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In case of crisis or war

ポストに届いた1冊の冊子

 11月のある日、家に帰ると1冊の冊子がポストに入っていました。

表紙から何かを感じ取る

少し気になりながらも、スウェーデン語だったこともあり、すぐには読んでいなかったのですが、程なくこの冊子がニュースになっていることを知りました。

スウェーデン政府は18日、何百万人もの国民に対し、戦争や予期しない危機が生じた場合について、備えと対処方法に関する助言をまとめた、新しいパンフレットの配布を開始した。

「もし危機や戦争が起きたら」と題したパンフレットは6年前にも配布されたが、最新版はサイズが2倍になっている。スウェーデン政府は安全保障状況の悪化、つまりロシアによるウクライナ全面侵攻を受けて、パンフレットの内容を更新した。

https://www.bbc.com/japanese/articles/ced9ey13eglo

 そう、政府が危機や戦争に備えるために国民に配布したパンフレットだったのです。

様々な言語で作成されている

 手元に届いたのはスウェーデン語のバージョンでしたが、ウェブサイト上で英語版を入手することができました。本記事のタイトルは、本冊子の英語版のタイトルです。

 英語版だけでなく、
・ アラビア語(Arabic)
・ ペルシャ語(Farsi)
・ フィンランド語(Finnish)
・ メアンキエリ(Meänkieli)※ フィンランド語の方言
・ 北サーミ語(Northern Sami)
・ ポーランド語(Polish)
・ ロマ語(Romani Chib)
・ ソマリ語(Somali)
・ 南サーミ語(South Sami)
・ ウクライナ語(Ukrainian)
と、非常に多くの言語で書かれたものが掲載されており、しっかりと情報を届けていくという強い意志がうかがえます。

内容① 危機に対する態度

 前書きと最初の2ページは、スウェーデンが国家としてどのように危機に対応していくのかを書いています。

To all residents of Sweden
(前略)To resist these threats, we must stand united. If Sweden is attacked, everyone must do their part to defend Sweden’s independence – and our democracy.(後略)

In case of crisis or war(p.3)

If Sweden is attacked, we will never surrender.
Any suggestion to the contrary is false.

In case of crisis or war(p.5)

 上述の抜粋のように、スウェーデンの危機に対する強い態度がうかがえます。そして、国民一人一人が緊急事態に備えるための役割の一部を担っているとし、平時からの準備を呼びかけています。

内容② 基本的な防衛の仕組み

 続く7ページでは、スウェーデンの基本的な防衛の仕組みについて説明されています。Military defenceとCivil defence、またNATOとの関係についても説明されています。Civil defenceはあまり聞きなじみのない言葉ですが、Military defenceをサポートし、人命や重要な公的サービスを守ることを主な目的としたものとされています。
 また、各種のアラートとその意味についても解説されており、3ヶ月に一度、実際にテスト放送がなされています。今週の月曜日(12/2(月))にも実施され、自宅でアラートを聞いていました。そして、近くの穴や溝に隠れるといった初歩的な防衛から、シェルターに入るといった最も効果的な防衛までの段階についても紹介されています。

自宅のある建物にもシェルターがありました

内容③ 個人ですべき準備

 後半のページでは、各種の個人でできる準備について説明されています。まずは家に備えるべきものとして、水・熱源・連絡手段・食料・通貨・トイレ等が挙げられていました。これらは日本で災害に備える際とあまり大きな差異がありませんが、「水を凍らせておけば、患部を冷やすバッグとなる上に溶けたら飲むことができる。」といったTipsに加えて「ペットボトルに水を一杯にして凍らせるのは破損のおそれがあるから避けるべき」といった細かいインストラクションがあったり、日頃からフルーツやベリーを育てておくと良いといったことが紹介されていたりします。
 また、偽情報等による心理的な混乱から防衛する方法や、サイバー攻撃への備え、応急処置の仕方、自然災害や感染症といった戦争以外の危機への対応等についても説明されています。
 更には、危機に対して不安になったときの対処法として、身近な人等と話すことや、周囲が危機に備えるのを手伝うこと等が挙げられています。子どもに対しても、状況を説明すること、不確かな情報は伝えないこと、答えがない場合には正直に認めること等を通じて、不安に対処するよう書いています。
 ペットを飼っている場合に、日頃からどのように準備すべきかについても、危機時に安全な場所に連れてくることを前提に、保管しておくべき食料等を含めて、1ページの説明が割かれているというのも特徴的な点といえます。

日頃の備え

 本冊子が配布されること自体、日本ではあまりなじみのないことで驚きましたが、危機に備えることの重要性や具体的な準備の仕方等について、国民の目線に立って説明されていたことで、よく理解することができました。スウェーデンで日々を過ごしていて、このような危機感に直接接することは幸いにもありませんが、「備えあれば憂いなし」ということは意識していきたいと思います。

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