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癒熱探訪 ホテルヒルトップ

成増という町には少々の思い入れがある。

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高校受験を控えた中学3年生の時、成増にある個別指導の塾に通っていた。

そこで勉強した事など、とっくの昔に自分の頭から消え去っているけど、音楽好きな講師の人に色々なバンドを教えてもらったりした事は今でも覚えている。

その講師の人に、自分の演奏を録音したテープを聴かせて「お前凄いな!!」と認めてもらえた事は、初めて自分の演奏を人から評価してもらえたという経験で、未だに忘れらない思い出の1つだ。

そんな自分の"青春の1ページ"に刻み込まれた成増にまたちょくちょく足を運ぶようになったのは、ホテルヒルトップのサウナに通う為である。

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このホテルヒルトップは、成増駅南口から徒歩1分程の場所にある。

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成増といえば北口駅前にあるACT HALLが有名だが、北口側はどちらかと言うと住宅街で、こちらの南口はちょっとした呑み屋街といった印象だ。

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商店街には数々の飲食店が軒を連ね、チェーン店から個人店、キャバクラまで幅広い種類の店が数多くあるが、ホテルヒルトップはその商店街から外れた線路沿いの裏路地に位置し、駅近ながらも最初は何処にあるのかが全く分からなかった。

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一応"ホテル"とは銘打っているが、一般的なホテルよりもかなりこじんまりしているし、施設自体もかなり古い。

泊まった事がないので部屋の詳細は分からないけども、カプセルと個室の両方があるようで、かなり使い勝手が良さそうだ。

入浴料なのだが、これが結構高めな値段。

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まあ、都内でこれだけ駅から近い好立地にあるのだったらこの位の値段はして当然なのだろうが、時間制限がある上にスーパー銭湯の倍以上の値段がするので、人によっては「高い!」と感じてしまう値段設定ではあるだろう。

しかし、ここのサウナには妙に「また行きたい」と思わせてくれる魅力があるのだ。

初めて訪れた際は「何かイマイチだったな」と思ってしまったものだが(概ね好きになる施設は最初そう思う 笑)去年くらいからここの施設の魅力に気が付き、割と頻繁に足を運んでしまっている。

そして今日も、またヒルトップのサウナに来てしまった。

朝5時に起床して音楽関係の作業を進め、確定申告の準備やら明日のミュージックビデオ撮影の準備などもしていたので、少しばかりバタバタしていた日であったが、予想よりも早くに仕事を片付ける事が出来た。

もう自分の場合、こんな時はサウナに行くしか選択肢がない(笑)。

かといって電車に乗って何処かに行く気にはなれないし、近所の銭湯では少しばかり味気ない気がする、、。

「だったら、散歩がてら行ける距離のヒルトップだな」と思い立ち、家から徒歩30分ほどで来れるヒルトップに今日は行く事にした。

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成増駅南口は、あまり中学時代から変わってない気がする。

"繁華街"と呼ぶには地味だが、決して栄えてない訳では無い。

その成増の中途半端具合が昔から好きで、ここに来る度に何故だか少し故郷に帰って来たような気持ちにもなる。

「昔はこの駅に毎週2日も通ってたんだよなー。」と思い出に浸りながらヒルトップに向かい、いつも通りエレベーターで4階のフロントへ。

エレベーターを降りて扉が空いた瞬間、初めて訪れた人はその"場末感"に愕然とするだろう(笑)。

まあとにかく、フロント周辺が狭すぎる(苦笑)。靴箱も必要最低限の数しかない。

フロントのすぐ隣が脱衣所で、タイミングによっては着替えてる人がエレベーターを降りた瞬間丸見えになる(笑)。

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ヒルトップのこのラフな感じが、自分は堪らなく好きだ。

ラグジュアリーで洗練されたサウナも良いが、普段通いをするサウナは年季の入った、良い意味で適当にやってる感じがする"これぞ町のサウナ!"みたいな空気感のある施設の方が落ち着く。

脱衣所にはシャンソンのようなオシャレな洋楽が流れているが、全く雰囲気と合っていない(笑)。

そんなズレたところも味わい深い。

本日は90分コースを選択。最近はこのくらいの滞在がちょうど良いと思うようになってきた。

フロントでタオルセットと館内着をもらい、サクッと服を脱いで浴室へ。

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白を基調とした、特にこれといった特徴の無い浴室。

古びてはいるが決して汚いわけでは無く、アカスリや歯ブラシ、カミソリなどもちゃんと揃っているので手ぶらで来れる。

このヒルトップの浴室、出入り口が2つあり、1つは脱衣所、もう1つはパウダールームやトイレ、冷水機があるスペースと繋がっており、そのスペースを過ぎてぐるっと回ると、また脱衣所に辿り着ける

冷水機前の扉は解放してあり、椅子もあるから外気浴をしながらの休憩も可能。

初めて訪れた際はこの構造に気がつかず、一瞬パウダールームと飲み水が無いのではと焦ったが、構造が分かるとかなり導線が良い作りだという事が分かる。

脱衣所側の出入り口を使うのは最初入る時だけで、後は全てパウダールーム側にある出入り口を使えば良い。

パウダールーム側にタオル置き場があるので、サウナ→水風呂→パウダールーム側出入り口から出て身体を拭く→水分補給しながら外気浴、といった導線が敷かれており、サウナ施設として完璧な構造。

構造といえば、忘れてはいけない事がもう1つある。

実は、ヒルトップのサウナ室はかなり計算された設計になっていて、今まで200近い数の施設を訪れている自分だが、ここと同じ構造のサウナ室は見た事がない。

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ヒルトップのサウナ室の特徴は、何と言ってもその天井の低さ!。

写真左の2段目の席に座ると、天井に手が余裕で届いてしまうくらいに低い。これにどんな効果があるのかは、サウナに詳しい人ならば直ぐに"ピン"とくるだろう。

そう、熱が逃げないのだ。

基本暖かい空気というは室内の上に溜まる。だから、天井が高いサウナ室だと全ての熱が上に溜まってしまい、全く体に熱が届かない。

しかし、ヒルトップのサウナ室は熱を満遍なく逃がさない天井の低さで、体が非常に効率よく温まる。

写真だと分かりづらいが、イスがあるスペースはサウナストーブがあるスペースよりも一段高くなっていて、これもすごく考えらてる構造だなと感心してしまう。

先程書いたように、熱は室内の上にいく。という事は、下から上に熱というものは上がってくるという事(当然だけど、、笑)。

だから、自分が座ってる場所と同じ位置にサウナストーブがあると、足下に熱がいかずに、上半身だけが温まってしまうという不完全燃焼を招いてしまう。

しかし、ヒルトップのサウナは1段目の席ですらストーブより上にあるから、足元まで確実に温めてくれるのだ。

具体的な理屈は分からないが、天井がアーチ状になっていたり、ストーブ前に換気口があるのも、恐らく熱をうまく対流させるための工夫であるのだろう。

この"小さなログハウス"的な雰囲気も好きで、とても癒される。

「こういう部屋が家にも欲しいな〜」なんて事を考えながらの1セット目。

テレビではサッカー番組がやっている。こういう興味のない番組をボケっと観ながらのサウナって、"休日"って感じがして好きだ。

サウナ室は少しばかり乾いた空気で、温度もそこまで高くはないのだが、計算された構造ゆえに直ぐに汗が大量に吹き出してくる。

1セット目は10分程で終了し、水風呂へ。

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ここの水風呂(写真右)は狭いが、そこそこの深さがある。

温度は20度と決してキンキンに冷えてる訳ではないが、不思議と"ヌルい"とは感じず、むしろゆっくりと浸かれるからこのくらいの温度でちょうど良いと自分は思う。

噂によると、ここの水は割と水質が良いらしく、基本ずっと掛け流しにしているから清潔だし、嫌な塩素臭も全くしない。

水風呂から上がり、パウダールーム側の出口から出て外気浴。

ここ最近、気温が暖かい日が増えた。考えてみるとあと2週間程で3月。もうすぐ冬が終わる。

そんな初春の香り漂う外気を浴びながら、去年から今年に掛けての事を思い返していた。

確定申告の領収書と格闘していると、意外とその"経費"を使った時の事を覚えていたりする。「ああ、これあの時やつだな」とか「これ買っといて正解だったな」とか。

去年はコロナ禍のせいで収入が激減すると思ったが、ちゃんと計算してみると案外変わっていなかった。むしろ補償金などを合わせたら増えてるくらいの収入だ。

「ありがたい事だな」と感謝しながらも、「そろそろ自分の道を決めていかなきゃだな」とも思う。

去年から今年に掛けて、ドラム、執筆、映像制作、作詞作曲など様々な事をやってきた。

"自分の可能性を信じて、色々な事に挑戦する"と言うと聞こえは良いが、30歳を過ぎると、その挑戦をしっかりとお金に変え、自分の血肉にしていく事が必要になってくる。

「スガノ君って、結局何になりたいの?」

以前働いていた職場の上司から言われた一言だ。

長年忘れていた一言だったが、何故か今日のサウナで思い出した。サウナに入っていると、往々にしてこういう事がある。

「自分にはこれしかない!」みたいに、"1つの物事を極める"方が人生は上手くいく言われてはいるが、自分は「本当にそうなのか?」と思ってしまうタイプの人間だ。

「お前なんて"あれやってこれやって"ってやってるうちに人生終わるんだよ」とか「お前って結局、何をして生きて行きたいの?」とか今まで散々言われてきた。

その人達の言いたい事は十分に分かる。

ただ、「あんたらがそう思うって事は、俺が色々な事を幅広く出来てるって事だよな?。俺って、お前らより器用なんだ。」という反骨心を持っている事も事実。

ただ、その反骨心は目に見える結果に変えていかなければならない。

人に言われた屈辱的な言葉を、自分はいつまでも気にしているタイプの人間では無い。しかし根には持つ。いつか真っ当な方法でぶっ飛ばす為に。

「今に見てろよ?」みたいな。

今日のサウナセッションで脳内に出てきた議題はこれだった。

2セット目、3セット目を終えて体を洗う。

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シャワーの水圧って結構大事で、強過ぎると痛いし、他の人に水が掛かりそうでイライラする。弱過ぎても石鹸が上手く落とせなくて、これもまたイライラする。

もちろん、場所によって差はあるが、ヒルトップの水圧は弱過ぎず強過ぎず、なかなかちょうど良い。

サウナに入る習慣を持ってから、自然と汗臭さに悩まなくなった気がする。

それは、汗を習慣的に多く出してるがゆえに溜まった皮脂汚れを落とせているからなのか、単純に体を洗う回数が多くなったからなのかは分からないが、これもサウナ行くようになって得た"良き事"の1つだ。

カランという場所は、何の飾りもない自分の裸と対峙する場所。そこで見る自分の体つきの変化にも気を配れる。

「なんちゅう体してんだよ、お前(笑)。」

と、この間友達に言われた。"崩れてる"という意味でなく、ポジティブな意味で。

ワークアウト(筋トレ)はサウナとの親和性が高いと思う。

適度なサウナ浴は筋肉に良く、普通だったら入りたくない極端な熱さと冷たさを味わうサウナを"快感"と感じる脳の仕組みは、キツいワークアウトにある種の快感を見出せるのと同じであるらしい。

「だから自分はワークアウトを続ける事が出来てるのか」と納得するが、ワークアウトは"結果"を出す事が目的だ。

その"結果"というのは、自分の体つき以外の何ものでも無い。

自分は人からも言われるように、体つきに"結果"が出せている。自分で言うのも何だが、この年代の平均は遥かに上回っているだろう。

それを今度は体つきだけではなく、人生全体で出す時だ。

体を拭き、サウナ上がり特有のさっぱりした真っ新な気持ちで感じた事はそのような強い気持ちだった。

サウナという場所は安らぎだけではなく、そんな"活力"も与えてくれる場所。

体が芯まで温まる計算された構造のサウナ室と、ゆったり浸かれる上質な水風呂。

古いながらも導線が良く、ストレス無く純粋にサウナのみを楽しめるヒルトップだからこそ得られた明日への希望と意欲。

これを次に繋げていこう。

そう強く思いながら、ヒルトップを後にした。

※施設内の写真はオフィシャルサイトのものを使わせて頂きました。

本日のサウナ飯

"サウナに入った後の飯は美味い"という事は、サウナ好きであれば誰もが知っているサウナ界の常識中の常識である。

自分はサウナのみで帰ってしまう事も多いが、サウナ後に施設内のレストランや、近くの店で一杯やる事を何よりの楽しみにしている人も多い事だろう。

だからせっかくなので、"癒熱探訪"では毎回とはいかないかもしれないが、施設内で食べた食事や、入浴後に近くで寄った店なども紹介していこうと思う。

今日、ヒルトップを出た後に立ち寄った店は、成増と下赤塚の中間地点くらいに店を構える"一笑らーめん"

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決してヒルトップから近いという訳ではなく、一応最寄駅は下赤塚という事になるのだろうが、駅からも10分以上は歩かないといけない。

飲食店の立地としては決して良くない店で、近辺の飲食店が潰れていく中、何やかんや20年以上ここに店を構え続けている。

ここのらーめんに初めて出会ったのは中学2年の頃。

新しく出来たこの店に、偶然家族と食べに行った際にハマり、そこから20年もの間、定期的に食べにいってしまう言わば自分にとっての"ソウルフード"のようならーめんだ。

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まずは、生ビールとテーブルに置いてある取り放題の高菜とネギにニンニクを入れた即席つまみで1人酒。

一時期は音楽仲間とこれだけでビール3杯くらい飲み、〆にらーめんを食べて帰るという居酒屋のような使い方をしていたが、今は食券制になったのでそれはやり難いだろう。

この高菜がまた辛いけどクセになる味で、お土産として販売もしている。

ただし、らーめんの前に食べ過ぎると辛さで口の中がイカれてしまい、らーめんの味が分からなくなってしまうので注意が必要(笑)。

様々な種類があり、どれも美味しいのだけど、今日頼んだのは看板メニューの味玉一笑らーめん

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塩とんこつ味で、割とあっさりした味。

「あー、帰ってきたな」

食べる度にそう思う。

今でこそ半熟なのに中まで味が染みた味玉を提供する店って多くあるけど、一笑らーめんがオープンした当時はそういう味玉って珍しくて、それに家族全員が衝撃を受けていた。

今まで、数々の人達を一笑らーめんに連れてきたけど、「美味い!」と言ってハマる人もいれば、「まあ、不味くはないけど、、」と言う人もいる。

確かにインパクトがあるかと聞かれたら無いかもしれないが、この素朴であっさりしていながらも濃厚な味わいは、唯一無二であると思う。

そう言う理屈を抜きにしても、もう自分の中で"一笑らーめん"という存在は、食に疎い自分としては珍しく、DNAに組み込まれてると自覚している味なのだ。

その感覚って、音楽とかサウナでもあると思う。「ああ、これだわ、やっぱり。」みたいな。

そういう場所が、こんなご時世でも20年続いているという事がありがたい。

ここに初めてきた中学2年の頃に思い描いていた夢は、ほぼ全て達成する事が出来た。

だから、次の20年でも今思い描いてる事を全部達成出来たらと良いなというか、そうさせなくちゃなと思った次第。

それにしても春っぽくなってきた。そろそろ外気浴が気持ち良い季節が到来する。

さて、次はどこのサウナに行こうかな、、。

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