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映画「劇場」を見た30代HSP男子

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「火花」で芥川賞を受賞した又吉直樹の2作目となる同名小説を、主演・山崎賢人、ヒロイン・松岡茉優、行定勲監督のメガホンで映画化。中学からの友人と立ち上げた劇団で脚本家兼演出家を担う永田(山崎賢人)。しかし、永田の作り上げる前衛的な作風は酷評され、客足も伸びず、ついに劇団員たちも永田を見放し、劇団は解散状態となってしまう。厳しい現実と理想とする演劇のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独と戦っていた。そんなある日、永田は自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡茉優)を見かけ、彼女に声をかける。沙希は女優になる夢を抱いて上京し、服飾の大学に通っている学生だった。こうして2人の恋ははじまり、お金のない永田が沙希の部屋に転がり込む形で2人の生活がスタートする。沙希は自分の夢を重ねるかのように永田を応援し、永田も自分を理解し支えてくれる沙希を大切に思いながら、理想と現実と間を埋めるかのようにますます演劇にのめりこんでいく。(映画.com抜粋)
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この作品を見てまず思ったのは、永田のダメ男具合が自分とそっくりだと思ったこと。
「自分は才能がある」と思いたい自分と、他人からの評価を恐れて他人を避けて殻から抜け出せずにどんどんコジらせて素直になれずに苦しむ。
他人にはそれっぽいことを言うが、自分はそれが出来ないというモヤモヤした気持ちを消化できないまま日常を過ごしていく。

そんな永田でも彼女の笑顔を見た時に「この時間がずっと続いてほしい」と願い、ふざけて沙希を笑わせようとする
しかしそれは素直なものではなく、「彼女が笑顔でなければ自分の居場所が無い」と感じる恐怖心からくるものだったんだろう。

作中で沙希が通っている学校の男性の友人から原付を貰い、それを永田に嬉しそうに見せるシーンがある。
しかし、永田は沙希が男性と関わったり他の劇団を褒めることに強烈な嫉妬心と劣等感を持ち、急に冷めた態度をとる。
急に沙希の原付に乗り、沙希を置いて公園らしきところをグルグル何周も回る。
途中で沙希が原付で走る永田のタイミングに合わせて「バァ〜!」とふざけて出てくるところがある。しかし永田は沙希をスルーし淡々と原付に乗り続ける。
また永田が近づいてきたら何度かふざける沙希だったが、徐々に元気がなくなり黙って立ち尽くすだけになってしまう。

どんな時も笑って誤魔化したり、怒ってる時や悲しい時ですら笑ってしまう沙希が無表情になって本当に悲しそうなのだ。
さすがの沙希でも笑って虚勢を張ることができず、素直な悲しさが出てしまっているのだ。
このシーンが個人的にけっこう好きだった。

永田は沙希の前では強気だったり感情的になる。
沙希が永田の作品を褒めたとしても、永田は「バカにしてるんだろ!」と怒り散らす。
しかし、沙希が他の人と話していると会話に入ろうとせず、離れた場所で沙希が話終わるのを待っている。
これも今の僕と全く重なって共感してしまった。
自分に自信が無かったり、他人から評価されることが本当は怖いのだ。
どこか「自分は欠落した人間なのではないか」と自身で思っている部分があるが故に、相手からの素直な良い評価を受け取ることが出来ない。
沙希は中学時代からずっと演劇部に所属し、永田よりも演劇の暦が長いのだ。
そこも永田にとってかなりのコンプレックスだったのかもしれない。
沙希だけには評価されたいと思いながら、沙希からの評価を素直に受け入れられない自分にすら怒りを感じていた。

側から見れば永田は面倒くさくてコミュ障な人間だと決めつけられて終わりなのかもしれないが、永田の精一杯の自分を守る術なのかもしれない。
沙希に世話になりっぱなしで罪悪感を抱えながらも、居候してる沙希の部屋が永田にとって安全地帯なのだ。
しかしそれは自分自身で作り出した安全地帯ではない為、強烈な依存になって抜け出せない。

誰が見てもダメ男だと思う男をなぜ沙希は世話をし続けるのか。
それは沙希自身も東京という街に憧れを持ち、沙希の中での東京の大部分が永田を占めているからだ。
永田を失うことは自分にとって憧れだった東京を手放すことになる。
だから徹底的に永田に甘くなってしまうのだ。
沙希自身も永田に執着し、去勢を張って生きているのだ。

男女の仲というのは友情関係には無い複雑さがあるよね。
友人には素直になれるのに彼女には素直になれなかったり。
ちなみに僕の元カノ(14年前)は当時20歳の若さで居酒屋の店長をしてて、同じく当時20歳の自分は無職だった。
出来る彼女に対しての嫉妬と何も出来ない自分の情けなさとか、モヤモヤを吐き出せずに彼女に当たってしまったことがあったよ。
ニコ生で仲良くなったのがきっかけで付き合ったんだけど、今思うと「なんであんな出来る人が自分と付き合ってたんだろう」と不思議に思うね。

やっぱり自分と重なっちゃう映画っていうのは特別なものがあるよね。
客観的に見ると冷静に判断できるけど、自分事になるとその異常さに気付けなかったりするんだよね。
最近の映画ではないけれど是非みんなにも見てもらいたい作品でした!

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