なぜ福祉工房はパン屋さんが多いの?|役所で売ってるパンの秘密
前回は非営利法人・営利法人の違いや障害者総合支援法の枠内の福祉事業所とColaboはどう違うのかについて解説した。
まず、一般社団法人Colaboは障害者総合支援法の枠内の福祉事業所とは別の法律内で運営している事業者なので、ここを押さえないとそもそもどこが批判対象になるのかすら分からない。
障害者総合支援法の枠内の福祉事業所のサービス一覧
下図がその一覧だ。
今回はその中でも比較的、皆さんに馴染みのある就労継続支援B型の事業所をご解説したい。
就労継続支援B型の事業所って何をするところ?
就労継続支援B型とは、障害のある方が、一般企業に就職することに対して不安があったり、就職することが困難な場合に、“雇用契約を結ばずに”生産活動などの就労訓練を行うことができる事業所だ。
障害者総合支援法という法律で定められた、国の就労支援サービスのひとつで、「就労の機会の提供」や「就労に必要な能力を育む」ことを目的としている。
簡単に書くと、障害があって一般企業で働くのは不安だけど、働きたい障害者の方に働くのに必要なスキルを訓練しつつ、お給料も出ますという事業所のことだ。
就労継続支援B型の事業所のお給料は激安
だけど、そのお給料がとても安い…激安なのだ。
令和2年度(2020年)で何と時給223円!
でも、これでも上がったほうなんです。
〇〇福祉工房ってよくパンとかクッキーを売ってるよね
皆さんも自分の住まいの近所や役所に行った際に、パンやクッキーを売っている「〇〇福祉工房」という看板を1度くらいは見たことがあるのではないか。
あれこそ、とても分かりやすい就労継続支援B型の事業所なのである。
なぜパンやクッキーなの?
筆者の自宅の近所にもやはり「〇〇福祉工房」というおいしいパンを販売している事業所がある。
「激安!焼きたて!おいしい!」
ので近隣住民から区外から評判を聞いた人までが行列をなしている。
だけど、なぜパンなのか、クッキーなのかを実際に社会福祉法人の就労継続支援B型の事業所の管理者に取材をしてみた。
パンは機械で焼けるから人手がいらないよね!
筆者もパンを焼くのだが、手作業だとものすごく大変。
鬼の仇のようにパン生地を机にたたきつけるともっちりおいしいパンが出来上がる。
嫌な上司に嫌味を言われた翌日に焼いたパンなんか最高にもっちりしている。
でも、あの労力って家庭で手作りするからであって、お店として販売しているところは作る量が違う。
当然、機械も導入している。
そして、そこにはパン職人さんが指導に入っている。
だから、安くて、おいしいのだ。
なので、手作業でやる部分が非常に少ない。パンの成型の部分はおそらく手作業だろう。
だから、障害者の人がスキルを身に着けながら社会参加するのにいいでしょう!お弁当って具材がいっぱいあるから、手作業の部分が多いんですよね!
ということが取材の結果で分かったのだ。
お弁当作りに駆り出されるお母さんたち
逆にお弁当を作っている工房の実態は何かといえば、障害者のお母さんたちが低賃金もしくはボランティアで必死に支えている。
障害児がいると働けないお母さんたちはとても多い。
以前、こんなことをツイートしたのだが、分かる!そう!
自分は役所の人に「辞めるの当然でしょう!!」と言われて泣いた!
などの声がものすごく多かった。
障害児を産んだら、今までの仕事のキャリアも全て捨て、育児のみに専念し続けるお母さんは多い。
障害児は一定の数、産まれてくるのだから、多くのお母さんたちが自分の人生を子に捧げることになることも。
果たしてこれは人道的なのか。
安心して子どもを産めるのか。
福祉事業所も企業努力が必要
筆者が取材した中で、福祉事業者の中でも「福祉はビジネスだ」「いや、福祉をビジネスにしちゃいけない!」と意見は割れる。
だけど、そういった事業所の方でも
「営利・非営利法人問わず代表者の仕事って大差ないですよね」
というと賛同してくれる。
企業努力をしなければ事業所が潰れてしまう。結果的に今、ケアしている
障害者の方たちも困る。その経営努力がないと、結果的に、障害者の賃金も上がらない。
結局、その賃金の安さ・高さは代表者の経営手腕によるのだ。
異常な福祉事業者へのバッシングに思うこと
前回の記事の内容もそうなのだが
こういった背景を知らずに批判しているのは、無知だとはいえ
デマを拡散する前に自分の頭で考え、調べよう!
なのです。
何も背景を知らずにColabo批判や福祉事業者批判をするのはただの誹謗中傷に過ぎない。
今、起きていることを冷静な視点で見ていきたいと思う。
田口ゆう(あいである広場 編集長 https://ai-deal.jp/)