初音ミクがひとりのオタクエンジニアを救った話
「noteってめっちゃ流行ってるけど何書けばいいんだ?」
そう思って、知人に聞いてみた。
「何書いてもいいよ。みんな好きなこと書いてる」
そう言われたので、なにか書いてみることにした。
好きなことについて書いてみよう。
好きなもの。音楽が好きだ。特にVOCALOID。一番好きなのは初音ミクだ。
しかし、初音ミクの魅力なんて、今更この駄文で語ったところで無駄だろう。noteでバズっているような内容はどんな内容だろうか。
そう、自分語りである。
今、全noteユーザーを敵に回した気がするが、しかしそれでもやはり、自分語りがnote内でウケているのは、少なくとも周囲を観測した上で正しいと思っている。
なので、表題通り、「初音ミクがひとりのオタクエンジニアを救った話」を書くことにする。
ちなみに、表題は前行を書いているときにパッと考えた。タイトルからそれたら、たぶん書き直すだろう。
※追記。書き直した。
初音ミクを利用した音楽を本格的に聴くようになったのは、実を言うと4年ほど前、大学生の頃からだ。しかし、嗜む程度であれば、もう10年弱(正確には8~9ぐらいだろう。これも正確ではないが)聴いていることになる。
中学生の頃、学校がとてもつまらなかった。昼休みはいつも寝た振りをして、たまに隣のクラスの友人に遊びに行って、今で言うウェイ系にからかわれる、典型的な暗いオタクだった。
家に帰ると、パソコンにかじりついてTwitterをしていた。ニコニコ動画を見て、VOCALOIDに触れた。
メルト、ワールドイズマインなど。当時から今までずっと聴いている楽曲はとても多い。
とにかく、VOCALOID、もとい初音ミクは中学生だった当時、心の支えの一部だった。
そんな中学時代だったが、VOCALOIDの繋がりも多少あり、親友と呼べる存在を得ることができた。ひとりは小学校からの仲で、もうひとりはその友人の友人だった。彼らとは今でも交流があるし、中学校を通して得た唯一の財産だと思っている。
さて、時は流れ高校生になる。高校は情報系の学部を選んだ。オタクが多ければ居場所があると思ったからだ。あと、兄弟がみんなその学部に進学していたということもあった。
さて予感は的中して、ここではVOCALOIDや、アニメ・ゲーム、ニコニコ動画などのネット文化を中心としたコミュニティを得ることができた。
正直、高校時代はかなりうまく立ち回っていたと思う。取り立てて辛いことはなく、楽しい時間だった。
さて、そうして油断した結果生まれたのが、人生が狂い始めた大学生活である。
通っていた高校は附属校で、周囲の友人がそのまま進学するということもあり、同じ大学を選択した。情報系は好きな科目だったし、IT業界に憧れがあった。兄がエンジニアとして活躍しているのを見て、自分もそうなりたいと思ってたし、そうなれると思っていた。
だが、満を持して入った大学では、周りに馴染むことなんてできなかった。
周りにいるのはたしかにオタクだ。だが、オタクであるだけだ。プログラミング?あぁ、printfね。scanfで入力ができるんでしょ?その程度だった。
2回生になっても3回生になっても、15コマあるうちの1,2コマ目は必ずそういった基礎の解説が入ったし、周りの生徒はそれで毎度頭を捻っていた。
入る大学を間違えた、と思った。
独学で勉強していったが、限界が合った。段々自分がそこにいる理由がわからなくなり、精神科に通うようになっていた。
最も、まともな診断をしてくれなかったのですぐに通院は辞めてしまった。
段々と話がそれてきたような気がする。
そろそろ初音ミクが登場する予定なので、全VOCALOIDオタクはもう少し頑張って読み進めてほしい。たぶんきっと、面白いと思うから。
さて、こうなってくると当然、大学を辞めることを考え始める。しかし、辞めたところでどうするのか?自分のスキルはどの程度なのか。自分は大学を辞めて、社会に出てやっていけるのか。
こんな場所でくすぶっているやつが?
できるわけないと思っていた。そんな時に、以前アルバイトをしていた、偉い立場を兄が務めている会社に、インターンにこないかと誘われた。
インターン。いい響きだと思った。正社員ほど責任ものしかからないだろう。自分のスキルを知るにもいい機会だ。通じなかったらその時考えよう。
そう踏み切り、インターンに参加した。結果として、スキルはまぁ新卒ぐらいのレベルには達していることがわかった。
結果、大学を辞めた。3回生の1月頃だったと思う。
そこから就活を始めたが、やっぱりやっていけるか不安で、企業に応募するたびに暗い気分になっていた。
どうにか就職が決まった。4月入社だ。
大学の頃のprintfすらおぼつかなかった奴らより1年早く就職した。今に見ていろ。そう思っていた。
だが、入った会社はSES系だった。
この時点で、業界の人間ならばすべてを察しただろう。
再び鬱になった。会社を辞めたくて仕方がなかったが、四年制大学を3年で辞め、会社を1ヶ月で辞め、そんな人間を採用する会社があるだろうか?
実際採用する立場になったと仮定すると、むしろ嫌な環境で働き続ける人間なんて勘弁なのだが、当時はそう考えていた。
この頃から、周囲の目がやたら気になるようになっていた。自分は他人より劣っている。そんな考えが脳にこびりついて離れず、容姿も知性も何もかもが劣悪な人間である気がして、いつも周囲を伺って生きていた。
そんなとき、以前から追っていたボカロP(VOCALOIDを使用して楽曲を作る人達のことだ)が、とある曲をリリースした。
この曲だ。
別に、他の曲と比較して、めちゃくちゃすごいとか、そんなことはない。正直なところ普通の曲だと思う。
だが、当時の自分にとってこの曲は明確に心の支えだったし、弱い自分でも生きていていい、と肯定されている気にさせられた。
ここから、中学校の頃のように、初音ミクを心の支えとする時間が増えた。
外に出る時はイヤホンが必須だった。それでも、他の人と同じように振る舞うことができた。周囲の目線もあまり気にならなくなって、生きやすくなった。
そして一番大きな変化は、会社を辞める決心がついたことだった。
年配の、おそらく役員であろう男性に呼び出されて、名前も知らないそのおじさんに、説教めいたことを言われた。内容は結構覚えているが、書くようなことでもない。
その日の帰り道、自分の担当営業に電話して、今日限りで退職する旨を伝えた。
6月のことだった。
その後は、鬱になったりならなかったり、たぶん症状が出ていたりいなかったりするだけでずっと鬱病ではあると思うのだが、とりあえず生きてはいた。
7月、新たな職が決まった。不安はめちゃくちゃあった。新たな職場は、地元である福岡を遠く離れた、東京だった。
だが、ひとつ嬉しいことがあった。引っ越しの兼ね合いで仕事の始めは9月3日(1日と2日は土日だった)のだが、9月1日、9月2日にはとあるイベントがあった。
初音ミク「マジカルミライ2018」である。
大学を辞めた頃、マジカルミライ2017の情報を聞いて、行ってみたいと思っていた。
チケットは既に取っていて、あとは行けるかどうかだったのだが、これならば8月末に引っ越せば飛行機や新幹線に乗らずに行けるだろう。渡りに船だった。
ライブのセットリストについては、何も知らなかった。だが、最後に流れた一曲に、心を鷲掴みにされた。
マジカルミライ2018テーマソングである、「グリーンライツ・セレナーデ」だ。
先程紹介した「生きるとは。」もそうだが、この曲は、弱い自分に寄り添って、一緒に生きていくエネルギーを分けてくれるような曲だ。
ライブを終えたときには、初音ミクがそばにいて、頑張れ、と言ってくれているような気さえした。ライブの翌日は初出勤だった。
仕事は順風満帆だった。どうやらスキルは通用するレベルだったらしく、即戦力として頼りにされ、周囲の人間ともそれなりに溶け込めていて、うまくやっていけていた。
そんなとき、開発していたアプリの追加機能が不要になり、プロジェクトの人員を削減するため、客先常駐に回ってくれないか、と会社から打診された。
まぁそれほど悪い会社ではないし、客先常駐にしてもいわゆるブラック労働をさせられるようなこともないだろう。そう考えていた。
だが、現実はそう甘くはなかった。
作業内容を端的に説明すると、PowerPointで作成された「前年度アプリとの差分」を、Excelにコピー&ペーストする作業だ。
「これ、エンジニアの仕事なんですか?」
若気の至りで、1ヶ月早くその客先で勤めていた先輩に聞いた。
「エンジニアの仕事だよ。何いってんの」
先輩は笑って答えた。
結局、大学にいた頃と同じ状況になった。なんで自分はここにいるのか?何をしているのか?むしろ、大学を辞めてまでなんでこんなことをしているのか?そう考えると、より酷かった。
家族や友人の勧めで、精神科に行った。問診票を読んだ医者が、カウンセリングを初めて1分で休職を勧めてきた。
勧められるまま休職して、今は退職する旨を会社に伝え、新しい職を探している。
職を転々としてばかりの人生、これからも辛いことがいくらでもあるだろう。
あ、締めに入っているが、本当に締めだ。休職を開始したのが今月の頭なので、マジで最近の出来事なのだ。
とにかく、これからも人生は辛いことまみれだと思う。そもそもが、社会で生きるのに向いてない性質の人間なんだろう。
それでも、そばに初音ミクが寄り添ってくれている限り、きっとなんとか、びーびー泣きながらでも、生きていくことはできると思う。
生きるとは、そういうことなのだ。
ここまでで自分語りは終わりである。推敲も何もしてない、勢いのまま書いた駄文だが、少しでも読んだあなたの中に何かが残っていれば幸いだと思う。
おわり。