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激人探訪 Vol.12 Jill~積極的に選び取った存在~

どうも皆さん、YU-TOです。

前回から激人探訪を有料化し、概ね肯定的な反応を頂けていて安心している。

しかし、反応数などは無料公開時よりは明らかに減っているのも事実だ。

現代は有料でコンテンツを発信する事が厳しい時代だから予想はしていたが、やはり悔しい思いがある。

しかし、SNSでお知らせした通り、アーティストも書く方も"本気"なこの激人探訪。対価を付けると決めた以上は腹を括って有料での発信を続けてみようと思う。

今まで語った事のない思いを話してくれるアーティストの熱量と、それを受け取って皆さんにお伝えする自分の熱量、その両方が読み手の皆さんに伝わり、そこに対価が支払われる事が当たり前の時代になって欲しいと願うばかりだ。

今回、そんな今まで公の場では語ってこなかった事や、音楽に対する自身の思いを存分に話してくれたゲストは、Unlucky Morpheusのヴァイオリニスト、Jill氏だ。

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正直、何故今まで彼女の事をメディアが取り上げなかったのかが不思議で仕方がない。

高速ギターソロと完璧にシンクロする超絶プレイを披露し、ゴシカルな西洋人形を思わせるルックスで、静と動のバランスが絶妙な"魅せる"ライブパフォーマンスを繰り広げる姿は、否が応でも目を惹かれる存在だ。

メンバー全員の存在感が際立っているUnlucky Morpheusの中に埋もれるどころか、もはや第二のフロントマン(ウーマン)とも取れる位置にいるのがJill氏だと思う。

そんな存在を激人探訪が放っておく訳が無い。

兼ねてより"Jillさんを取り上げて!"という声をUnlucky Morpheusのファンの方々から頂いており、今回は満を辞してご登場して頂いた。

自分はJill氏と取材時に初めて顔を合わせたのだが、取材前は妙な緊張感があった事を覚えている。

Jill氏のアーティストとしての存在感には、ある意味人間離れしたものを感じていて、"本当にこの人はこの世に存在しているのか?"という何とも滑稽な事を思ってしまったりもしていたのだ。

しかし、当日会って実際に話したJill氏は、良い意味で真逆な印象があった。

気取った印象の無い、優しく気を遣える女性。

気難しさを一切感じさせない気さくな人柄。

ステージで感じる良い意味で近寄りがたい、人形のような印象はあまり無く、暖かみのある人間らしい人柄が印象的で、"ああ、この人はプロだな"と初対面ながらも瞬時に感じ取ることが出来た。

現実離れした部分と現実に根差した部分、その両方を切り替えるスイッチがしっかりとあり、それの扱い方が抜群に上手いのだろうなと感じたのだ。

プレイ面、パフォーマンス面の両方において、異端で"ロック"な一面が存分にあるが、単なる浮世離れしたプレイヤーには無い、強固な地盤がしっかりあるといった印象だろうか?

世間一般のイメージでは格式高いとされる"ヴァイオリ二スト"という存在をロックの世界に落とし込み、男女問わず支持される新たな"ロックアイコン"に彼女は成り得るのではないかと、今回話を聞いてみて大いに感じた。

今回の激人探訪では、そんなニュータイプのロックアイコン、Jill氏を徹底深掘りしていこうと思う。

第1章 "ヴァイオリン"という生活の一部

Jill氏がヴァイオリンを手にしたのは公式プロフィールにも記載されている通り、彼女が3歳の頃である。

自分も含めた世の中の大多数の人は、3歳の頃の記憶などほぼ無いに等しいだろうし、それはJill氏も同じだ。

ヴァイオリンを始めたのは、親が"演らせよう"って感じで、何か気付いたら始めてたという感じで、、。始めた時の事はもう覚えて無いので、物心ついた時から自然に演ってたって感じだったんです。もう最初からヴァイオリンでしたね。母親が昔ピアノを習ってたのでピアノは家にあって、たまに蓋を開けて叩いて遊ぶという事はありましたけど、ちゃんと習った楽器はヴァイオリンが初めてでしたね。

この時点でもう既に、Jill氏が異色な経歴を辿ってきている事を十分に垣間見れるだろう。

3歳という年齢は、言語ですらロクに覚えていない時期で、やっとここからコミュニケーションが何となく取れるようになってくる程度の年齢だと思う。

もちろん、英才教育の一環として音楽を子供にやらせる家庭は沢山あるし、この激人探訪でも幼少期から楽器を習ってきたミュージシャンは数多くいたが、その楽器を今も現役で演り続けているミュージシャンは1人もいなかった。

幼少期から楽器を習うという事は、自我が形成していくにつれ、その楽器への反発を生む可能性もあると思うのだが、Jill氏にはそのような感情はなかったのだろうか?

もうその時は、"演るのが当たり前"みたいな感じで、ヴァイオリンが"楽しい"とか"演りたい演りたくない"って事も特に考えてなかったんです。もうご飯食べるのって当たり前じゃないですか?それと同じように、ヴァイオリンがもう生活の一部みたいな感じになってたんです。

Jill氏にとってヴァイオリンという楽器は言語をしっかりと覚える以前から手にしているもので、もはや自身のDNAに組み込まれるレベルでヴァイオリンという楽器を習得していったとも言える。

しかも、この時のJill氏は譜面を一切読まずに、自身の耳のみで楽曲を弾くトレーニングをしていたという。

"スズキ・メソード"っていう音楽教室に通ってたんですけど、そこは他の音楽教室と違って楽譜を全く見ないんですね。"全部耳で聴いて、それを覚えて弾く"っていう教え方をしている所で、私、中学生になるまで楽譜って読めなくて、読めないまま結構難しい曲を弾いてたりしてたんです。全部耳から入ったというか、、そういう感じでした。

そんな幼少期から徹底的に鍛えられた、"理論"ではなく"感覚"で音を理解する事ができる耳は、後に学ぶ事になるコードとメロディの相関関係の自然な理解にも繋がっていったという。

3歳から音楽の英才教育を受けてきたという事で気になっていたのだが、やはり絶対音感の様な感覚は持っているのだろうか?

絶対音感はあります。でも、コップを"チーン"って叩いた音とかの音程が何なのかはわかるんですけど、生活する上での全ての音が音程に聴こえちゃって困るって事はないですね(笑)雨の音とかも聴こうと思えば聴けるんですけど、そこまで困ったりした事はないです。

強い相対音感を持ってるミュージシャンであれば周りにたくさんいるが、流石に絶対音感の領域にまで達しているミュージシャンは自分の周りにはいなかった。

ここぞとばかりに世間の絶対音感のイメージを色々と質問してみたのだが、あれはやはり極端な例で、実際の所は日常生活に支障を来す程の事は無いようだ。

しかし予想はしていたが、Jill氏の持つ音楽的な素養というか、"絶対的基盤"とも言える様な下地はメタルをプレイするミュージシャンの域を超えている。

Jill氏の持つ超絶テクニックがこの様な音楽的下地を基盤として成り立っている事はある意味当然なのだが、、

彼女の持つどこか浮世離れした様な、カリスマ性溢れる雰囲気や佇まいも"言語を覚える前にヴァイオリンを弾いていた"という特殊な環境下で育った故のものであるのではないかと、個人的には思ってしまう。

しかし、それがどんなものであったとしても、物心ついた時から手にしているものとは、基本的には自分自身の意思で手にしていないものである。

そんな存在は時として自身の最大の武器にも成り得るが、時として自身を最も苦しめる重たい足枷にもなり得る。そしてそれは、Jill氏にも例外では無かった。

もちろん、それはもっと後の話になるのだが、、。

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