
毒親育ち|幸せな家庭で育ったあなたが眩しい
以前、村田らむ氏に取材してもらったのだけど、我が家の父はかなりの毒親だった。アルコール依存で酒乱の父が仕事から帰宅すると、家が凍り付いていた。機能不全家庭に生まれ育った。
話してなくても惹きあう毒親育ちたち
つらかった過去なんかわざわざ語って歩かないけれど、気づいたら周りも毒親育ちだらけだったということはよくある。
大学時代にクラスで仲良くなった女友達4人で旅行に行ったことがある。みんな実家の話なんか1度もしていなくて普通に仲良くなった子たちだ。夜に枕を並べて恋の話かと思いきや、いきなり始まる「私は父が暴力を振るう人だった」という告白。そこにいた全員が「実家はお金はあったけど、酷い親だった」という経験を持つ子ばかりで驚いたことがある。
サークルで仲良くなった親友もそうだった。大手マスコミの記者の娘で、父親がお酒を飲んで暴れたなんて時、よく公園で2人で「帰りたくないから遊ぼう」といって朝まで話していた。
暴力を受けてきた人たちの悲しい習性
ふと話していて「この人もそうなのか」と気づく瞬間がある。ふと手を上げたときに、防御姿勢を取るから気づくことがある。「お父さん、殴る人だったの?」と聞くと「そう。どうしても癖で抜けない」という話になったりする。
子どもの頃の心の傷は大人になってもまだ尾を引いている。
何が共通しているのか
そういう家庭に育った人たちに共通しているのは、すごく人当たりもよくて
自分が嫌われないすべを身に付けていること。女友達はだいたいモテた。
なぜそうなるかって、親の顔色を窺って生きてきているから。そうじゃなきゃ生き抜いてこられなかったから。だけど、ふとした瞬間にすごく暗い表情を浮かべる。雰囲気で惹き合っているんだろうと思う。
子どもが産まれてから受けたカウンセリング
そういった機能不全家庭で育つと、いわゆる「ノーマルな家庭」で育つ経験がないので、モデルケースがすでに歪んでいる。
そんな知識はあったし、自分が不安定な自覚もあったので、私は子どもが産まれた段階で、臨床心理士さんのカウンセリングを3年受けている。
そんな負の遺産は子どもに引き継ぎたくない。その一心で、私はカウンセリングを受けた。自分の認知がいかに歪んでいるのか、普通の家庭に育った人たちと何が違うのか、そんなことを修正していく作業をした。
そんな父に介護が必要となる
そんな3年があったお陰で、私の周りには「ごくごく幸せな家庭で育ちました」という人も寄ってくるようになった。だけど、上の記事にあるように親の介護に直面したとき、私は父を虐待しない自信が持てなかった。だから、すごく動揺した。だって、小さい頃は自分を殴ってた人。その人が自分より弱っていて自分の助けが必要な状態なのだ。復讐心が沸きそうで怖かった。
だから、私は周囲の信頼できる介護従事者にどう接したらいいのかを、胸の葛藤とともに吐き出した。「プロに任せる」それが結論だった。
でも、幸せな家庭で育った人たちは無邪気に「親なんだし自分で介護しようと思わないの?」「お父さんがかわいそうだよ」なんて言うんだ。
幸せな家庭で育ったあなたが眩しい
そんな気持ちになることはよくある。「親孝行しようと素直に思えるあなたがうらやましい」「親との話を無邪気に話せるあなたが眩しい」「あなたみたいに私も育ちたかった」そんな気持ちがムクムク湧き上がってくる。
そんな時に「私はあなたみたいに幸せな家庭で育っていない」「あなたと一緒にしないで」「私を冷たい人間だと責めないで」「結婚のたびに親の話を気にする私の気持ちが分かるのか」「あなたには理解できっこない」とどす黒い気持ちがわく。
知人とそんな話をしていると「めちゃくちゃ分かる。だけど、そういう人たちの眩しさや素直さ、純粋さに惹かれて、憧れる自分もいるんだよね。そうなりたいって」と言われて、すごく同感だった。
あなたといたら私の傷は癒されるの?あなたといたら、私もあなたみたいになれるの?あなたとなら幸せな家庭を持つことができるの?
そんな気持ちも同時に持つ。
生まれ育った環境は選べない
そんな時に幸せな家庭に育った人に「眩しいんです」「うらやましいんです」と打ち明けたことがある。
そしたら「自分が幸せな家庭で育ったことも田口さんが違ったことも選べなかったでしょ」と言われて、すごく気持ちが楽になった。
そう、その人たちも選べなかったように私も選べなかった。そういう意味では同じなんだ。
そんな日にYOASOBIの幾田りらさんの「Answer」を聞いて、臆病な自分でもいいって思った。
朝陽が昇る 「いつか」を追いかける
伸ばした手では
まだ届かない場所
この胸の奥に住みつく臆病が
僕の心を蝕まぬように
今ほどいていく
40代になっても臆病な心をほどきながら私は生きている。死ぬときに幸せだって思える人生を生きたい。そうやって自分の心の闇と向き合って生きている
息子の前で手を上にあげてみた
カウンセリングを受けた結果、私はまともに子どもを育てられているのかな。
ふと手を上に挙げてみた。
息子はとても無邪気にハイタッチしてきた。
たぶん大丈夫
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