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【連載】サロン・ド・フォレ -1-

駅前の商店街をこえ、大きな工場も通り抜けた。
住宅街をまっすぐまっすぐ進んでいく。
この道がどこに続くのかはわからないけれど、ただまっすぐに進めばよいと、なぜだか私は知っている。


家がまばらになり空き地が増えてきた。
気がつくと足元はもう、きちんと舗装された道路ではなく、茶色い砂の道。
さすがに少し疲れてきて、息を整えるようにゆっくりと歩く。

もとは家やマンションがあった場所なのだろう。四角いコンクリートの跡や欠片が地面のあちらこちらに続いている。
しばらく空き地を進み続けると、家が横一列に並んでいるのが見えてきた。

気づいたときには周りに誰もいなくなっていた。
通行人も自転車で通る人も車もバイクも誰にもすれ違うことなくここまで来た。
誰かいるかもしれない。
そんな期待を抱きながら進んだ。

建物の裏側はどれも茶色い土でほこりっぽく汚れている。窓の奥やベランダの様子を注意深く観察しながら建物の正面が見える位置まで来た。

四隅に西洋風の可愛らしい家が建つ十字路だ。
この場所を中心としてまっすぐに家々が並んでいる。建ち並んだ家の終わりは見えない。
十字路の真ん中に立ち、あたりを見回すと、家々のなかには1階部分が商店のように見えるところがあった。
しかし、誰もいない。
人が暮らしていた街並みがあるのに、どの家からも人の気配は全く感じられず、ふいにこわくなってくる。
ただただまっすぐに進めばよいと思っていたのに、いつまでもどこへも行けず、誰にも会うことができない。
十字路の来た道と反対側の道の先にもなにも見えない。歩いて来た道とまったく同じ、土ぼこりの舞う空き地だ。

私が向かっていたのはこの場所だったのだろうか。
意を決して来た道から見て左側へと進むことにした。

すると、一瞬地面がぐわんと揺れた気がして足元を見た。けれどなにもない。ただの茶色い土の道。
顔を上げると、あたりの気配が変わった。

可愛らしいと思った家々の屋根から2階部分にかけて、大きな魚がばたりと横たわっている。
ある魚は大きな口を開けて目の前の魚に齧りつき、ある魚はおなかや背中に大きな傷がある。たくさんの見たこともないほどの大きな魚が重なり合うように家々にバタバタと倒れ込み、瓦だけでなく家自体が崩れている場所もある。

なにこれ。どうして。
それでもそれが何なのか確かめたくて、恐る恐る歩を進めた。
さっきまでなにもなかった。それなのにどこまでもどこまでも続く家の屋根すべてに大きな魚がいる。しかもよく見ると魚はどれも同じ種類だ。共食いだろうか。どうして地面には一匹も落ちていないのだろう。

そんなことを考えながら歩いていると、どこからか視線を感じた。
倒れている魚の目かと思ったけれど、違う。
私が進もうとしている先からなにか来る。
ものすごいスピードで。
こわくなって、急いで引き返した。
走り出してからもこわくて後ろを振り返ることができない。

十字路まで戻ると、来た道と反対側が茂みになっている。さっきまでただの空き地だったはずなのに。
迷っている暇はない。なにかに追いつかれてしまう前に隠れよう。

茂みに向かって駆け出すと、その先は森だった。
とにかく身を隠さなければ。その一心で森へ飛び込んだ。






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