恐怖の乳がん宣告!そして「情報の迷路」へ・・・
胸にしこりを見つけ、近所のブレストクリニックへ。お医者さんの険しい顔つきに不安感を覚えながら検査をして、約1週間後「浸潤性乳管癌」の告知――左胸に約4cm、左脇にも白い影。
お医者さんいわく、
より詳細な種類を調べるために大学病院に紹介状を書きます。どの病院がいいですか?具体的な治療方針は大学病院での結果次第伝えられるかと思いますが、おそらく抗がん剤は必要かと・・・
とのこと。
本格的な治療に向け、お医者さんが説明をしてくれるも、脳も心も整理が追いつかないまま。
そして生まれて初めて本格的な「死の恐怖」と向き合いながら、インターネットの海での迷走が始まります。
「あとどれくらい生きていられるのだろう」
「親はなんて言うだろう」
「抗がん剤ってキツイんだよね? 本当に打たなきゃダメなのかな」
「今後仕事も遊びもできなくなるの?」
「治療費はいくらかかるんだろう」・・・
などなど、あらゆる雑多な考えが一度に押し寄せ、思考停止状態に。
なおかつ自分の身近に、年齢や状況など境遇が近い人に乳がん罹患者がおらず、何をどうしたら良いのかが全く分かりませんでした。
にんじんジュース?ケトン食?情報の迷路に突入
次から次へと湧いてくるあらゆる疑問に対し、まずは何かしらの答えを得たい! とひたすらネット検索。
Googleで出てくる病院のサイトや謎の論文、ブログやTwitterでの体験談など、取り止めもなく情報を摂取していました。
もう自分で何をどう検索したのかは覚えていませんが、「標準治療をしました」から、「抗がん剤などを使わずにんじんジュースやケトン食で治した」「抗がん剤は毒だから打ってはいけない」だの、膨大な相反する情報を前に、とにかく圧倒される日々が続きました。
頭に浮かぶのがドラマなどでよく目にする「抗がん剤治療で大変な思いをしている人」の絵。正直、抗がん剤の投与を避けられるならば避けたい思いでいっぱいでした。
標準治療」=平凡な治療?じゃあ「プレミアムな治療」もあるの?
主にTwitterを眺めていると、治療方針としてはどうやら大まかに以下の2パターンに分かれていることが多いということが分かってきました。
標準治療という、抗がん剤や手術、放射線治療などを行うもの
食事や運動など生活改善を行い、抗がん剤や手術などを行わないもの
結果からお伝えすると私は1の「標準治療」を選択しました。これが最善の手段と思うかどうかは個人の価値観によるところですが、私個人としては良い選択だったと思っています。
“標準治療”という言葉の響き・・・なんだか平凡そうな治療方法に聞こえませんか?
私は最初そう感じてしまい、いわゆる免疫療法など、「なんか先進医療っぽい印象がある治療法」の方が良いのかと思い、色々と調べていました。
「お金を払えば抗がん剤など辛そうな症状もなく、より治療効果の高いプレミアム治療があるのでは」
って思っていたのですね。
そんな風に思う人は私以外にも結構いらっしゃるようで、慶應義塾大学病院ブレストセンターの以下の記事に回答があります。
上記にも「標準治療は叡智の結晶」という旨の記載がありますが、私が学んだのは「標準治療」=「何万人という乳がん患者さん協力のもと、世界中の施設で研究をし尽くした最適解」ということです。もちろん、医療技術は日進月歩で進んでおり、今後新たな画期的な治療法なども出てくる可能性はありますが、非常に膨大なデータに基づく信頼性の高い治療法である標準治療は、現時点の最良治療と言って差し支えないと考えています。
(個人的には「経過観察」も「標準治療」も、ネーミングが微妙だなと感じます)
アメリカで抗がん剤を打つ人はいない!?
自力で治す系のブログやポストも経過を見てきましたが、結果として「自力では治らず悪化してから標準治療をするも、手遅れになってしまった」となっている記事も多く読みました。
特にちらほら目にするポストが
「アメリカでは多くの人が抗がん剤なんて使っていない」
という意見です。
一見、「日本より医療が進んでいそうなアメリカ人の多くが抗がん剤を使っていないなら、抗がん剤って悪い治療法なのかな?」と頭をよぎりました。
ここで気をつけなければならないのは、このポストの一文からは「アメリカは日本みたいな皆保険制度がないので治療費が高すぎて抗がん剤治療を受けられない人が多い可能性がある」という背景が読み解きにくい、ということです。
特に癌告知を受けて大ショックを受けて、混乱した頭で読み取ることは難しいと思います。
標準治療が良いのか、またはそれ以外の治療法が良いのかは私には提言できず、ひとりひとりの判断になりますが、もし私の身近な人で年齢・状況などが自分と似ている人が癌になってしまった場合は「標準治療」を勧めると思います。
どういう流れでどういう治療がなされるのか
ネットはパラパラとした情報収集には良いものの、一連の流れとしてどういったものがあるのかを、特に告知を受けてすぐの混乱の最中で集めるのは大変な作業です。
私の場合、アラフォーで(当時は)既婚という条件もあり、大まかな流れはこんな感じでした。
地元のブレストクリニックで組織生検、癌確定
↓
転移具合など、大学病院でCTなどの追加検査
↓
卵子(胚)凍結
↓
抗がん剤を開始(FEC→ドセタキセル)
↓
乳房切除&同時再建手術(この時再建にはシリコンバッグを挿入)
↓
再建手術(広背筋皮弁法という、背筋を持ってくる再建方法。※小胸向けの方法です 笑)
今は「いつかやるかも?」の乳頭再建に向けて肋骨の一部を取ってもらい、乳頭近くに入れてもらっています。乳頭再建は2泊3日くらいで終わっちゃう手術ではあるらしいですが、ちょっと面倒なのでサボっており、以下のような状態になっています。
ちなみに私は「放射線治療」はやっておらず、現在は毎日寝る前にレトロゾールという錠剤1錠を飲み、半年に一度リュープリンという注射を打つ治療だけを継続しています。
治療全体の流れを知るために助けられた書籍
このような抗がん剤や手術、体験談などで私が大変助けられた漫画が『乳癌日記』です。
著者の夢野さんもホルモンタイプの乳がんを告知され、「告知された時の心情」「一連の流れ」「使える国の制度」「手術してどんな感じだったか」など漫画で詳細に書いてくださっているため、今後自分が受ける治療のイメージがつきやすく、とても助けられた情報のひとつです。
手術入院中も枕元に置いて、いつでも読めるようにしていました。
この書籍の特に好きなポイントは、
「ブレストセンターのお医者さん監修」
「著者の方が実際に乳がん治療を体験されている」
「絵柄や話のトーンが全体的にポップで明るく、希望を持って治療を受ける気持ちになる」
ところです。
特に抗がん剤治療前って「投与したら、もうそれ以降はずっとしんどさで何もできなくなっちゃうんだ」という印象を持っていましたが、この実体験漫画を読むことで、「意外とそんなこともないのかも?」不必要に暗い気持ちにならずに済みました。
私の場合は落ち込んでじっとしている時に副反応もきつく感じてしまう節があったので、夢野さんの体験談を参考にしながら、出かけたり忙しくしていることが良かったように思います。(※もちろん、体調については薬剤や人によって症状の出方も違いますし、個人差があるので、あくまで「私の場合は」です)
病院からの情報ももちろん参考になるのですが、やっぱり実際に乳がん治療をされている方の情報を知りたいと思っていた私にとって、病院側の情報も患者側の情報も両方知ることができるこの漫画は、まさにバイブルのような存在でした。
もし当時の私のように、インターネット情報の迷路に入ってしまっている方がいらっしゃったら、是非こういった書籍もご参考にされてみてはと思います。