君と夏が鉄塔の上を読んで

私がこの本選んだきっかけは、夏休みが始まって、読書感想文を書くための本を探そうと考えたとき、新型コロナウィルスが流行し不要不急の外出が制限されているこの状況で人が集まる図書館や本屋に行き本を購入するのは、感染の面からあまり良くないと判断し、今回は別の方法をとり、新たなコンテンツとして最近注目されている電子書籍というコンテンツを利用し読書感想文を書くことにしたからです。そして、その電子書籍のコンテンツに存在する数々の本の中から、気になる本を吟味していた時、表紙もキャッチーで、あらすじからとても興味を引いたこの本にしようと選びました。
 この本のあらすじは、鉄塔マニアで地味な男子中学生の伊達成美が主人公でそんな彼が、破天荒な女の子だと学校中で噂になっている帆月蒼唯から「鉄塔の上に男の子が座っている」と声をかけられたことから、幽霊が見えるという比奈山を含め、まるで接点のないような同級生三人組が鉄塔の上に座る男の子の謎を解き明かすためひと夏の冒険をすると言うあらすじです。
 私がこの本の中で印象に残っているシーンは、破天荒で変な行動ばかりしている性格の帆月蒼唯が、その行動の理由を涙ぐみながら力なく主人公の伊達成美に打ち明けるシーンです。なぜそのシーンが印象に残ったのかと言うと、作中で最も明るい人物であり、何を考えているのか分からないような性格の帆月が自ら自分の弱い部分をさらけ出す姿がとても印象的で、彼女の葛藤や寂しさが垣間見えたシーンだからです。理由を打ち明けている話の中で、彼女が学校中の噂になるほど変な行動ばかりしているのは、人に忘れられたらそれは死ぬことと一緒だから、少しでも人の印象に残るようなことをして自分以外に人に忘れられないためだと話していました。彼女が零した「忘れられたら死ぬ」という考え方は今までの自分の中で考えたこともないようなことで、その言葉から彼女が感じ続けてきた悲しさや孤独感がとても伝わってきました。自分の存在を忘れられるということは、自分との思い出も一緒に忘れられてしまうということであり、自分も誰かに忘れられてしまったらと考えると虚しさと悲しさの感情が込み上げてきます。彼女のように自分以外の人に忘れられて死にたくないとも思い、それならば忘れられて死なないために私は今をどう生きるかと考えました。彼女は忘れられてしまわないために誰もが驚くような行動をしていましたが、私なら自分の友人と沢山の写真を撮ります。写真なら形として手元に残るし、写真を見ればその時の思い出や些細な出来事も楽しかったこととして思い出すことができるので、今の友人達と時が経つと共にどんなに遠くに離れようとも写真を見るだけでその時の記憶にが蘇り、友人達の中での私は死んでしまわなのではないかと思います。この本を読んでいなければ、今の楽しいことや友達との思い出もいつか忘れてしまい、自分も友人もお互いの中で死ぬなんてことは考えもしていなかったでしょう。しかし、この本を読んで友達の中でも私の中でも生き続けていけるよう、今の楽しい思い出と友達との日々を大切にしたいと改めて感じることができました。
 そして、この物語の主人公は鉄塔マニアという人にはあまり理解されないような趣味を持ち、他人とのコミュニケーションに対しては積極的ではなく、自分の周りの小さなコミュニティのなかで自分なりに楽しく学校生活を送っているというような人物で、そんな人物像がアイドルオタクな自分によく似ていて、主人公にとても親近感が湧いてよりこの本の世界に入り込むことが出来、主人公も心情に共感する場面がいくつもありました。そんな主人公が、帆月と比奈山と謎を解明するために冒険することで物語が進むにつれて、どんどん前向きになって視野が広がって周りとのコミュニケーションも積極的になっていく姿をみて自分も彼のように人との関わりを大事にして他人のさまざまな個性や意見をお互いに受け入れていけるような人になりたいと思いました。
 新型コロナの影響で友達と遊びに行けず思い出の少なかった夏休みが、この本に出会って本の中の世界にシンクロして登場人物達と冒険し新たな価値観を得て成長したことで、自分にもひと夏の思い出ができたようなそんな感覚になった本でした。私の無色の映画のような夏休みを一気に色付けてくれたこの本の記憶を私はいつまでも忘れずにともに生きていきたいです。
#君と夏が鉄塔の上読書感想文

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