杞憂
小さい頃。いや、小学生時代と言ったほうが的確かもしれない。
今とは違い、運動が好きな部類の人間だった。低学年ではサッカーのスポーツ少年団に所属していたし、高学年になれば陸上競技をやっていた人間だった。
その時、嫌いなものが未だに一つだけあった。
それは「空」だ。
ひとくくりにしてしまったが、晴れ、雲、雨、すべての空が嫌いだった。
準備体操や練習で転んだ時、運動会の組体操の瞬間が嫌いで仕方がなかった。
調べていると関連して出てくるのは「海洋恐怖症」。それに通じて「空恐怖症」というものなのかもしれない。同じものを持つ人達が口を揃えて「空に落ちていきそうだ」と言う。まさしく私もそれである。高いところにいるわけではないのに、足がすくんでしまうのだ。
空を飛んでいる風船や凧揚げとなると、私はもう無理だ。頭の中で勝手に物体までの距離を感じてしまい「引っ張られたらどうしよう」などと頭のおかしいことを考え始めてしまう。
もう少しだけ調べてみると、大昔の人が「空に落ちてしまうのではないか」ではなく「空が落ちてきそうだ」と考えていた人がいるらしく、夜も眠れず食事も取れないほど怖がっていた。
そこから出来た言葉が「杞人の憂い」「杞憂」。
つまらない悩みごとだと言われているけど、当の本人はそれどころじゃないよってのは身を持って分かる。
空が怖いのは昔のことだけで今はそうでもない。
もしそうでなければ、死ぬまでこのまま空に落ちそうだから怖いと言い続けて周りからは杞憂だと言われるのだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?