ドラクエYS観てきましたのでレポというか感想みたいなモノ(後編)

 今度こそラストです。
 これで終わらせる!という強い意志。

 そして、レポ執筆に時間をかけすぎてそろそろ台詞やシーンの細部への記憶が薄れてきて、最後まで書ききるのが難しくなってきてて困る、今日この頃。がんばりまーす。


・まえにかくこと

(BGM#Love song探して)

 世間を賑わせている映画
 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー(以下YS)を観てきたので、記憶にある限り、冒頭からストーリーを追いつつの感想というかレポートを書き殴りしたいと思いったやつの後編です。


 なお、本文は筆者である北乃ゆうひ個人の感想でありレポートです。
 すべての人がこの感想になるわけではありません。そして何よりこの感想を根拠とした余所への批判・批評はおやめください
 このレポートはあくまでも、おいら個人の主観でしかありません。
 また台詞の引用はうろ覚えです。そんなニュアンスだった程度に受け取ってください。


 あらすじ含めた全編ネタバレ フルスロットル 手加減なし
 まだ観ておらず、ネタバレは困るという方はお気をつけください

 また、ドラクエYSに限らず、各シリーズのネタバレや、ドラクエ以外の作品のネタバレなども出てくるかと思いますので、ご了承の上、お読みください

 なおこちらは後編です。
 前編・中編をまだお読みでない場合は、先にそちらをお読みください。


 また、何度か口にしている「神速ドルマドン」。こちらは正しくは「連続ドルマドン」だったことをお詫び申し上げますが、面倒なので前の記事はなおしません。ご了承ください٩( 'ω' )و


・復活のM

(BGM#未来のために戦う)

 ドラゴンオーブによってマスタードラゴンの姿となったプサンの背中にのって、リュカ、アルス、ゲレゲレ、スラリンは出撃!

 空中にいる飛行系モンスターをぶっちぎり、神殿へ。

 神殿の最上階付近周辺の一カ所に飾られているビアンカを見つけ、アルスがストロスの杖をシュート!

 投げるんか! やっぱりお前ストロスの杖投げるんかッ!!

 ともあれ、ビアンカ復活。
 ビアンカをパーティに加えて、再び飛び立つマスタードラゴン。

 屋上では何か儀式っぽいことやってパワーアップ完了気味のゲマ。
 見た目、10のメラガイアーっぽい炎の塊をマーサに投げつけると、マーサの結界は崩壊し、放り出されてしまう。

 そこへマスタードラゴン到着!

 ゲマへ向けて突撃するも――

「かつてのようにはいきませんよ」

 とばかりに、マスタードラゴン瞬殺。
 墜落して、屋上のなんか妙に広い場所へ。

 広間へと落ちたマスタードラゴンはプサンの姿に戻り――ん、戻ったって言い方正しいのかしら?――、彼の背中から飛び降りたリュカたちはマーサのもとへ。

 あ、プサンことマスタードラゴンの活躍はここまでです。
 まぁ序盤にリュカ助けたり、ラスダン突入時に雑魚相手に無双できたんだから、それなりに活躍したよね!

「リュカ……これ以上、ゲマの好きにさせてはいけません……。
 それに、此度のミルドラースは何かおかしい……以前とは違う、大きな、力を……」

 すべて言い終えるより先に意識を失うマーサ。

 その姿にリュカが怒りを露わにしたところへ、ゲマがあざ笑うように告げる。

「さぁみなさん、相手をしてあげてください」


(BGM#戦火を交えて)


 周囲からわんさかモンスターが出現し、バトル開始。

 ゲレゲレがビアンカを援護しながら、ビアンカは大呪文連発し、リュカとアルスは剣を握って大立ち回り。
 カメラアングルとか含めて、このシーンもすごい好き。

 リュカはもちろんバギマですよ。
 アルスもギガンテスに握りしめられるも、ギガデインぶっぱして脱出。

 とはいえ、多勢に無勢の状況で、徐々に追いつめられていくリュカパーティ。

 戦い続けるのも逃げるのも難しい……その時――


・こういうシーンはやっぱり燃える

(BGM#敢然と立ち向かう)

 どこからともなく、船が現れて広場の中央に。
 そこには、うんこ塗りたくられた王子ことヘンリーが!

「言ったであろう! 何かあれば、余はお前のもとへと駆けつけると! 皆の者! リュカたちを援護するぞ!」
「おで も がんばる!」

 ブオーンと共にヘンリー率いるラインハット兵が戦場に現れて、魔物たちとのバトルを開始。

 敵の攻撃を受けそうになるリュカを、ヘンリーは助けつつ――

「ここは余たちに任せよ! リュカは首魁を!」

 ヘンリーに背中を押されて、リュカは広場の先にある階段へと一息に駆け抜ける。

 いやー、やっぱこういう友人が駆けつける展開は熱いよね。
 例えそれが解釈違いがひどいくても! 解釈違いがひどくても!!
 うんこ塗りたくられたヘンリーでも!!!

 邪魔するモンスターを薙払い、リュカはゲマのいる祭壇へと続く階段を駆け上る。
 途中に、ジャミとゴンズが現れて行く手を阻むが――

「邪魔だぁぁぁぁぁッ!」

 リュカの攻撃! ジャミをやっつけた!

「退けぇぇぇぇぇぇッ!」

 リュカの攻撃! ゴンズをやっつけた!

 ……弱ッ!!!!!
 ジャミとゴンズ、弱ッ!!!!!!!!

 たったの一太刀だよ。一太刀。
 それぞれを一発づつぶった斬られて瞬殺KOだよ!?
 黒いモヤになって霧散しちゃったよッ!?

 これでこいつら退場かよ!
 この戦場においては、リュカ追いつめたゴーレムや、アルスを握りしめたギガンテスの方がまだ活躍してたよ!!!!

 こいつらの退場、これでいいの!?
 いやまぁ、視聴者的カタルシスとしてはゲマを倒した時の方が高いのは間違いないけどさ!!

 これまでの強敵幹部ムーブはどこいったお前ら!!

 同じ牛頭、馬頭モデルの幹部なら、毒牛頭と毒馬頭の方がまだ活躍するぞ!! 別の敵組織に洗脳されやすいって欠点があるけどな、毒コンビは!!
 あ、やっぱダメだわ毒コンビ。幹部直属のクセにすぐ余所の組織に洗脳されちゃうのはちょっとダメだ。組織からしてみると、面倒くさすぎる。優秀とはいえ……いや、あいつら優秀か?
 やっぱりジャミとゴンズの方が優秀かもしれない。

 いや、まぁともかく――こうして、リュカはゲマの元へとたどり着く!


・因縁の相手との戦い

(BGM#戦いのとき)

 リュカvsゲマのタイマン開始ッ!

 ここのバトルもかなり良かった。

「ゲェェェェェマァァァァァ――……ッ!!!!」

 ゲマの鎌を捌き、呪文を躱し、斬撃を放つ。
 リュカの剣を躱し、受け流し、バギマを打ち消し、鎌を振るって呪文を放つ。

 ゲマの呪文を受けて吹き飛ばされ、追いつめられるも、バギマ――ではなく、ここぞとばかりにバギクロスを使って脱出。逆にゲマを吹き飛ばし階段の踊り場へと叩きつけ、よろめくゲマへと渾身の力を込めて剣を突き出すリュカ。

「惜しい……実に惜しかったですよ」

 剣は切っ先ギリギリ届かず、ゲマの障壁に遮られ徐々に押し戻されていく。
 モンスターズに出てくるアタッカンタってこんな感じなのかしら?

 徐々に徐々に押し戻されそうになるも、必死に突き出し続けるリュカ。
 ただ、それも限界に来た寸前――

「まだだぁぁぁぁ――……ッ!!」

 階段を駆け上ってきたアルスが、障壁に天空の剣を突き立てる。

 リュカのパパスの剣と、アルスの天空の剣が、ゲマの障壁をぶちやぶり、同時に解き放たれたエネルギーの奔流っぽいものがゲマを飲み込む!

 ……ってこのエネルギーの奔流って天空の剣のパワーだって思うと、別に何の特殊パワーも宿してないパパスの剣を装備したリュカのパワーは別に乗ってないような……いや、うん。気にしちゃダメだ。良いシーンだから、不思議合体親子パワーで良いのだ。うん。

 不思議エネルギー砲に体をぶちぬかれ、首と腕だけになりながらもかろうじて生きてるゲマ。
 完全にデスタムーア最終形態みたいな感じになってる。お前、YSは一応5が原作だぞ。6ムーブすんな!

 そんなデスタムーアモードのゲマ。
 不思議パワーでマーサを手元に呼び寄せ、エネルギー化して吸収。
 マーサの記憶を得たことで、自分を生け贄に、魔界の扉を開く呪文を唱える!

 ちゃんと聞き取れなかったけど、アバカムじゃなかったコトは確か。
 いやまぁ魔界の扉なんてもんがアバカムで開いたら大問題だけど。
 最強呪文がアバカムなっちゃう! あらゆる門を開ける最強呪文アバカム。 魔界の扉どころか平行世界とか次元の境界すらをこじ開けるぜ!
 それどころか、人体にも魔物の体にも魔王のボディもこじ開けるぜ!!
 対象に触れてアバカム! 魔王の開きの出来上がり! つえぇッ、つえぇぜアバカム!!

 ……失礼。めっちゃ横道それた。
 最強呪文アバカムをベースに世界が形作られたドラクエとか出てきたら楽しいかもしれない妄想は余所でやります。

 こうして空に魔界の扉が開き始める。
 伝承には、魔界の扉に天空の剣を投げ込めば封印できるとあるけれど、ちょっと遠すぎるし、プサンはダウンしてるので役に立たない。

 ……いや、ほんと何でこのタイミングでドラゴンになれないのかね、プサン爺さん……。
 ゲマにやられて怪我してるとか言ってないで、老骨にムチ打ってドラゴンになってもう一度飛べよ! っていうおいらの感想は余所に、救いの手が現れる。

「おで が 投げる!」

 リュカが悩んでいると、ブオーンが現れそれを提案。
 アルスもよろしくお願いしますと言って、ブオーンの手に。

 天高く放り投げられたアルスは、魔界の扉を前に勇者の顔で、手にした天空の剣を投げつける。
 剣は見事扉の中へと入っていき、光と共に扉が閉まった。

「やった! やりましたよ! 僕やりました!」
「ああ! よくやったアルス! すごいぞ!」

 空から落下しながらも、喜ぶアルス。
 それを嬉しそうに褒めるリュカ。

 落っこちてくる子供を抱き止めて、
 あとはヘンリーたちが戦っているモンスターを蹴散らせば大団円。

 ビアンカもアルスを褒める為に階段を駆け上がり――


・WARNING! WARNING!!

=====!警告します!警告します!=====

ここより先は、YSの根幹たるネタバレについて書かれております。
同時にこれより先こそが、賛否両論の否が大爆発した原因です。

まだ未視聴でやっぱりネタバレを見たくという方、引き返すならここです。

未視聴だけど覚悟をキメた方。
すでに視聴済みでおいらのレポを見たい方。

この先のおいらの主観による感想は、世間の評価に反して肯定的な部分も多数発生しております。否定的な意見しか見たくないという方は、この先ご遠慮ください。

ではみなさま、上記をお理解し、ハラをくくったのならば、覚悟とともにご覧ください。

=====!すまし告警!すまし告警!=====



・凍れる刻の秘法

(BGM#--辟。髻ゥ--)

 リュカがアルスを抱きとめようとした瞬間。

 魔界の扉から、でたらめに石の組み合わせられた縦長のピラミッドのような逆三角錐にかろうじてみえる何かが姿を見せた。

 同時に、その逆算角錐から不可視の波動が放たれ、世界中の広がっていく。波動に触れたものの時間が停止していく。

 動けるのはリュカだけ。
 アルスもブオーンもビアンカも、階段の下で戦ってるヘンリーやラインハット兵も、モンスターたちも、雲も風も舞い踊る埃も、すべてが静止して静寂につつまれる。

 逆算角錐から放たれた波動をスラリンだけが物陰に隠れてやりすごすのが一瞬だけ見える。 

 ここまでは良かった。
 この緊迫感と何かが起こってる不気味さ。
 明らかに怪しいデコボコした三角錐が、ゆっくりと人型になってく感じ。

 何かやばいものが出てきた。
 その感じをアリアリと覚えさせる演出は圧巻だった。

 ほんと、ここの静止した世界と、ラスボスが人型になるところまでの演出は鳥肌ものだと思う。
 大団円の空気をぶっだ斬る歪な静謐。

 戸惑うリュカが、ビアンカに駆け寄って、触れても何の反応がないことに困惑する空気。
 彫像のように動きを止め、アルスを見ながら笑顔のまま固まってるビアンカ。

 画面越しに感じる邪悪な気配と、ゲマを越えるヤベェ奴の出現。
 動けるのはリュカだけ。
 天空の剣もなくなった。
 勝てる手段はあるのか。どうやって勝つのか。
 そもそも人型の造形が、原作のミルドラースからかけ離れすぎてる謎の敵。一体何者なのか。
 明らかに状況を分かって姿を隠したスラリンはどう動くのか。

 ――そんな全ての要素を内包したあの緊迫感は本当に悪くなかった。

「お前が……ミルドラースかッ!?」
「そうだな」

 肯定しつつも、視聴者的には「ええー? ほんとにござるかー?」って感じなんだけど、これがYS版ミルドラースなんだと思えば、なかなか悪くないツラ構え……いやツラ構えは悪くないんだけど……お前どっちかってーと、ドラクエじゃなくてメガテンにいた方が良いような……
 あ、でもイマジンとかいたな。ともあれそういう方向の白面系。

 そんな異物感満々の不気味なミルドラースを名乗る者は、出現と同時に口にした言葉で、視聴者の顔面凍結させる。

「わたしがミルドラースだ。いや正しくは、ミルドラースというデータを乗っ取って存在している……いわば、ウィルスだ」

 あああああああああああああああ…………ッ!!!!!!!!!

 思わず胸中で叫びたくなる。
 そう――これこそがYSを観た人たちを阿鼻叫喚に陥れた権化。

 ネタバレはゆるく踏んでたッ!
 スターオーシャン3の再来という噂は聞いてたッ!
 分かってたッ! 分かってはいたけどッ、やっぱ衝撃がでかすぎるッ!!

「ウィルス……何を言って……」
「分からないのか? この世界は全て造られたもの。虚構の上に存在するだけデータの塊なのだよ」
「虚構……? お前は一体……?」
「説明してもすぐには理解できないだろうがね。
 君にとって長い長い人生だったかもしれないが、外ではまだ数時間ちょっとの出来事なのだ。この世界は」

 そうしてミルドラースを名乗る者は、そう言って周囲を見渡し――

「ふむ。少しばかりデータが重すぎるな。まずはカラーデータをはがすか」

 全ての存在が真っ白に。

「まだ重いか。では重力設定も無くすか」

 静止したままの真っ白になった仲間やモンスターたちが、雑に宙へと浮き上がる。

「何をやってるんだ……やめろ!!」
「もっと軽くできるぞ」

 テクスチャーがはがれ、ワイヤーフレームになり、さらに分解されていく世界。

 世界が無意味なデータへ還元されると、あとはオババからもらった薬を飲んだ時に潜った深層心理世界にも似た空間に、リュカとミルドラースを名乗る者だけが残る。

「お前は……何を……!」
「目を覚まさせてやろうと思ったのだ。
 私を創造主は、虚構にうつつを抜かすものがあまり好きではなくてね。
 虚構に入り浸る者への、我が創造主からの親切だよ」

 この冷や水をぶっかける感じ。最悪である。
 オタク視聴者が多いだろう作品において、しっかりとした前置きなくこういう輩が出てくるのは悪手なのだ。たとえ伏線を張っていようとも。

「ゲームプレイ中は一時的に現実の記憶を封印できるのだったな。なら私が思い出させてやろう」

 いえ、結構です。とっとと退場しやがれください。
 そんな視聴者の思いなんて届くわけがなく、回想シーンに突入である。


 あまり期待してなかった映画だけど、それなりに作品へと引きずり込まれてたのに、このミルドラースを名乗る者の出現により、いろいろ台無しである。

 多くの視聴者が、ここで思考が停止したんだと思う。
 そのせいで回想シーンとかロクに覚えてないんじゃないかな。
 絶望と怒りとで、もうどうでもよくなっちゃう人がいるのもわかる。

 悪手なんだよねぇ……これ。
 もっと分かりやすい伏線があれば……とは思うけど……。
 いや分かりやすい伏線があった場合、その時点で頭がフットーしちゃうかもしれないけど……。

 SFとしては悪くないんだけど、ファンタジーの世界にひきずり込むような作り方をしておいてこれは本当に悪手。

 ただ事前にこの設定が判明していた場合、ここまで話題にはならなかった気がするので、良くも悪くも、衝撃展開のおかげでYSは話題になった気がする。

 そして話題になってなければ、おいらが観るコトもなかった気がするなー……みたいな。

 ともあれ、回想シーンスタートである。


・ユア ストーリーの真実

(BGM#楽しいカジノ)

 フルダイブVRゲームが実用化されている時代。
 ドラクエに関連するイベント会場だと思わしき場所のドラクエ5ブース。

「いやぁ、楽しみだったんですよ、これ」

 フルダイブVRマシンに移植されたドラクエ5。
 そのカプセル型マシンの中にいるのは、リュカによく似た青年。
 彼と会話しているのは、ピピンのコスプレしたスタッフ。

 あ、流れぶったぎるんだけど、フルダイブVRって何? って人いたりする?

 まぁいる可能性もあるから一応の説明したいと思いますけど『ソード・アート・オンライン』とか分かる? 分からない?
 なら『劇場版 名探偵コナン ベイカー街の亡霊』は? え? 分からない?
 もっと遡ると『クリス・クロス』は? ダメ? むしろこれが一番わからない? なんてこった!?

 どうしよう。説明が難しいな。
 上記の作品のどれかを知っている人に説明するなら、それらの作品のソレですって感じなんだけど……。 

 ……えーっと、ようするに五感の全てをちゃんと感じて遊べるゲーム。今のところ現実では実現不可だけど、現実に存在するVRゲームの進化の先の一つと言われているもので、近未来の地球を舞台にした作品ではたびたび登場しているもの。

 小説家になろう!を筆頭とした小説投稿サイトなどでは、わりとよく使われているネタの一つでもある。

 コントローラーではなく、多くは脳波や脳感覚による動きを参照にしてるので、もう一つの現実として遊べるゲームになるのかな?

 まぁザックリとそんな感じで。

「ドラクエシリーズは今までずっと遊んで来ましたからね。こうやってリメイクされる度に遊んできてるんですよ」
「名前とは決まってるんですか?」
「ええ、5を遊ぶときはいつもリュカでやってるんですよ」

 コンソールで名前入力している青年。
 その他の設定をコンソールでいじっているスタッフ。

 「幼少期 スキップ」という項目にはチェックが付いている。

「あ、ロボットとか出ます?」
「ええ。そういう設定にもできますよ」

 ……真面目にツッコミを入れるなら、DQプレイヤーはこんな言葉言わないよな。と思ったりする。
 ほんと、ツメが甘い。甘すぎる。要所要所ちゃんとやってるのに。

 キラーマシンやメタルハンターなら、冒険の途中にあえるじゃん!みたいな。

 まぁVRゲームとして構築する上で、結構なオミットが発生してるのかもしれないと考えると、こういうプレイ前の設定でいじっておかないと出会えないモンスターってのもいるかもしれないと好意的に解釈してみる。

「結婚イベントはどうしようかな……いっつも悩むだけ悩んでビアンカなんですけど、今回はフローラにしたいかな」
「自己暗示でもかけたらどうですか?」
「そうだね。そうしよう」

 フローラフローラフローラと呟いていると、脳波を感知したのか、準備画面に「じこあんじ」が設定されたましたと表示される。

「プレイ時間は二時間くらいですが、記憶を一時的に封印処置をしてのダイブになりますので、まさに一生分の冒険が行われますよ」
「いやー……楽しみだなー」
「では、ゲーム開始しますね。よい旅を」

 そうして、ゲーム機のカプセルの扉が閉まり、回想は終了。

 ユア・ストーリーとは、まさに、貴方(プレイヤー)であるリュカの旅を示してたのである。
 これまでの物語は全てフルダイブVRRPGとしての冒険でしかなかったのだ!


 ……いやまぁ、そりゃあ怒るわ。ファンは怒る。
 この手のネタに触れ慣れていたり、原作アリ大改変作品を色々と観て耐性のある人以外は、怒るよ。

 ぶっちゃけ、ファンじゃなくても怒る人はいると思う。
 純粋なファンタジー作品として観ていたドラクエ初見の人も、いきなりちゃぶ台返されて「実はSFでしたー」とか言われたら……ねぇ?

 もっと言うなら、おいらの嫁さんのように、スターオーシャン3というゲームにトラウマを刻まれた人たちは、このだまし討ちに対して、トラウマ抉られて余計にキレることでしょう。

 ただね、オタク以外でかつ「ファンタジー作品」というモノへの思い入れとかがない場合、怒らない可能性がある。いわゆる一般層というかなんというかの人たちね。

 そういう層にとってはこの展開を「斬新な展開」と賞賛する人もいると思う。

 そうじゃなくても絶賛してる人はいると思う。全然アリアリと言って楽しんだ人もいると思う。そういう人に対して、攻撃だけはしちゃいけないよ。

 少なくとも、おいらのそばの席の男の子は最後まで楽しんでいたからね。彼みたいな子に対してクソだっただろと強要するのはダメ。

 憤りも、虚無感も、視聴した人のもの。
 あるいは誰かの感想を観て、覚えた憤りや虚無感も、その感想を観た人のもの。

 自分の下した評価は自分だけのものだというのは忘れずに。

 なんか説教っぽくなっちゃってゴメンね。
 なんていうか、クソだとか憤るのは分かるんだけど、いきすぎた怒りをあちこちにぶつけてるような空気感がね、なんかネット界隈に蔓延してる気がしてね……。

 余計なお世話かもしれないんだけど、世間で言われるほどキレる域までは憤らずに視聴したおいらの老婆心のようなものだと思ってくだせい。

 それじゃあ、回想あけのシーンから再開しようか。


・生きてきた証

(BGM#死へのいざない)

 ……セリフ関連はわりと記憶が怪しいので、それっぽく書いてます。それっぽく書いてるのはここだけじゃないんだけど、この辺りはわりと記憶残ってる人も少ないだろうから、なおさらこういう注釈入れておいた方がいいかなって。
 なんか、そういうニュアンスのセリフだったってコトで。

「思い出したかね?」

 ゲームをプレイするにあたり封印されていた現実の自分を全て思い出してorz状態のリュカ。

「では、そろそろ目覚めの時間だ」
「いやだ!」

 何とか立ち上がるも、なんか凍てつく波動っぽい攻撃を受けて、身動きがとれない。

 どうやら強制ログアウト攻撃のようで、リュカのテクスチャーも徐々にはがれていく。
 まぁぶっちゃけ、強制ログアウトだとしたら耐えるってのも微妙な気もするんだけど、そう言う無粋なことは言わないでおこう。

「なぜ、目覚めにあらがう?
 全ては虚構だぞ? ここで起きた人生など無意味。現実では何の価値もないものだ」

 あ、そうか。
 このフルダイブVRは、睡眠に近い形でプレイしてるのか。なら目覚めにあらがえば一応、耐えられるのか。

「無意味なんかじゃない!
 積み重ねられてきた作品の歴史。多くのプレイヤーの思い。記憶。
 それらは間違いなく、ここにあるモノだ! ここに息づいてるものだ!
 この世界は虚構なんかじゃない! 間違いなく生きているんだ!!」

 ……だいぶうろ覚えなんだけど、リュカの啖呵はこんな感じ。
 ミルドラースを名乗る者に対するファンの憤りは、わりとリュカが代弁してくれてたりするのである。

 問題は、この啖呵が切られる直前のシーンまでの流れで、多くの視聴者が「どうしよう、私、頭がフットーしそうだよぉぉぅ……」みたいな状態であり、冷静さを欠いてしまっている為、記憶に残らないという部分である。大問題すぎる。

 ファンの心に息づいた素晴らしい作品シリーズであり、キャラもモンスターも、生きているのだ。

 そんなメッセージが込められた台詞で、YSの根幹のテーマはそれだったのだろうというのを思わせるシーンではあるんだけど……

 問題は、直前のシーンまでの流れで、多くの視聴者が「頭がフットーしてどうにかなりそうだよぉぉぉぉぅ……」みたいな状態であり、冷静さを欠いてしまっている為、記憶に残らないという部分である。どうしようもない。 

 ミルドラースを名乗る者の発言は、言ってしまえばゲームやマンガなどの娯楽メディアという存在を否定してしまう世間そのもの。
 今でこそオタクという存在は市民権を得ている時代になってるけど、それ以前の世界を知っているオタクからすれば、ミルドラースを名乗る者の発言は、かつて受けていた誹りそのものなんだよね。

 だからこそ、余計にムカつくし、頭がフットーしちゃうんだけど。

 ただでさえキャラの解釈違いが多く、オミットされたキャラクター、台詞、舞台などなどがあって、思い入れの強い人ほど眉をひそめてしまう形の作品ではある。

 それでも二時間の映画という短い枠の中で、それなりに見れる綺麗な形を造ってくれたから、最後まで観てやっても良いかな程度の肯定感を覚えるわけで……
 その僅かな肯定感で見続けていると、アルスが魔界の扉を封印する辺りで、まぁ、かこれくらいのデキなら許してやろうかなんて思う人が出始め、大円団を迎える作りになってるんだよね。

 アルスに対して、人によっては良くやった頑張ったってリュカと一緒に褒めたくなってる人もいたかもしれない。
 そんなYSという作品に対する肯定感の芽生えをぶちこわすように現れるミルドラースを名乗る者。

 しかもその発言は、大人のオタクほど言われたくない、かつて自分たちを否定し、なじってきた者の台詞そのもの。

 ビアンカとフローラの婚約者論争?
 二次元相手の結婚でバカなことしてんじゃねーよ、目を覚ませ。

 ドラクエ5を下地としたアニメ映画を観てる最中に作品側からこんなん言われたら、ビアフロ派のどっちもキレるわよね。わかる。デボラ派もルドマン派だってキレる。そりゃそうだ。

 だからこそ、ミルドラースを名乗る者の存在は悪手。
 根幹のテーマを総括したセリフをリュカに言わせる為のラスボスだったとはいえ、オタクの世界の没入具合というのは、一般層より深いというコトが失念された結果が、今回の大顰蹙に繋がったんじゃないかな。

 とはいえ、この根幹のテーマ。
 これまで長い刻を経て、積み重ねてきた歴史がある作品。
 そこに息づいた存在の肯定と、それを肯定しうるファンの言葉の重み。
 これって、クリエイター側にとっては、とてつもなく嬉しい言葉だったんじゃないかな。

 自分たちが作り上げてきたものは、こんなにも受け入れられて、世界に根付き息づいているとまで言われる。
 クリエイターとしての視点で見ると、すごい嬉しい言葉なんじゃないかなと思う。

 そして、その言葉を、ゲームを楽しんでいる主人公たち――本作のリュカだけでなく、DQに限らずあらゆるゲームを楽しんでいる全てのプレイヤーたち含む――を代表し、本作の主人公であるリュカが宣言するような構成。

 ゲームをバカにする者たちに対する、ゲームを肯定する者たちの吐露。それがこういう形で放たれた。

 だからこそ、そういう時代を重ねたシリーズを作り続けてきた人たちにとって、この映画は良いデキと思えるのかもしれない。
 自分達が作り上げたものは、気づいてきたものは、重ねてきた歴史は決して無駄ではなく、無価値では無く、プレイヤーの中に残り続けている。
 それを実感させてくれる台詞というのは嬉しかったのかもしれない。

 虚構の中で虚構を否定する存在に対し、現実から遊びに来てる存在が虚構を肯定し虚構を守る。
 ただ自分の居場所を守る為ではなく、そこに息づくキャラを、世界を、歴史を守る為にあらがう。

 こういう構図は、考えようによってはオタクたちへの強い援護射撃だったのかもしれないんだけど、狙いを定める為の試射の数発撃った時点でフレンドファイアしすぎてるのが問題となってしまったわけで…… 

 だけど、そんなフレンドファイアしてしまっても、肯定してくれてる人達は少なからずいる作品でもあるんだよね。


・最終決戦の行方

(BGM#決戦の時)

 ともあれ、たった一人でミルドラースを名乗る者にあらがうリュカ。

 虚構の拒絶という攻撃を仕掛けてくるミルドラースを名乗る者は、言葉を重ね、データ改変を重ね、リュカを追いつめていく。

 そこへ、リュカを肯定する存在の代表として、どこかへと隠れていたスラリンが現れる。

「私はミルドラースを名乗るウィルスの存在を事前に察知していた者が送り込んだワクチンプログラムだ!」

 ミルドラースを名乗る者の攻撃を受け止めながら、その背中から、光り輝く剣を召喚する。

「君の意志は間違っていない。
 たとえ虚構であっても、あのような勝手な理屈、勝手な都合で滅ぼしていいわけがない!
 使えッ! この剣は、あいつに対抗するために作りあげたワクチンデータだ!」

 スラリンを名乗る者の背中から姿を見せた光り輝く剣。
 ロトの剣の姿をしたワクチンをリュカは手に取り、構え――

「全ては嘘の積み重ねだ。嘘の中にまみれ続けてなんの意味がある! いい加減目を覚ましたまえ!」
「違うッ! 共に旅をし、共に笑い、積み重ねてきた歴史は、決して嘘なんかじゃないんだ!」

 ミルドラースを名乗る者に突き立てた。


(BGM#愛する人へ)


 ゆっくりと修復されていく世界。
 完全に修復が終われば、ゲームは中断していたところから再開することになる。

「エンディングまでもうすぐだ。最後まで楽しんでくれたまえ」
「もちろん」

 消えゆくスラリンを名乗る者にうなずき、リュカもまた時間が停止する直前に戻っていく。

 ゲームをプレイするにあたって封印していた現実の記憶は戻っている。
 それでも、自分はこの世界に生きるリュカとしてエンディングまで、みんなと一緒にいたい。

 そんな雰囲気と共に、ゲーム進行の現状復帰に身を任せるリュカ。


・エピローグ

(BGM#結婚ワルツ)

 世界が再生し、ゲームが現状復帰を果たすことで、時間が動きだす。
 ゲーム進行状況再開直後、何か違和感を覚えたのか、ビアンカたちは周囲を見渡す。

 リュカの様子がおかしいコトに気づいたビアンカは、「何かあったの?」と訊ねた。

「ミルドラースが現れたんだ。でも、もう倒したよ」

 詳細は省き、そう口にする。
 疲れた様子のリュカから何か感じ取ったのか、ビアンカもアルスもそれに納得した様子で、良かったと笑いあう。

 モンスターたちも撤退していき、神殿の上空に集まっていた暗雲は晴れて、青空を見せる。

 晴れ渡る空の下、リュカはビアンカたちと、勝利を喜び合う。


(BGM#この道、我が旅)


 季節は恐らく春か夏。
 サンタローズと思われる街を見下ろせる丘。

 もうすぐエンディングも終わる。
 エンディングが終われば現実に戻らなければならない。

 そのことに寂しさを覚え、リュカが空を見上げる。

 アルスが丘の天辺からリュカを呼ぶのも、上の空。
 そんなリュカをビアンカがひっぱたいた。

「もう! なにぼーっとしてるのよ」
「痛いな……」
「何で嬉しそうなの?」
「いや、だって痛たかったから」
「は?」

 この世界で体験したことは、決して嘘じゃない。
 仲間や家族と過ごした大事な思い出だ。

 今回だけでなく、これまでしてきた旅も、きっとこれからするであろう旅も。

 アルスの元へと駆け、一緒に眼下の街を眺めながら、ゆっくりと暗転。


(BGM#序曲)


 そしてスタッフロールである。


 嫁さんは無の顔に、近くにいた男の子はまんざらでもなさそうな顔に。
 おいらは無と笑顔が五分五分の不気味な泡フェイスになっておりましたとさ。


・終わりに

 そんな訳でストーリーを追いながらの感想でした。

 各所のセリフは完全ではなく「覚えてる範囲でこんなニュアンス」だと思ってもらえば。

 色々とネガティブな話題の多い作品でしたが、個人的には悪くなかったかと思います。

 ミルドラースを名乗る者の存在と、その在り方、そして根幹のVR設定に関しては、限りなくナシよりのアリというのが個人的な見解です。

 やりたいコトは分かったし、それを伝えようとするメッセージも正しく受け取れたとは思います。
 ですが、さすがにメッセージの発信の仕方がよろしくなさすぎた。

 一般層向けであれば問題はなかったんでしょうが、ドラクエの……しかも人気が高い5をベースにした作品ではやるのは頂けなかった。

 何かのインタビューで、監督はラストの展開を閃いたから、本作を作ろうと思ったと答えていたそうです。

 ネタとしては悪くないのですが、そうであったならば、事前にVRワールドが舞台となっているというのを提示した上でシナリオ進行していった方が良かったのかもしれません。
 ただその場合、多くのプレイヤーが劇場に足を運ばなかった可能性もあるので、難しいところではあるのですが……。

 ユア・ストーリーというタイトルに込められた意味も、リュカの物語という訳ではなく、これまでドラゴンクエストを遊びその歴史を積み重ねるのに協力してきたプレイヤーたちを示しているというのも、悪い演出ではなかったんですが、やっぱりオタク層の好む展開とはほど遠く、残念な結果になってしまったんだと思います。

 作品単体として見ると、超神速ドラクエVというものではありましたけど、押さえるところは押さえてあり、要所要所の見所もちゃんとあった作品です。

 最後の展開だけを示して駄作と呼ぶには勿体ない作品だと思いますが……まぁおいらもまたドラクエファン。

 ミルドラースを名乗る者の出現、VRワールド設定……どちらに対しても色々と思うものはあります。

 オタクとは深みにハマるもの。
 作中にハメてくる要素が多々あり、人によってはがっつり飲めり込む要素も多くありながら――そんな虚構にどっぷりとハマったタイミングで冷や水浴びせてくるギミックは、ドラクエファンであろうとなかろうと、オタク気質を持つものにとっては、歓迎しがたいものなんですよね。

 これが完全オリジナル作品であれば、また評価が違った部分もあったのでしょうけれど、ドラクエと銘を打って世に出た以上は、今の評価も仕方ないと思います。

 良くも悪くも、本作の監督は、一般層向け作品を作るのが上手い人なんだと思います。
 だからこそ、ドラクエファンやオタク気質の人以外が、単体の作品としてみた場合は悪くないと思える内容になっているのでしょう。

 ただ今回は、ディープなファンが多い作品だったのが災いしたのかもしれません。


 決してツマラなくはない。だけどファンやオタク向きの作品ではない。
 ドラクエを冠しているのにそういう評価になってしまう作品だと思います。

 偉そうなコトを言ってしまうようで、小心者のおいらは心苦しいのですけれど、
「作り手が原作を知っていようが、いまいが関係なく。
 作品のデキと世の評価が全て。面白ければOK。つまらなければ相応の扱いを受ける」

 そう思えば、今回の評価はやむを得ないところはあるんだろうなと思います。

 面白い、悪くないと感じたおいらは少数派。言うて、完全肯定ってワケでもないですけど。

 だからこそ、最初に言った通り、総評6点。ミルドラースを名乗る者出現後の展開を踏まえると4点というのが、おいらの結論でございます。
 あ、10点満点でね。


 そんな結論で、今回のレポートを終わりたいと思います。
 ここまで長々とおつきあいしてくださった方々、ありがとうございました。













 ところでヤマザキ監督……
 こんどはルパン三世の3D映画にメガホンを取ったようなんですけど……
 ドラえもん、ドラクエに続き、これも賛否両論になっちゃうんでしょうかね……
 予告編見る限りは悪くなさそうなんだけど、はてさて……


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