ガガイモ ~その実に神様を乗せた薬草~
ここ八ヶ岳では、昼間はミンミンゼミが鳴いていて、夜になると秋の虫が鳴いているという、季節の変わり目真っただ中です。
今年は蒸留用にジャーマンカモミールを育てていたのですが、通常は30センチくらいの高さまで成長してから次々花を咲かせますが、今年は高さ10センチくらいで小さな花を咲かせた後はそれ以上大きくなることもなく、見ていると明らかに今世ではなく次の世代に意識を向けていることがわかります。
植物は次の季節のことをわかっています。
今年は、今まで通りのタイミングで背丈を伸ばしてからでは種をつけて命をつなぐ前に冬が来ると判断したのでしょう。
よもぎなどのほかの植物も、通常の背丈になる前にみんな今の時期に蕾をつけています。
植物を見ていると、先のことを予知する能力はきっともともと私たちも持っていたのだろうなと思います。
便利なものと引き換えに失った能力もきっとあるのだろうなと思います。
さて、前置きが長くなりました。
今日はここ八ヶ岳でよく目にするツル性の薬草、ガガイモについてです。
今の季節ちょうどお花を咲かせています。
ガガイモのどこが好きかと聞かれたら、迷わずここ。
花びらの内側の毛です。
蕾の時はツルっとシュッとした感じですが、花びらが開くと内側だけにモフモフの毛が生えています。
ツンデレみたいな、花びらの外側と内側のギャップが好きです。
ガガイモの内側の毛は、自分の内側を大切に守っているような愛や優しさを表しているような気がします。
そしてその優しさが、然るべきタイミングが来たときに外側に開いていく感じがまた好きです。
ちなみに余談ですが、花びらの内側の毛が好きシリーズの植物もうひとつ。
サオトメバナ。(一般的にはヘクソカズラという名前です)
優しいだけではなくて、この色からは何ともいえない、意志の強さを感じます。
(サオトメバナについては、以前こちら↓で書かせていただきました。)
http://8mot.com/culture/10529/
ガガイモにまつわるお話で好きなお話は、スクナビコナのお話。
昔スクナビコナという神様がいたそうです。
スクナビコナは、マルチプレイヤーの神様で、薬、温泉、おまじない、穀物、知識、お酒、石の神様だそうです。
古事記によると、スクナビコナは、国造りに際し、天乃羅摩船(アメノカガミノフネ=ガガイモの実で作った舟)に乗り、鵝(ヒムシ=蛾)の皮の着物を着て波の彼方よりやってきたそうです。
スクナビコナが乗ってやって来たとされる、ガガイモの実はこちら。(画像はWikipediaより)
ススキの穂に巻き付いて、真ん中が割れ、中の種子が見えています。
実の先端はスッと尖っていてかっこいいです。
こんなスタイリッシュな舟に乗って、スクナビコナはやって来たそうです。
ガガイモの実の長さは5センチほど。
スクナビコナはとても小さい神様だったようです。
そしてもうひとつガガイモにまつわるお話。
上の写真では、種が中からのぞいていますが、ガガイモの実を二つに割ると、驚くほどたくさんの種が中に詰まっています。
こんな感じ。(画像はWikipediaより)
小さな種一つ一つに、キラキラ光る白い毛が付いているのです。
実を二つに割ると、パンパンに詰まった毛のついた種が、中からモワモワっと手品のように出てくるのです。
思わず誰かに見せたくなるほどです。
白い毛玉のような物体で空中をフラフラと飛んでいて、小さな妖力を持つ妖怪とも言われ、謎の生物といわれている「ケセランパサラン」は、実はこのガガイモの種ではないかというお話もあります。
さて、ガガイモの薬効についてです。
ガガイモは、蔓や葉を傷つけると白い液体が出てきます。
上記写真の、葉脈の真ん中あたり、白い液体が出ていますね。
この液体は乾くと固まって木工ボンドみたいな感じなのですが、虫刺されや蛇にかまれたとき、イボなど塗るとに効くと言われています。
乾燥した種や、茎、葉を粉末にしたものを内服すると、滋養強壮に聞くとも言われています。
また、キラキラ光る白い毛は、止血の効果があるとされています。
ぜひ活用してみて下さい。