスピ感"みたいなものをあまり感じなかったんですよね。
TORU:そういうメロスピがめちゃくちゃ好きだった10代があって、アプローチとしてはその要素があるとは思うんだけど、やっぱり"オリジナルでありたい"っていう気持ちの方が強いから。
"いかにも〜"みたいなのは嫌なんだよね。捻くれてるんだよ(笑)。
ーはは!。今回、自分は9曲ドラムで参加させてもらってますけど、もうレコーディングの話をもらった時から結構な曲数がありましたよね?
TORU:うん、あったあった。アレンジ詰めるのが大変だった。デモにギターが入ってない曲もいっぱいあって。
ーそう言えば、そうでしたね!
TORU:もうその状態のまま、ボーカルの本番レコーディングとかやってたからね。ボーカルを録り終わった後にギターアレンジして、もう1回本番を録ってとかやって、シンセアレンジも自分でやるし、ベースも自分が弾いたし、、めちゃくちゃ忙しかった(苦笑)。
ーやっぱり疲労が溜まってたんじゃないですか?(笑)
TORU:いや、別に寝ないで作業してても具合悪くならない時はならないから(笑)。
ー疲労って蓄積しますからね、、。ドラム録りを始めたのって3月〜4月とかでしたっけ?。割とコロナが流行り出して直ぐでしたよね?
TORU:そうだね。緊急事態宣言の前くらい?。解除されてからだっけ?
ーいや、出てる最中だった気がしますね、、。
TORU:そうか、そんな真っ只中だったか(笑)。春から夏ぐらいに掛けてがレコーディングの佳境だったんだよね。
うちってアルバムが冬くらいに出る事が多くて、必然的に夏はいつもレコーディングしてるなーって思う(笑)。夏はレコーディングの思い出がいっぱいあるよ(笑)。
ー良いのか悪いのか(笑)。何か、話をもらってからドラムを録り始めるまでも長かったし、録り終えてから完成するまでも長かった気がします。
TORU:うん、毎日息切れしてたよ(笑)。座ってるのに息切れして作業してた(笑)。
先が長くて気が遠くなる思いでやってたもん。やる事が多過ぎて。自分の作業量的には過去1番だったんじゃないかな。
制作の中で、ギター弾いてる時間なんて本当にちょっとしか無かったと思う。アレンジと編集がすごい大変だった、、。まあでも、それをやっただけの作品になったと思ってるけどね。
ーこれだけTORUさんが1人で色々やったのって初めてくらいな感じだったんですか?
TORU:いや、もうやる事はいつも通りな感じだったんだけど、"いつも以上に細かくやった"って感じかな。
ー何でまた今回はそんなに細かく詰めようと?
TORU:やっぱりね、ミックスする段階になって「もうちょっと細かくやっとけば良かったな」って思うんだよ。特にシンセ系は「ここトラック分けておけば良かったな」とか毎回あって。
いつもは1つのトラックにしてエンジニアに渡すやつを、今回は3つとかに分けて「こことここを分けよう」とか、そういう精査をする作業を全曲でやったから、すごい疲れた。
絶対やった方が仕上がりは良くなるって前から分かってたんだけど、あまりにも面倒臭くて、、。でも今回は諦めてやったって感じだったかな(笑)。
ーシンセのトラックを細かく分ける事でどんな効果があるんですかね?
TORU:ピンポイントでミックスの時に「ここをこうしたい」っていうのが素材を出した後だと戻れなくなっちゃうんだよね。
例えば、和音が鳴ってて普通だったらそれを2MIXで渡すんだけど、今回はそれを上の音は上の音だけとかにしたり、、。
ーうわー、スッゲー大変(笑)
TORU:元々1トラックだった音を2トラック、もしくは3トラックにするって作業を全曲でやってね、、、俺が(笑)。まあ仕方ない。
ーその方が聴こえ方のバランスを細かく調整出来ますもんね
TORU:そうそう。全部混ざってるとトータルで大きくなったり小さくなったりするから。やっぱりそういう部分って影響がデカイんだよね。
ーなるほどねー。とまあここで、『TRINITY』収録曲の話を1曲ずつ聞いていこうと思います。イントロ明けてからの1曲目、"Nonsite"は正統派というか、今回の中で1番王道なメロスピ感がある印象ですけど、もう出来た当初からこれを1曲目にしようと考えていたんですか?
TORU:そうだね。というよりは、1曲目になるような曲が無かったからその為に作ったって感じだったかな。
ーピックスクラッチから始まるのが1曲目感がありますよね
TORU:あれは片方のチャンネルのを逆再生にしてるんだよね。2回同じことを弾いて、その内の1つを逆にして混ぜるっていう。それがこだわりかな(笑)。
ーあっ、そうなってるんですね!。ドラム的にも王道だけど細かく見ていったら難しい曲ではありましたね。
TORU:多分、王道のメロスピでは演らないようなアプローチをちょいちょいしてるから、そういう部分もこだわったところではあるよね。
ー王道のメロスピじゃないアプローチってTORUさん的にはどの部分でした?
TORU:Bメロのキックのシンクロだとか、あとは間奏のリムでカツカツやってる部分とかの各所かなー。
ーあとシンバルレガート的なフレーズだとかも、、
TORU:そうそう、あのJAZZぽいライドのフレーズとかもそうだし。
"1曲の中の場面展開をどうしていくか?"っていうのは各曲結構こだわってて。
やっぱり"飽きずに聴いてもらいたい"っていうのもあるし、俺の作った曲で10分とか長いものが無いのは、何回も聴いて欲しいから極端に長い曲は作らないっていうのはあるんだよね。
ーあと、微妙に拍の裏から入るようなフレーズとかも多くて。そんな部分も難しかったです。
TORU:シンコペーションは多いかもね。多分それって、メロディに引っ張られてるんだと思うんだよね。
"Nonsite"に関しては"テーテテテテー♫"ってわざと拍の頭から始まるフレーズにしてるんだけど、自分的にはあんまり拍の頭から始まるメロディってカッコ良いって思えるメロディが少ないの。
メロディとリズムを上手く融合させるというか、"リズムをリズムだけで終わらせない"っていうアプローチは良くやるかもしれない。あと曲の1番と2番で少しアプローチを変えたりするのも必ずやるし。
ーメロディとシンクロしてるリズムパターンは全曲通して多かったですね。次の曲の"幽玄"は、これまたイントロのリズムが印象的な楽曲で。
TORU:この曲は珍しくギターから作ったんだよ。元は確かもっとテンポが遅かったような気がするんだよね。もっとマッタリしてたし、最初はあんな激しくなるような曲でもないと思ってたんだけど、、。
「これで良いのか?」っていう葛藤が凄い制作中に色々な曲であって、この曲は特にそうだったのかなー。何か「平和過ぎるな」って思っちゃったんだよね。「もっと振り切っていけるだろ!」っていうのが出たかもしれない。
ーこの曲はテンポが遅かったら、かなり印象が変わってきてしまいそうですね
TORU:もっと"かったるかった"かも知れないね。どんどんテンポが上がっていった気がするもん(笑)。最初はBPM130くらいだった気がするんだよなー、、。結局そこから20くらい上げた気がする。
ー最初のリフのリズムが曲の仮タイトルになってましたよね?(笑)。"デデデ"っていう(笑)
TORU:そうそう(笑)。
ーデモが送られてきて、「"デデデ"って何だ?」って思ったら再生した瞬間に意味が分かったという(笑)
TORU:ははは!。同じようなリズムパターンになりがちなのもメタルリフの戦わなきゃいけないところだと思ってて。定番のカッコ良いリズムは"ここぞ"っていう時にしか演らないみたいな。
ブリッジミュートでズクズクさせるところと普通に弾くところは「どういうパターンでやろうかな?」っていうのをめっちゃ考えるのね。その結果、俺のバッキングはめちゃくちゃ細かくなるっていう(笑)。
ー確かに、めっちゃ細かいっす(笑)
TORU:定番ばっかり演ってると自分が飽きるからね。
ー作ってから後悔する事ってないですか?。「ムズっ!!」みたいな(笑)
TORU:いや、「難しい!」とは毎回思うけど、自分のこだわりポイントとして、"自分の出来る範囲内だけでやろうとしない"というのもあって。
ーそういうフレーズって弾きながら出てくるものなんですか?。打ち込んで作ってみたりとか?
TORU:単音フレーズとかは打ち込んでみたりもするね。大体はコード進行が決まって、その中で「どうやって刻もうか?どういう音の可能性があるかな?」って考える。
もうギターを入れるのって本当に最後で、"幽玄"はギター先行なところはあったかも知れないけど、サビとかは絶対にギターでコード進行考えてないんだよね。
「この上にどうメロディを付けよう?」じゃなくて、「どういうメロディ、コード進行にしよう?」っていう作り方をするんだけど、それは鍵盤でやった方が分かりやすいんだよ。ギターだとちょっと制限があり過ぎて、考える時にちょっと大変。
ー本当にメタルにおいては珍しいタイプの作曲法ですよね。あんまりTORUさんみたいな作り方してる人っていないんじゃないですか?
TORU:そうかもしれないねー。でも、そうしないと同じような曲調になりがちというか。デスメタルとかはあれで良いと思うんだけどさ。
色々聴くけど、意外性の無いメロディだけだと聴いてて飽きちゃって。
ー"意外性の無いメロディ"も、それはそれで良いみたいなのもありますよね?
TORU:いや、良いメロディは別に難しくなくても良いと思うんだけど、それってやっぱり作るのが難しいんだよね。何か"たまたま要素"が強過ぎる気がするんだよなー、、そんな事無いのかな?(笑)。
"難しい=カッコ良い"では無いし、その辺はかなりの量を聴いて、"自分は何が好きなのか?"っていうのを掘り下げて研究してるから。
普通に曲聴いてても、「今の転調良かったな」とかそういう聴き方を必然的にしちゃうよね。それで、自分が好きって思えるものを自分の中にめっちゃ入れようとしてて。影響される事を俺は悪い事だとは全然思わないから。
ーなるほど。それで次の"Innocent gram"ですが、これはHAYATOさん作曲で。何か、この曲は「1番TEARSっぽくない曲だな」って感じましたね。
TORU:いや、どうなんだろうね?(笑)。何か、明るい曲を書きたかったらしいよ。
ー最初にこの曲のアイデアを聴いた時はどう思いました?。
TORU:ライブで演って楽しかったから良いかなって感じだったかな。この曲はね、ライブで演ってたんだよ。
ーあっ、そうだったんですね!
TORU:今回のアルバムの中では、この曲が1番古い。HAYATO曲はね、俺的に「これ大丈夫かな?」って思ったりもするんだよ。
ー(笑)
TORU:デモの段階ではね(笑)。「これどうなんだろうな〜?」みたいな。でも、出来上がったものを聴くと「ああ大丈夫だったんだな」って思うけどね。最初は心配になる事も多いよ(笑)。
ー割とHAYATOさんは、ラフな段階で曲をメンバーに投げる事が多いんですか?
TORU:いや、そんな事はないんだけど、ギターは全く入ってない状態だから。だから曲の雰囲気は"俺がどうするか"によるというか。
"俺のギターがこういう感じだからHAYATOの曲がこう聴こえる"っていうのもあるし、そういう事はお互いにあって。
"Innnocent gram"はサビのコード進行が難しかった。どうして良いのかよく分からなくて、「マジか!?」って(笑)。ベースも難しかったし。
ーこの曲はドラムのアプローチも中々決まらなかったんですよね。メタルっぽいフレーズを入れても合わないなって思ってしまって
TORU:ああ、そうそう、わかるよ。
ーこの曲だけ、あんまり2バスを踏まないようにしたんですよ
TORU:俺も、この曲だけギターの音変えたから。これはメタルというよりはJ-ROCK的な感じなのかな。
ー自分は割と"ピコリーモ"っぽいというか、パンクっぽいなって思いましたけどね
TORU:いや多分ね、Janne Da Arcなんじゃないかと思うよ。
ーああ!!なるほど!!
TORU:"シンセが入ってる"っていう意味ではね。前はTUBEとか言ってたような気がするんだけど(笑)。
ーいや、TUBEでは無い(笑)
TORU:これは"夏曲"だから、、まあ言ってるだけだけどね(笑)。
あと「SIAM SHADEみたいなバッキングを弾いてほしい」っていう珍しくピンポイントでバンド名が出る要望があったから、「任せんしゃい!」って感じで。
ーSIAM SHADEにもこういう楽曲結構ありますもんね。それで次の"Anonymous"ですが、凄いリズムが細かくて、、
TORU:キメは多いかもしれないよね。
ー打ち込みっぽいドラムフレーズが似合う感じだったんですよね。もうBメロとか「これどうしようかな、、」ってめっちゃ悩みました
TORU:分かるよ。俺も「どうしようかな?」って思ってたもん(笑)。
ーははは!。何か「どうしようかな?」って思いながらリズムを打ち込んだんだろうなっていうのが分かったんですよね
TORU:「キメはこうなんだけど、ドラム的にどうするんだろうな?」って感じだったからねー。
ーでも、結果的に打ち込みのフレーズからそんなに変えて無いんですよね。だから、「結局はあれがベストなフレーズだったのかな?」って思ってるんですよ。
TORU:そうそう、だから難しいよね。俺はドラムが叩けないからさ。もうイメージの範囲内で打ち込んだって感じで。オリジナリティを追求していくとそういう事が起きるよね(笑)。
ー(笑)
TORU:俺としては"難しいから"って理由で諦めたくは無いんだよね。テクニック的な問題で解決する事だったら、そこは解決出来るかなーみたいな。どの曲もそうだけど。
面白い事を思い付いて、「そう出来たら良いけど出来ない」っていうのはちょっと勿体無いって思っちゃうね。
イントロの音が飛ぶようなフレーズもギターで弾いてて、ギター向きのフレーズでは無いんだけど、"自分が弾かない"っていう選択肢があるのか?って言ったらやっぱり無いから、もう頑張って練習するって感じ。
ーあとこの曲、凄いL'Arc〜en〜Cielっぽいなって感じたんですよ。メロディとかテンポ感とかが。もちろん、L'Arc〜en〜Cielよりリズムアプローチは細かいですけどね
TORU:あっ本当!?。これ、エンディングはAメロで終わるんだけど、そのパターンは完全にラルクだよ(笑)。"The fourth avenue cafe"みたいな。
ーああ!分かります(笑)
TORU:"1回登場してるどこかのセクションのメロディで終わる"っていうアプローチなんだけど、それは完全にラルクを参考にした。上手くいって、「よし!」って思ったよ(笑)。
オープニングに色々とHAYATOが音を入れてくれてて、映画の"インターステラー"みたいな宇宙感で「おおっ!」って思ったね。
Aメロの裏でもキラキラした音が入ってるんだけど、それもHAYATOが入れた音で、自分が想像もしてなかったような音がかなり入ってて、かつメロディ的にも面白くって。「さすが!」ってメンバーながら思ったね。
ーこの曲、仮タイトルは"近未来"でしたもんね(笑)。その一方で、次の"Outsider"は今回の最速曲ですよね?
TORU:どうなんだろ?。BPMで言ったら220位だけど、サビは普通に8ビートだからね。
ー最初のキックのシンクロとか、デスメタルっぽいと言えばデスメタルっぽいじゃ無いですか?
TORU:うん、厳つくね。スゲー速い2バスを入れてくれて、「このテンポで踏めるんだ!」っていう驚きもあって(笑)。
ー最初、ブラスト入れようとしてましたからね(笑)。
TORU:自分の想像以上に厳つくなったっていう(笑)。いい意味でね。
ーでも、イントロ以外はいつも通りのTEARSっぽいという印象がありますね
TORU:その辺の対比を出すっていうのも差別化出来てるところだと思うんだよ。
自分が好きな海外バンドとかでも、イントロカッコ良かったけどAメロ入ってガッカリみたいな事もあって、自分の曲はそうならないようにしようって事も意識したかな。
ーそこから、アコースティック曲の"after song"にいくわけですか、この曲もメロディから作ったんですか?
TORU:いや、この曲はアコギでイントロ弾いたのが始まりかなー。いや、どっちだったけな?、、でもピアノでコード進行とメロディ考えたのはいつも通りで。
確かBメロはデモ通りなんだけど、Aメロとサビはデモと違うかもしれない。もっと平和だった気がする。
ただ明るいだけの曲だったんだけど、もっとワクワクというか、グッとくるような曲にしたくて、変えるのは面倒くさかったけど頑張って書いたね。
ーもう最初からアコースティック曲にしようと?
TORU:そうそう、最初から"アコースティック枠"って感じで。
ーギターフレーズ、エモーショナルで良いですよね
TORU:おおっ(笑)。このギター、指弾きだからね。
ーへえ!何でまた指弾きに?
TORU:得意だからね。多分あんまりいないでしょ?。つま弾く位は出来るかもしれないけど、俺はガッツリ指で弾けるから。
あと弦の種類もナイロン弦にしてて、ピックだとやっぱりバチバチな音になっちゃうんだよね。指の方が柔らかい感じになる。
敢えてそうしたって訳でもなくて、"ナイロン弦を張ったアコギを指で弾く"って自分にとっては自然な事で。
ーそういう弾き方する人も見た事ないですね
TORU:そうだね。エレキの方が先だけど、俺はクラシックギターも10年位演ってたから全然普通の事って感じなんだよ。結構、強みだと思うんだよね。出来る人が少ないからこそ。
ーそうですね〜。次の"NO.5"はHAYATOさん曲で、体感的には最速くらいな曲ですね。この曲は2バスとかよりも、合間に入るフィルが難しかったです。
TORU:速いよねー。HAYATOはHAYATOで、リズムに対するこだわりが凄いあるから。
ーHAYATOさんって、リズムのどういう部分にこだわったりします?
TORU:いや、何なんだろう?。でもやっぱり、メロディに対してのリズムっていうのは俺と一緒で、「こういうメロディだからこういうフィルが欲しい」とか、そういう感じだと思うよ。
ーHAYATOさんとも一緒に作業したりしたんですけど、結構生っぽいニュアンスの出し方をHAYATOさんは欲しがるなって思ったんですよ。やっぱり、Xからの影響なのかなって
TORU:絶対そう。HAYATOの打ち込むドラムって、タムが多いんだよね(笑)
ーははは!まあ、無理やり3点セットで演りましたけどね(笑)
TORU:やっぱりメロディが先行だから、「メロディがこうだからリズムはこうあって欲しい」ってめっちゃ思ってると思う。
この曲はBPM的にもアプローチ的にも凄いストレートだから、「この曲良い!」っていう声も多いんだよね。俺的には「意外だな」って思ったんだけど。
ー確かに1番メタルファンに刺さりやすい曲というか
TORU:大変だけどね。テンポが速いと演れる事も限られてきちゃうからさ。それがちょっと難しいところなんだけど。その中でいかに面白くするかを頑張って探すしかない。その辺も挑戦という事で。
ーTORUさん的に、面白く出来ました?
TORU:Bメロとかは自分っぽくなったかなって思うかな。でも難しかったなー。
白玉で"ジャーン"じゃつまらないし、刻みながら細かく何かをやるにはBPMが速過ぎるんだよ。自分と向き合う感じだったかな、あれは(笑)。
ーギターで面白いアプローチを色々演るにはBPM190はちょっと速過ぎですよね
TORU:速いねー。でも半分にすると遅過ぎるっていうのもあって、難しいんだよね、絶妙。上手いとこで3連とかを挟むしか無いかなーって思った。
ーそこから一転して、次の"frost flower"はまた異色なナンバーで
TORU:あっ、そう?。最初はね、同じようなタイプの曲が3曲くらいあったの。それで、HAYATO推しがこの曲だった。だからこの曲が選ばれたって感じだったかな。
ーデモ貰った時点で、この曲が1番印象に残ってたんですよ。「こういう曲も演るんだ!」みたいな。サウンドのカテゴライズ的にメタルでは無いじゃないですか?
TORU:俺もそうだと思ってるんだけど、「全然メタルだ」って言われた事もあって「難しいな」って思ったけどね。
ーえっ!?そうなんですか、、それは誰に?
TORU:いや、うちのHARUKAに(笑)。「全然ポップスじゃない」って言われて。俺はポップスだと思って作ったし、ミックスの時に「メタルっぽくしないでくれ」ってHiroさん(STUDIO PRISONER)にも言ったんだけど、「世の中のポップスはこういう感じではない」とバッサリ言われてしまった(笑)。
ーまあ、ロックな感じもしますけどね、、
TORU:"俺なりのJ-POP"だから全然良いんだけどね。
ーこの曲こそまさに、"ラルク感"ですよ
TORU:ああそう!。いやー、自分じゃ分からないねー。ラルクが演るようなコード進行ではないはずなんだよね。
別に何かを参考にして作った訳ではないんだけど、HAYATOが「これは冬の曲だ」って言って、「ええっ!?」って思って。「そんなつもりで作ってないんだけどな、、」みたいな(笑)。
でもHAYATOがシンセアレンジしてくれたら、めちゃくちゃ冬の曲みたいになってて、そこからかな、「じゃあそういう方向にしよう」ってなってアレンジしていったのは。だから、最初の段階ではこういう風になるとは俺も思ってなかった。
ー最初はこの曲もボーカルのメロディとコードから?
TORU:これはイントロのピアノからだったと思うなー。ああいうの得意なんだよ。どの楽器でもそうだけど、そんなに難しい事をしなくても印象的なフレーズって作れると思うんだよね。雰囲気が出せれば良いんだよ。
色々とアコギ入れたりだとか、自分が思ってたようには出来たかな。
あっ、そういえば、"ラルク感"はギターソロがめっちゃクリーントーンだからかも。あと、2番のAメロで、右チャンネルだけちょっと歪んだクランチ気味のギターが入ってて、それは完全にラルクに寄せたかもしれない(笑)
ーははは!
TORU:「めっちゃ Kenちゃんにしたろ!」って思ったかもしれない(笑)。メロディとかじゃなくて、構成とかその辺かもしれないね。
ーまたテンポ感とビートが難しくて。
TORU:跳ねた感じのね。ああいうのもまた、難しいよね。
ーそして、次の"時に鏡は嘘をつく"は、これまた高速ナンバーで。この曲では作詞もTORUさんがやってますよね?
TORU:うん、少しね。俺は基本的に"音先行"で、歌詞を書いてそれに合わせて作曲するって事は無くて。だから「この曲はどういう曲なの?」って聴かれても、「いや、別に、、」みたいな(笑)。
でも、ボーカル的にはイメージを膨らませて歌詞を書かないといけないじゃない?だから何かしらネタがあった方が良いっていう話があって、この曲はちょっと歌詞を書いてみる形になった。
そしたら意外と、HARUKAはHARUKAでもう歌詞を書き始めてたみたいな(笑)。そういう事があって2人の歌詞が混ざった形になってるね。
だから、"助ける為に書いた"って感じかな!(笑)
ーははは!。どういうイメージでこの歌詞は書いたんですか?
TORU:やっぱり、「曲に合うような歌詞が良いな」って思ったよ。この感じの曲調で、バカ明るい内容の歌詞には出来ないって思うんだよね。
でも作詞は難しいよ。日本語探す事からするもん。「どういう言葉があるかな?」とか「こういう言い回しは不自然かな?」とか調べたりするもんね。
難しいんだよね、人に言いたい事が無いから(笑)。「自由に生きて欲しい」っていうのが全人類に言いたい事だから(笑)。
ー(笑)
TORU:案外HARUKAの書いた歌詞が「あっ、そういう感じ!?」って思ったけどね(笑)。
「俺の歌詞全然関係無くない!?」って思ったけど、その対比もまた面白いんじゃないかなっていうところで、それでタイトルもそうなったみたいなね。
ーあの歌詞は、どんな事を思って書いたんですか?
TORU:何だろうな?(笑)。あくまで俺が書いた部分に関してだけど、「凄い近くても相手の事を理解するのは難しいな」っていう話。でも、それで諦めるんじゃ無くて、「それでも一緒に頑張っていこうよ」みたいな感じかな。めっちゃ分かりやすく言うと。
ー何か、意味深な感じですね(笑)
TORU:まあ、4年間色々あったからねー(笑)。プライベートの事もそうだし、バンドの事もそうだし。でも、そのままだと思うよ、歌詞そのままな感じ。まあ「人間模様は難しいな」って話よ(笑)。俺が書いた部分はね!。
ーなるほど(笑)。最後の"クロノメトリー "は1番エレクトロっぽい曲調で、これはHAYATOさん作曲でしたよね?
TORU:そうそう。もともとHAYATOはユーロビートとか凄い好きなんだけど、そういうのをやって来なかったんだよね。
でも、そういうの機材とか音作りにめちゃくちゃ詳しい人とHAYATOがたまたま知り合いになって、色々教えてもらえる機会が増えたんだって。そのお陰かな、こういうサウンドをあいつが使いこなせるようになったのは。
珍しく、俺が「これどうやってるの?」って聞いたからね(笑)。
ーへぇ〜!!
TORU:この曲も最初もらった時は「えー、大丈夫これ?」って思ったけどね(笑)。歌入ってない状態で聴いたら、最初は明る過ぎる感じがしたんだよね。
でもね、俺は意外と今回のアルバムの中で1番この曲が好きなんだよね。気に入った。だから何だかんだで正解だったんだなって思う。
ーすごく間奏が長いというか、ワンコーラス終わった後の間が斬新で面白かったです
TORU:トランスとかそういうのからの影響だと思うけどね。MVが上手いことなってて、「編集が凄いな」って思ったよね(笑)。「こんな映像になるんだ!」って一同感激で(笑)。
ー大胆にCGを使った感じで。あれはどうやって撮影したんですか?
TORU:体にプロジェクションマッピング当てたりとか色々やったよ。合成で体を光らせてるわけじゃ無くて、直接体に当てて光ってるんだよね。
ーへえっ!!。撮影はどこかのスタジオで?
TORU:いや、外だよ。昼からも撮ってたけど、夜の真っ暗な中で体にプロジェクター当てて撮ってるって感じで、バックは完全に夜景なんだよね。海があって後ろに街があってみたいな。
スタジオは一切使ってなくて、全部外での撮影。
ー全くそう見えないですね。てっきりスタジオ使ってるんだと思ってました。
TORU:そう。だから全然予算掛かってないんだけど、もう監督のアイデアだよね。「すげぇ!!」って思った。
曲も凄くて、あれが1番シンセのトラック数が多かったんだけど、トラック数が多過ぎてミックスが心配だったんだよね。でも上手くやってくれて。
ーこの曲にも近未来感がありますね
TORU:どうなんだろうね、一昔前の音になってないかな?(笑)。そんな事ない?。
ーどこか懐かしい感じはしますよ
TORU:はは!!、世代だね(笑)。
ーそんな感じで『TRINITY』収録の楽曲を振り返ってみましたけど、凄く新しい事をやっていながらも、TORUさんのルーツにも近いような音に仕上がってますよね
TORU:"ありそうで無い"みたいなのが多いと思うんだよね。"メロスピとも言えるけど何か違う"みたいな。日本のメロスピって、もっと洋楽っぽい事を演ろうとしてるんだよ。悪い事じゃないんだけど、何か"洋楽ナイズド"し過ぎと言うか。
それがその人達の本当に演りたい事なのだったら、俺が言う事は何も無いんだけどね。
でも、俺は自分自身が長く聴き続けられるような作品にしたいし、聴いてもらう人にも1回聴いて終わりじゃ無くて、"何回も聴きたい"と思ってもらえるような作品を作りたいと思ってるから。
ーなるほど
TORU:だからリズムのアプローチとかもそうだけど、各曲に"フック"を散りばめて、1曲の中で色々な場面展開をさせるような心掛けているんだよね。
ー"J-POP臭のするメタル"って結構ありますけど、『TRINITY』はそうでありながらも少し違うと言うか、、
TORU:どうなんだろうね?(笑)。でも、"コード進行ありき"で作ってるから違うみたいなところは絶対にあるね。ギターでギターリフから作っちゃうと、こうならないんだよね。
そうしたいんだったら勿論それで良いんだけど、"こういうリフが出来たからこの上にメロディを乗っけよう"じゃ無いんだよ。
ーもう絶対的に歌のメロディはTORUさんが作るんですよね?。
TORU:俺の曲はね。HAYATOの曲はHAYATOが書くよ。
ーHARUKAさんはメロディを作らないんですか?
TORU:作らないねー。でも、この間のアコースティックライブで、曲のエンディングで珍しくスキャットしてたよ(笑)。
もちろん、コード進行に合わせて何と無く歌う事はみんな出来ると思うんだけど、"音の可能性"というか、"音選びの可能性"を俺は研究してるから。"意外とこのコードの曲ではこの音が選べる"とか、"こういう音を選びがちだけど、この音を選ぶとこう聴こえる"とかさ。
そういう研究をめちゃくちゃしてて、「サビでこのコードから始まった時に、どの音を鳴らしたらどんな風に聴こえるかな?」っていうところからメロディ作りが始まったりもするんだよね。
自分が好きなコードと、どういう音を弾くのが自分は好きかっていうのは勿論分かってるし、敢えてそこを外すやり方もしてるし。そういう事をやってく内に、ギターを弾かなくなった(笑)。
ー(笑)。曲作りをやっていくと、段々そうなってきますよね
TORU:そうそう。メタルとかメタルじゃ無いとかは二の次で、"歌ものを作る"って考えた時に、絶対的にボーカルのメロディラインが大事で、それがあった上で各パートがどうその曲を彩れるかって事だと思うんだよね。
自分が聴いてきた中で、めちゃくちゃ巧いのに曲がピンと来ないなと感じる人もいたりして。究極のテクニックを使ってイマイチな曲を弾いてもさ、それはやっぱり"イマイチな曲"なんだよね。それだと勿体無いから。
勿論、下手なよりは巧い方が良いけど、それよりもオリジナリティがあって"良い曲"なのが良いよね。
巧い人、いっぱいいるからなー。
ーまあ、"巧い人"はですよね
TORU:"俺が1番巧いんだ選手権"と"俺が1番速いんだ選手権"からは、もう辞退してるから(笑)。全力で参加してた時期もあったけど、若い時は(笑)。
ーはははは!!
TORU:もうその辺は良いかな(笑)。終わりがないしね。
ーでも、"オリジナリティ"というものにも、終わりは無いですよね?
TORU:無いね。無限だと思う。だから、自分が今出来る範囲のテクニックってあるじゃん?。それよりもちょっと難しく作れるように頑張る。
自分にとって挑戦となるようなフレーズにして、そしてそれを他のパートにも毎回やってるんだと思うんだよね。だから毎回「ちょっと難しい」ってメンバーが思うんだと思う。
でもアルバムリリースして、ライブまでにめっちゃ練習したりするじゃん?。それでライブをやるようになると、「曲書いてる時はむちゃくちゃ難しいと思ったんだけどなー」みたいに、割と平気で弾けるようになってるわけ。それってやっぱり"自分が成長してる"って事だと思う。
それを踏まえてまた次があるわけだし、出来る範囲だけで作ってしまうと全然成長出来ない気がして。
ーそうですね〜。そして、今回のアルバムから3人体制でTEARS OF TRAGEDYは動いて行く訳ですけど、どうですか?動きやすいですか?。
TORU:今までは、例えばベースの音選び的な部分の限界だったりだとか、ドラムのBPM的に「これ以上やると無理だろう」みたいな事とかもあって、過去にテンポを上げたかったけど上げなかった事とかも正直あったの。
でも、今回はそもそもYU-TO君にお願いする前提で、千眼で一緒に演ってる訳だし、ある程度は制限無くは出来るだろうと。だから今回は楽曲の難易度を気にしなかったというか。
まあ、それが難しくさせてしまった要因かもしれないね(笑)。
ーははは!!
TORU:さっきも言ったけど、"テクニック的に無理だから諦める"っていうのは自分的に勿体ないって思っちゃって。練習して解決するなら練習すれば良いじゃんって話で、だから下手なよりは巧い方が良いっていうのもあるんだけど、、。
やっぱり"表現の為のテクニック"だから、"何でも出来る"っていうのが普通の状態でありたいとは思うよね。全部は"曲の為"、"表現の為"かな。
ー3人体制の方が際限なく好きな事が出来ている感じですね。作曲出来る2人と、それを歌えるボーカルで。もうこの体制での最初の作品は世に放った訳で、当然この後は次の作品っていう動きになると思うのですが、どうですか?
TORU:次、どうしようかね?(笑)。
ー(笑)。何かイメージとかは無いんですか?
TORU:いや、今回のを作ってる最中に思ったんだけど、「まだまだ可能性はあるんだな」って思ったよ。「まだまだ作れるはずだ」って思った。そう思った事を体現出来るようにしないといけないよね。
飲食とかコンビニとかもそうだけどさ、"目玉商品"みたいなのを1個作って、永久にそれを出す訳にはいかないじゃん?。毎回新作にしないといけない訳だから。
でも、どうなるのかなー。もう今回は作るので一杯一杯だったから、今回のアルバムの曲をもっと自分も練習して、"演奏する方"で消化して、もっと身体に入れていって、その上でどういうアプローチがしたくなるかな?っていうのがあるかな。
ー色々と音楽業界を取り巻く状況を変化しつつありますけど、これからの展望は?
TORU:自分の希望としては、今回みたいに4年とか空けずにリリースしたいと思うかな。この世の中の状況がしばらく続くのであれば、次は早いかもしれないね。
まあ日々、色々と勉強して研究しての繰り返しじゃ無いかな?。その事に対して飽きないからね、全く。
さっきも言ったけど、制作中に「まだまだ作れるな」って思ったのも事実だし、演れば演る程、作れば作る程、音楽への理解が当然深まるし、どんどん可能性を知れるというかさ、理解力は年々上がってるかなって思う。
やっぱり「知りたい」って思うから、"自分の好きな音楽の正体"を分析して曲を作って、そしてそれを聴いてる人にも楽しんでもらって、、その繰り返しじゃないかな、ずっと。飽きないと思う。もし飽きたら、違う要素を取り入れる。
メロスピは、飽きないと思ってたけど飽きたんだよね(笑)。
ー(笑)
いや、本当に飽きないと思ってたんだよ?(笑)。でも、10年くらいで飽きちゃったね。それでこういう作品になったっていうのもかなりあるよね。
若い世代でも良い音楽書く人はいっぱいいてさ。自分より下の世代から影響を受けたりもしててね。
「何て凄い曲を書くんだろう」って思う年下のミュージシャンとかもいて、今度はそういう人達に刺激を受けながら自分の曲を書いたりするだろうから、今後が楽しみだよね。
ーこれからの活動も、期待してます!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー