
ジーパン、デニムに関わる市場分析と特許の出願動向を分析
LeXi/Ventの上村です。この度特許情報分析サービスを開始しました。それに伴いこれからも特許情報分析関連のブログをリリースしていきます。
はじめに
日本人であれば、ジーンズ、デニムを手に取った・履いている方は多いのではないだろうか?
私も、デニムパンツやデニムシャツはとても大好きだ。特に、ラルフローレンやデンハムというブランドは大好きであり、服のブランドとしても愛用している。
本記事では、ジーパン、デニムに関わる市場分析と特許の出願動向を分析を行い、普段何気なく履いているジーンズ、デニム、その産業について深く調査をしてみた。
ジーンズ、デニムの日本産業の始まり
ジーンズ、デニムの日本産業の始まりはどのようなものだったのだろうか?
始まりは1923年の関東大震災時、支援物資として入ってきたジーンズは「香港ズボン」と呼ばれ、戦後、闇市でジーンズが出回り始めたとのことだ。
また、1960年代に入り、規制緩和によってジーンズの輸入が開始、同時期に、岡山県で国産ジーンズの生産が始まる。1965年には、倉敷市児島地区で「ビッグジョン」の創業者である尾﨑小太郎が日本初の国産ジーンズを製造・発売した。
しかし、なぜ日本でデニムは流行ったのか?上記の歴史以外にも理由は6つほどありそうだ。
高品質な国内生産:
岡山県倉敷市児島地区と井原市を中心とする地域では、デニムの素材から縫製、加工・仕上げまでの一貫生産体制が確立されている。この産業集積により、高品質なデニム製品が生み出されている。
技術力と職人技:
日本のデニム産業は、高い技術力と設備(ハード面)、ジーンズに風合いや表情を出す職人技(ソフト面)、そして高い企画開発力を持っている。これらの要素が、日本製デニムの品質と評価を高めている。
プレミアムジーンズ市場の形成:
2000年頃のヴィンテージジーンズ・インポートジーンズの流行により、ジーンズのファッション性が向上し、プレミアムジーンズ市場が形成された。これにより、高品質な日本製デニムの需要が高まった。
国際的評価:
日本のデニム・ジーンズ産業は、その品質と技術力により国際的に高く評価されている。特に、瀬戸内の井原・福山産のデニムは世界一の質と評されている。
伝統と革新の融合:
江戸時代からの繊維産業の伝統を受け継ぎつつ、新しい技術や素材の開発に取り組んでいる。この伝統と革新の融合が、日本のデニム産業の強みとなっている。
ファッションとしての定着:
デニムは、元々ワークウェアとして誕生しましたが、時代とともにファッションアイテムとして広く普及した。日本の消費者の間でも、デニムは日常的なファッションアイテムとして定着している。
中小製造業の経営戦略「国内中小ジーンズメーカーの経営戦略」https://shokosoken.or.jp/jyosei/kenshou/r18nen/r18-1.pdf
ジーンズ主要ブランド・企業について
有名メーカーは以下であろう。もちろん、そのほかにもあるし、アパレルブランドとして有名で、「ジーンズが名作」として有名になったメーカーもあるが、ここでは、割愛する。
ビッグジョン
1965年に日本初の国産ジーンズを製造・発売したブランドです2。倉敷市児島地区を拠点とし、「国産ジーンズ発祥の地」の象徴的存在となっている。
ジョンブル
岡山県を拠点とする老舗ジーンズブランドの一つです2。高品質なデニム製品で知られている。
ベティスミス
岡山県倉敷市に本社を置くジーンズメーカー。自社ブランドの展開だけでなく、「ベティスミス ジーンズミュージアム&ヴィレッジ」を運営し、ジーンズの歴史や文化の発信にも貢献している。
カイハラ
広島県福山市に本社を置く、世界有数のデニム生地メーカー。多くの国内外のブランドにデニム生地を供給している。
国際的な大手ブランド
リーバイス(Levi's)
アメリカのジーンズブランドの代表格で、世界的に高い知名度と売上を誇る。
ラングラー(Wrangler)
アメリカの老舗ジーンズブランドで、特にウエスタンスタイルのジーンズで有名。
リー(Lee)
アメリカの歴史あるジーンズブランドで、ワークウェアとしての伝統を持ちつつ、ファッション性も高い製品を展開している。
筆者上村が好きなブランド
ここで上村が好きなデニムブランドを紹介する。
ラルフ・ローレン
ラルフ・ローレンは、特に高級スーツやポロシャツなどのメンズウェアでその名を知られ、ブルックス・ブラザーズと並ぶアメリカン・トラディショナル(アメトラ)の代表的存在とされている(wikiより)。
創業者であるラルフ・ローレン氏はブルックス・ブラザーズで働いていたことはとても有名。
ここのデニムは肌触りや品質がとても好きである。経年の具合もさることながら、大学時代かったものでも、年齢によるブランド離れが起きないのも将来投資的に見てもとてもコスパが高い。
デンハム
オランダのアムステルダムに誕生したDENHAM(デンハム)は今年で創業12年と若いブランドだが、主要な地方を抑えながら、そのデザイン性や品質で話題が絶えない。コラボ製品も多く、マーケティングにも意欲的な印象である。とくにメンズを中心に人気がありブランドで、デンハムのジーンズはファッションにおける定番アイテムとして創業から変わらず愛されている。
テック系のシャツやパンツをよく買っていて、とても機能性が高く、意匠性も高い。
最近デニムも購入した。



国内デニムのSWOT分析と需要
さて、国内デニム産業についてのSWOT分析を整理もかねて行ってみる。
国内メーカー
Strengths: 高品質、独自の加工技術、「Made in Japan」のブランド力
Weaknesses: 高コスト構造、国内市場の縮小
Opportunities: プレミアムジーンズ市場の成長、海外での日本製品への評価向上
Threats: 海外メーカーの技術向上、為替変動、原材料価格の上昇
海外メーカー
Strengths: コスト競争力、グローバルな生産・販売網
Weaknesses: 「Made in Japan」に比べブランド力が劣る場合がある
Opportunities: 新興国市場の拡大、eコマースの成長
Threats: 貿易摩擦、環境規制の強化、労働コストの上昇
国内デニムの市場規模
日本のデニムジーンズ市場は2029年までに35億米ドル以上の市場規模に達する見込み。
海外デニムの市場規模
対して、海外は?
世界のデニムジーンズ市場は2022年に約860.2億米ドルと評価され、予測期間2023-2030年には5.0%以上の健全な成長率で成長すると予測されている。
国内のニーズは世界の4%ほどであり、海外の市場がとても大きい。Made in Japanは4%なのか、、、悲しい限りである。
国内デニムのサプライチェーン
日本のデニムサプライチェーンは、原綿の調達から始まり、紡績、染色、織布、整理加工を経て最終製品が完成する一連の流れで構成されている。特に岡山県倉敷市児島地区や井原市を中心とする三備地域には、これらの工程を担う企業が集積しており、一貫した生産体制が強みとなっている。
各工程の詳細
原料調達: 世界中の綿産地から高品質な原綿を調達しており、主な供給元はアメリカ、オーストラリア、ブラジルなど。品質と安定供給のために、4~5ヶ月分の原綿在庫を確保している企業もある。
紡績: リング精紡とオープンエンド精紡の方法を用いて、梳綿、練条、粗紡、精紡、仕上といった工程を経て糸が生産される。温度と湿度の厳密管理や設備の自動化により、高い生産性を実現している。
染色: 日本で初めて開発されたロープ染色法でインディゴ染料を使って染色し、芯白性という技術でジーンズ特有の色落ちを生み出している。藍染も用いられ、自然な風合いと色落ちが特徴。
織布: 旧式のシャトル織機でビンテージデニムを生産する一方、最新のプロジェクタイル織機やレピア高速織機も導入し、多様なデニム生地を生産している。
整理加工: 毛焼きや糊付け、防縮といった仕上げ処理を施し、引き裂き強度や収縮などの検査で品質を確保している。
サプライチェーンの可視化
近年、ブロックチェーン技術を活用し、デニムのサプライチェーンを可視化する取り組みが進んでいる。生産過程や関わった企業情報を記録・追跡できるため、透明性が高まり、消費者の信頼を得ることができる。さらに、CO2排出量の見える化により、環境負荷軽減の取り組みをアピールできるようになっている。
一貫生産システム
三備地域では、原綿の調達から製品完成まで一貫して行う体制が確立されており、品質管理の効率化や迅速なフィードバック、高い技術力を支えている。
製造工程と代表企業
原料調達:
東レ株式会社: 世界各地から高品質な原綿を調達
クラボウ(倉敷紡績株式会社): 綿花の調達から製品化まで一貫生産
紡績:
日清紡ホールディングス株式会社: 高品質な紡績技術を持つ
豊島株式会社: デニム用の糸を専門に生産
染色:
カイハラ株式会社: ロープ染色法を用いた高品質なデニム生地の生産
日本毛織株式会社(ニッケ): 独自の染色技術を持つ企業
織布:
備後デニム株式会社: 旧式のシャトル織機を使用したビンテージデニムの生産
日本綿布株式会社: 最新の織機を導入し、多様なデニム生地を生産
整理加工:
倉敷紡績株式会社: 高度な整理加工技術を持つ企業
三菱レイヨン・テキスタイル株式会社: 様々な仕上げ加工技術を有している
最近のデニムのトレンド
一応、最近のデニムトレンドを調べてみた。
クラシック回帰と再定義
近年、ストリートファッションの流行が落ち着きを見せ始め、クラシックなスタイルへの回帰が見られる。 特に、2024-25年秋冬シーズンは、クラシックを再定義する流れが強まると予想、 これは、単に過去のクラシックスタイルを再現するのではなく、現代的な解釈を加え、新たな魅力を引き出すことを意味するとのこと。
クラシックの再定義は、以下の3つのコアに分類できるとのこと。
1.グランパコア: 英国カントリースタイルをベースとした、おじいちゃんが着ていたような、懐かしさを感じさせるスタイル。 バブアーのジャケット、マッキントッシュのステンカラーコート、ガンチェックやアースカラーなどを取り入れるのが特徴。
2.オフィスコア: 近年プラダが牽引している、テーラードジャケットやスラックス、ストライプシャツなど、ビジネスシーンを彷彿とさせるアイテムを、普段着として取り入れたスタイル。 ビッグシルエットや素材、コーディネートで変化を加えることで、現代的なオフィススタイルを表現。
3.カウボーイコア: 1970年代、2000年代初頭のY2Kファッション、そして現在のヴィンテージトレンドが融合したスタイル。 ルイ・ヴィトンが牽引役となり、ウエスタンシャツ、ブーツカットデニム、スエードハットなどが人気を集めている
公開情報のまとめ
デニム市場は今後、グローバル需要の拡大、プレミアムジーンズの成長、サステナビリティ意識の高まり、オンライン販売の増加、地域との連携、海外市場の展開、技術革新といった要素がカギになると見られている。
まず、世界的なファッション志向や快適さ、耐久性に対する評価が高まり、新興国での需要が増加。日本市場も一定の規模を維持しつつ、プレミアムジーンズなど品質やストーリー性を重視する消費者が増え、高付加価値化が進んでいる。また、環境意識の高まりに対応し、リサイクル素材の活用や製造プロセスでの環境負荷低減が求められており、日本のデニムメーカーはサステナビリティ対応を強化している。
また、オンラインショッピングの普及により、特に若年層でデニムのオンライン購入が増え、企業も自社サイトやモール出店でコストを抑えつつ販売を拡大している。さらに、日本のデニム産業は地域ごとに集積し、地域の魅力を発信する動きも活発で、地域との連携による価値創造が注目されている。海外市場では高品質が評価されている一方、物流や言語の壁などの課題もあり、情報収集や連携が重要とされる。
最後に、技術革新も重要な要素で、3DプリンターやAIデザインなどが導入され、製品と製造プロセスの進化が期待される。
特許情報分析
さあ特許情報分析を行なっていく。
特許検索式
検索式に使う要素は会の通りである。
キーワード:denim jeans
IPC(特許分類):
A41D 1/00 衣服
D06F 67/00 グループD06F61/00,D06F63/00またはD06F65/00に分類されるアイロンかけ機の細部(アイロンかけまたはプレスこてに用いるカバーまたはパットD06F83/00)
D06P 1/00 使用する染料,顔料あるいは助剤により分類された繊維製品の染色または捺染の一般的方法または皮革,毛皮または種々の形態の固体状高分子物質における染色の一般的方法
(denim OR jeans) AND class_ipcr.symbol:(A41D1/00 OR D06F67/00 OR D06P1/00)
計470件のファミリーの母集団となった。
分析結果
特許データベースはLens.orgを使用している。対象は世界特許である。
出願推移

1990年代でようやく特許の出願が行われており、最近出願増加している様子である。
過去の世界売上データがなかったため、過去のリーバイスの売上から考察すると、

国内需要は縮小しているものの、世界的には微増傾向になっている。こちらは需要増加に伴い、特許出願数の増加となっている様子である。
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