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逆子でなにが悪い

お腹の子が逆子のため、5日後に予定帝王切開にて第二子を出産する。

逆子と初めて診断されたのは10月、妊娠28週ごろだったと思う。
よく動く子みたいだし、まだまだ戻る可能性はありますよ〜と言われた。

第一子の時は逆子ではなかったので40週で計画無痛分娩で出産した。
初めての出産への恐怖や予定日超過でそわそわするのに忙しく、逆子や帝王切開のことはあまり考えたことがなかった。
なので、逆子というものを調べたり意識したのは人生で今回が初めて。

とはいえ妊娠中期までは逆子が半数近いというし、後期には95%ほど?が自然と直るということだったので、特別に何かすることはなく上の子のお世話に追われながら過ごした。

だが30週になってもそのままだったので、逆子体操を紹介された。
体操といっても、ラジオ体操みたいにもりもり動くわけではない。
胸を床に近づけ尻を高くあげる姿勢を5〜15分ほど保つ。ヨガの猫の伸びのポーズのような格好だ。その後胎児の位置によって左右どちらかの横向きに寝る。
じーっとしているだけだが、これがしんどい。
お腹が大きい状態で同じ姿勢でいることが逆に苦しくて退屈だ。
これをすれば絶対直るというわけでもなく、推奨していない産院もあるらしい。
気休め程度にやっていたが、面倒くさくて仕方がなかった。

また、鍼灸もやってみた。
調べたら逆子に効果のある方法としてよく出てきたのと、友人がそれで直ったと聞いたのでとりあえず行くことにしたのだ。
熱さにどれくらい耐えるべきものなのかもよくわからず、こちらも効くのか半信半疑のまま2回ほど通って家でも渡された灸をやった。


色々やったものの、やればやるほどお腹の子が逆子のまま収まりが良くなっていくのを感じた。
ボコボコと胎動は活発なのだが、位置は変わらない。
ここにいるぜ!!と堂々たる意思を感じるほどだ。

頭が下の場合、胎動はへそより上の方で感じやすい。でも逆子だと膀胱や恥骨のあたりが蹴られる。

寝る前に逆子体操やらお灸やらをしたのに、翌朝も変わらず力強く膀胱を蹴られるのを感じて少し落胆する日々にどこか疲弊している自分がいた。

逆子で悪いか、とお腹にいる子とともに何かに反逆したい気持ちだった。


そう。
逆子だというと「あらら……」「直るといいね」「○○すれば直るっていうよ!」という反応をされることが多く、心のどこかでそれが嫌だった。
まるで逆子がとても悪いことのような。

でも私は自分の身体とお腹の子のことを否定したくなかった。
周りの反応に流されて逆子を直さなきゃと焦っていたけど、お腹の中くらい自由にさせたい。
そこにいたいならいなさいという気持ち。
34週でもまだ逆子で、帝王切開の日を予約した日、それが本心だと気づいた。


「こっちが正しい向きだよーと話しかけてあげると赤ちゃんに伝わって直るというよ!」

「足が冷えたりして悪いものがたまると、赤ちゃんがそっちに安心して頭を向けられないから血流を良くしてあげて!」

そんな眉唾ものの諸説を聞くたびに、気色わるいなと感じていた。
確かに帝王切開がない時代だったら難産でかなりリスクが高かっただろう。
でも今は帝王切開がある。

もちろん初めて経験する帝王切開は怖い。
上の子のことを考えると長い入院期間や傷の治りは心配だ。
経産婦で前よりスムーズに産める可能性を考えると経膣で産みたい気持ちも確かにある。
だが経膣分娩でも同じく怖いし、無痛でも結局会陰の傷はその後1ヶ月近く痛かったし、緊急帝王切開になる可能性もある。
産んだ後についても心配なことだらけなので、それに比べたら信頼できる医療のもと行われる帝王切開への恐怖はまだマシ。

さくらももこ氏が自身の妊娠・出産について書いた著書『そういうふうにできている』には帝王切開についての章がある。
さくらももこ氏も逆子が理由ではないが帝王切開でご出産された。
術中の思考についての描写が哲学的で不思議で面白く、私はどんなふうに感じるのかなと半ば楽しみですらある。


いざその時になったり、実際経験したらまた違う感想になるかもしれないけどね。
今はその日を迎えるまでドキドキしながら、お腹の子と力を合わせて日々を乗り越えている。


上の子がいるので、入院・出産日が決まっているのはありがたい。
心も体もモノも準備ができる。
また、前回は予定日を超過したけど今回は38週0日で産むので、この苦しい臨月期間が短縮されると思うと救われる気持ちだ。


とりあえずあとはもう医療の力に身をまかすのみ。
やっと妊娠している身体から解放される喜びと、新しく命をこの世で受け止める不安、ようやく会える楽しみをいっしょくたに抱えて、来たるその日を指折り数えて待っている。

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