自立こそ成長戦略なのか
「営業はしない」というスタンスでフリーランスを続け早8年。ほぼほぼ来た仕事を受けるという形なので、その時期に話題になっている案件が集まりやすい。
基本的に政治、経済、企業、インタビュー等が中心だから、ビジネスというジャンルでホットな人物とお会いすることが多い。ここ4〜5年を振り返ると、あるジャンルで大きな成果を収めた人は、その資源を使って「地方創生」に注力しだす傾向があるということに気付いた。
例えば、ある出版社の敏腕編集だった方は、埼玉県某市の市長になった。あるファンドマネジャーは、自分の会社を拡大させながら地方の優良企業に積極的に投資をしている。ある大学教授は、先日、某市の市長選に立候補して注目を集めた。あるマーケターは、大企業の改革や巨大テーマパークの立ち上げに成功させた後、これから某地の開発に取り組もうとしている。こういう人たちが、私の周囲だけでもたくさんいる。
皆、一様に言うのは、日本を活性化させるためには国政に頼らず地方からやっていかなきゃ駄目だ、ということだ。目指すものややり方は、個々で多少の差はあるかと思うけど。
人口構造的にも産業構造的にも、日本経済に明るさは見えないという声は多い。基本的には私もそう思う。
でも、本当に最前線で大きな成果を出したトップランナーたちは、そういう視点で見ていない。勝機はないわけではない、道はなくなったわけではない、と考えている。というか、諦めてどうすんの? という感じ。たぶん高い視点に一度でも立ってしまうと、自分さえ生き残ればいいという陳腐な思考ではなく、衰退する日本を何とかしたいという意識になるんじゃないかな。いや、元々そういう広い視野があったから、彼らは成功できたのかもしれない。いずれにしても、大きなエネルギーを動かす「資質」があるのだと思う。
私に経済のイロハを叩き込んだ方は、いつも「金融政策、財政出動よりも成長戦略だ。国が主導しなきゃ何も始まらないよ」と言っていたんだけど、私は正直言って全く納得がいっていなかった。理屈は分かる。でも、いつまで経っても国は動かないし、規制緩和は進まないし、時々示す成長戦略は全く中身も具体性も伴わないものだし、こんなに頼りないものに依存すること自体が間違いなんじゃないのか、といつも思っていた。
もちろん、ボトムアップよりトップダウンの方が改革は早いのがセオリー。ただ、トップがあまりにも動かず、多少動いたとしても的外れで、なおかつボトムがこれだけ疲弊していることを考えると、政治より企業や個人の動きの方が速いことは自然なことだ。これからはボトムアップの流れになっていくんじゃないかな、と感じる。
実質的に動いている人、動かしている人が一番強い。何もやらずに「日本はダメだ」と言うだけの人よりも、何倍も強い。こういう人たちがもっと自由に動きやすくするには、どうしたらいいのかなぁ、と考える。
彼らは皆、私なんかよりも遥かに優秀なので、私が考えることではないのかもしれないけど、こういうエネルギーの持つ人にポテンシャルを最大限に引き出せるようにするためには何が必要なのだろう、とよく思う。
「その場合、利権は絶対に絡んじゃいけないんだよ」、とあるコンサルタントが言った。それはもっともなことだ。利権の絡まない、自立したところにいる企業、組織、個人がボトムアップで新しい波を作ることができれば……なんて、まだまだ絵空事なのか。あるいは未来の青写真になるのか。私は後者を望むし、時間はかかろうとも、流れは少しずつ変わっていくと信じている。
とはいえ、国家権力は大きい。安倍政権の内部に理解を示す人、いないかなぁ。取材する中で、よく話に出てくる名前が一人いるけど、その方の真意が分からないのでなんともいえない。注視はしたいと思う。