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ホトケノザの命の繋ぎ方
この季節、道端や田んぼの畔で見かけるこの方。
ホトケノザ(仏の座)。
なんだかありがたいそのお名前は、幾重にも重なる丸形の葉っぱが、仏様が座る蓮座の姿に似ているから。
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花の形は唇の形。これは唇形花といってシソ科の植物のお花全般に共通する形で、この花の奥にある蜜を求めたやってきた虫たちは、複雑な形の花の中で蜜を求めてもがくうちに体に花粉がたくさんつくようになっている。
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そうして体にたくさん花粉をつけた虫が他のホトケノザのお花に訪問することによってホトケノザは受粉し、種ができる。
もし花に虫が来てくれない時でも、ホトケノザは一度花を咲かせた後に閉鎖花といって、蕾のまま開かない花をつける。
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この閉じた花のなかでホトケノザは自分の花粉を自分のめしべに付けて受粉し、種を結ぶ。
また、ホトケノザの種の周りにはエライオソームという、アリが大好きな味の成分が付いているため、種は下にこぼれた後、アリによって遠くに運ばれる。
アリは食べ物を一度巣に持ち帰る習性があるため、ホトケノザの種は一度アリの巣の中に運ばれて種の周りのエライオソームだけ食べられる。その後巣の中で邪魔になったホトケノザの種本体は巣の外に運び出されて発芽する。
植物は自分の種をなるべく遠くに運ぼうと工夫している。自分の足元で種が芽生えた場合、なにか環境に変化があると自分も子供も全滅してしまうから。
「かわいい子には旅をさせよ。」は植物界にも当てはまる言葉で、ホトケノザはアリの力を借りて種に旅をさせている。
ちなみに春の七草のホトケノザはこの植物ではなく、キク科のコオニタビラコを指す。