「刺さる特許分析」 第一回勉強会の備忘録
2021/3/25に勉強会を開催させていただいたので、その備忘録を書き殴る。
勉強会開催の背景
Twitterで「事業部と知財部の関係性はどの企業でも課題が多い」という議論をした時に「知財わいわい部屋」(Slack)に招待されたことが勉強会開催の始まり。多くの知財関係の方が共通の悩みを抱えており、集まっているとのこと。
そこでは、さまざまなチャネルが作られ、それに沿った議論がされていた。(例:知財関係のニュースへの議論や知財部員の悩み、職務発明の報奨制度検討について等)
特許分析をする中で顧客(経営・事業部・研究員)の意思決定に使われる、つまり、「刺さる」特許分析を行うには、どうすればよいかとても悩んでいたので、「刺さる特許分析」という名前でチャネルを立てた。
多くの方がチャネルを参加してくださり、チャットには「悩んでいます!」の声が多かった。私は知財に来てやっと1年になるところで、諸先輩方が特許分析をどのように考えているのか、「刺さる」ために何を悩み(ながら)、どのようなことを行っているのかとても気になった。「この気持ちも含めてこれに関する情報も共有できないか?」これが勉強会を開催した背景である。
勉強会のテーマ
議論ベースで勉強会を行うために、勉強会のテーマと議論する点を以下のように設定した。
このテーマと議論する点はチャットから参加者が悩んでいる点を抽出した内容である。次項は議論した内容を記載する。
①次のアクションに繋がる「刺さる」特許分析とは?を議論
特許分析は下図のような流れで終わってしまってはいないだろうか?
このようにならないために、どのようなことを心掛けているのかについて議論を行った。
私自身の分析プロセスを例に挙げ、これをたたき台にして議論を行なった。
議論は「意思決定に用いられるには?」、というよりも興味を持ってもらうためには?という方向性に向いた。以下は、議論の一部を紹介する。
議論1:どのような内容が興味が惹かれる内容になるのか?
・経時変化(サーモグラフ)があると顧客(事業部や研究者など)食いつきやすい
・特許情報から顧客が(2次情報から)全く知り得ることのなかった分析結果・情報も食いつきやすい
→テキストマイニングなど仮説を決めてから得る情報ではなく、俯瞰してデータをみることも新たな気づきとして得やすい
→プレ分析で(バイアスをかけず俯瞰する行為を)意識することが大事かなと思っている。
・競合分析が一番経営に効くと考える。当事者意識を持たれるのに一番良いと思っている。(多数の方が同じ意見)
議論2:「刺さる」とは何なのか?
・シンプルで伝わりやすいもの
・当事者意識に響くもの。企業として危険である状態を示すと反応が大きい。(権利関係など)
→顧客の意思(顧客がストーリーを決めて、依頼している状態と目の前の問題をどう解決すればいいかわからない状態など)の状態が異なる場合はどうすれば良いのだろうか?
→多くの企業では業務フローとして、予定調和として、特許分析が行われていることが多いのではないだろうか。
→顧客によって変える必要がある。絵(マップ)が欲しい(前者)と言われれば、簡単に作成して提出するし、後者であれば深く入り込む。
・技術部の方が知財と連携して特許分析で競合他社分析を行っている。「刺さる」のに必要なものは、やはり当事者意識を持つことなのではないか?
議論3:特許分析とは何をゴールとしているのか?
・顧客が(2次情報から)全く知り得ることのなかった分析結果・情報から意思決定をしてもらうことではないか?
・気づきを得てもらうこと。
議論4:特許分析をする際にどのようなツールを使っているか?
・Bizcruncherは重要特許と類似している周辺特許を拾えるので、活用している
・海外の事業部ではマインドマップでロジックツリーを整理して、特許クレームを細かく分解、自分たちが権利として取りに行くところを決定している
議論して感じたこと
「刺さる」は個々で意味が大きく異なり、様々な立場の人(役職・企業文化・知財理解の進行度)が存在することに興味が湧いた。
しかし、その中でも共通した内容「顧客に当事者意識を持ってもらう」が挙がり、まだまだ共通して議論できる可能性があると感じた。
②「刺さる」特許分析をするために 顧客に対するアプローチの仕方・ヒアリングのイロハを議論
議論①:参加者の顧客との関係性は現在どうであるか?
・IPLや特許分析が社内に根付いていない状況なので、知財部に所属しているとはいえ、様々な立場の人がいると実感できた。
→その状況下でどのような活動をしているのか?
→研究員など現場の人と一緒に特許分析を行い、活用してもらおうとしている。
→組織を動かすことはとても難しい。下から突き動かす活動もとても大事と思った。
・「刺さる特許分析」と言ってきたが、刺さるためには、顧客の興味と意思と特許情報、ビジネス情報、そこから生まれる事実、様々なものの隙間を埋めていく必要があると思う。
→その隙間を埋めていく行為が仮説検証・ストーリーテリング能力なのだと思う。
まとめ・所感
私はIPLを遂行する部署に在籍している。そのため、今回「経営や事業部」の意思決定にどう関わるかを悩んでいて、そちらに意識があるあまり、その話を多く行ってしまった。
しかしながら、様々な立場の人(役職・企業文化・知財理解の進行度)が「特許分析」を試行錯誤していて、それに対する多くの考えがあるとわかり、自身の考えが甘かったなと考える。「刺さる」は個々で意味が大きく異なる。しかし、共通したものがあるとも感じた。(例えば、顧客に当事者意識を持ってもらう・仮説検証等)
この「刺さる特許分析」はそれらを昇華したもの、どの立場・フェーズでも「刺さる特許分析」を行うには?を今後の勉強会のテーマとしたい。
次回の勉強テーマ募集
勉強会の参加は制限はないので、もしこの記事を見た方で次回参加してみたいという方は気軽に連絡をいただければと思う。内容と時期は未定。
勉強会の反省点
最後に勉強会の反省点を挙げる。
・話題を多く盛りすぎたため、時間が足りなかった。
→もう少し、芯となる論点を抽出すればスマートに進むはず。
→私が尊敬する方は誰かと議論するときは、かなり資料数を絞っているように感じた。それでいて、多くのことを会話から引き出している様子が印象的だった。少ない数で多くのことを引き出すような構成を考えてみようと思う。
・ファシリテーターと発表同時平行だったため、処理が追いつかず、中身のない回答をしてしまった場面があった。
→とりあえず、何か喋らなきゃをやめて、参加者に会話を促す必要がある。
以上