STAND UP! CLASSIC FESTIVAL’22 in TOSHIMA「角野隼斗×フランチェスコ・トリスターノ」
はじめに
行ってきました!
東京芸術劇場コンサートホール!!
抽選に当たった幸運に感謝!
演奏時間は一時間と短めのコンサートでしたが、演奏もセトリも濃密。
記憶のある内に、感動を綴っておきたいなと、スマホでぽちぽち文字を入力しております。
宜しければ、しばしお付き合い下さいませ〜!
開演前
席に座って、ステージを観ると二台のピアノが向かい合わせで並んでいます。
観客席から見て、左側がスタインウェイ。
右側がヤマハ。
ヤマハの方は蓋が取り外されています。
角野さんはスタインウェイアーティストで、トリスターノさんはヤマハのアーティストだそう。
スタインウェイでは内部奏法はダメだが、ヤマハではOKらしく、この形なのかも。
直前まで、調律師さんが何度も音を確かめておられたのが印象的でした。
開演時間間近になって、豊島区長さんの挨拶が。
コンサートでこう言った場面に出くわすのは初めての経験で、ちょっとびっくり。
その後、二台のピアノを包み込むように、上からまあるいスポットライトが照らし出され、ゆっくりと客席の照明が消えて行きます。
ドキドキする心臓の鼓動を感じていると、ステージの左側から、トリスターノさん、角野さんが登場。
いよいよ演奏が始まります。
Ravel(1875-1937): Bolero
角野さんは着席し、トリスターノさんは立ったまま。
トリスターノさんが内部奏法を使いながら、冒頭のあのリズムを刻む中、角野さんがメロディを奏でて、演奏がスタート。
知っている曲なのに、受ける印象はこれまで聴いたものとは別物でした。
どことなく、教会の中で演奏を聴いている感覚になったんですよ。
二台のピアノは実際にはスポットライトを当てられているのに、教会のステンドグラスから差し込んだ光で照らされているように見えて来るのです。
ひんやりとしたコンサートホールの空気も、何だか神聖な雰囲気が漂って感じられ、心地良い。
例えるなら、緑溢れる神社の境内を歩いている時や、滝のそばで感じる、あの感覚。
清冽で、心身共に清められそうな感じ。
(この空気感は、その後に演奏された曲でも続いていました)
トリスターノさんが一定のリズムを刻む上で奏でられる、角野さんのピアノの音色がどんどん変わって行くのにびっくり。
普通のピアノの音色が、鐘が鳴り響いているように聴こえる……!
中盤になると、トリスターノさんも着席。
そして、いつしかバックには讃美歌が流れているのではと言う錯覚さえする程、音が豊かで色鮮やかに。
これは、本当に二台のピアノで奏でている音なの?
信じられない……!
時折、角野さんの即興と思われる演奏も見られて、盛り上がりは最高潮に!
最後の一音が消えた瞬間、拍手が自然と湧き上がったが、それも当然だと頷ける、神秘的な演奏でした。
トークタイム
角野さんがトリスターノさんと知り合ったきっかけを紹介。
初めて会ったのは去年の十月頃で、一年越しに共演を果たしたのが今日です! と嬉しそうにお話されていました。
角野さんがトリスターノさんにもトークを促すと、「ありがとうございます」と日本語で挨拶。流暢!
日本人と変わらない完璧なイントネーションで、違和感ゼロ。
そう言えば、トリスターノさんは親日家と言われていたような……と過去に読んだインタビューを思い出しました。
J.S.Bach(1685-1750): Pastorale in F Major BWV590
前の演奏時の空気感はそのままに、天国にいるような心地良さを感じる演奏にうっとり。
初めは教会の中で聴いている感じでしたが、演奏が進むと教会の外を散歩して、日向ぼっこをしているような感覚に。
二人の音が違和感なく溶け合って、ひたすらに美しく、心洗われる時間でした。
Ravel(1875-1937): Jeux d’eau
角野さんの水の戯れが生で聴けるなんて!
冒頭の音を聴いて、曲名を察した瞬間、嬉しさで胸がいっぱいになりました。
ピティナさんのYouTubeチャンネルで公開されている、過去の角野さんの演奏が私は大好きで、何度も繰り返し聴いていたんですよ。
最近、演奏されたとのお話は全然聴いていなくて、今後彼が弾く予定も見当たらず、しばらく聴く機会はなさそうだなと半ば諦めていたので、この選曲は嬉しすぎました。
YouTubeの演奏だと、音からさまざまな水の形……流れる川や飛び散る水飛沫、そこに太陽の光が当たって虹が見えたり、と私は「自然の中の水」がイメージとして浮かんだのですが、今日は全然違う。
水が角野さんの魔法にかけられて、踊っているかのよう!
幻想的で、キラキラしたエフェクトがかかってる幻覚が見えました。
最新が最高の演奏だといつも感じる角野さんですが、今日もやっぱり最高を更新されていました。
進化の勢いが凄まじい人だなと、改めて実感。
Gibbons(1583-1625): Pavan
トリスターノさん、「二台で弾いていた時と音が変わってる!」と思いました。
少し乾いていて、切なく胸に響く音。
こうして聴いていると、二台ピアノで演奏していた時は、トリスターノさんの音は角野さんに寄っていたなと、違いにビックリ。
バックにハープやチェレスタの音色が重なって聴こえている錯覚がしました。
Tristano(1981-): Ritornello
トリスターノさんのオリジナル曲。
郷愁を誘うようなメロディ。
穏やかなグルーヴ感が何とも心地良い。
一音一音がまろやかで、心にすっと染み込む。
それでいて、どこか静けさも感じるトリスターノさんの音色が、キラキラした角野さんの音と溶け合うと、選曲によっては、コンサートホールを教会に変えてしまうのだな、と聴いていて何故か納得。
ゆらゆらと音の海に身を任せていると、終盤に角野さんが加わって弾き始めました。
Gershwin(1898-1937): Rhapsody in Blue
角野さんの即興演奏が始まり、どうなるのかとワクワクしていたら、そこからまさかのラプソディー・イン・ブルーへ!
予想外の展開に驚き。
みんなを楽しませようと言う気持ちが音と共に伝わって来るようで、何だか嬉しくなりました。
二人共、左手でリズムを取ったり、左手を持ち上げるタイミングが一緒で、息ぴったり。
トリスターノさん、足で激しく床を打ち鳴らし、ノリノリで弾いていて、カッコ良い!
床すらも、楽器の一つとして使っているよう。
角野さん、フォルテで鳴らしても音が濁らず、何故かバックにオケの音色を背負って聴こえる不思議。
虹色の音色と言うのでしょうか。
豊かな音色が美しい。
即興もたくさん交えながら弾いてて、めちゃくちゃ楽しそう!
お互いに次はどうしかけようか、なんて考えながら弾いていたのでしょうか。
音が踊ってる!
飛び跳ねてる音符が客席に飛んでくるのが目に見えるようで、楽しくて堪らない。
クライマックス手前では、二人から手拍子を求められ、観客みんなで手を叩く。楽しい!
この時、二人と客席は一体になっていたと思います。
楽しんで弾いている二人と、ワクワクして聴いている観客の心が響き合って、その場に生まれたあたたかなエネルギー。
この空気感を味わいたくて、コンサートに何度も足を運ぶんです!
その雰囲気に酔っている内に、あっという間に演奏終了。
お二人はガバッと熱くハグした後、片手を繋いで(トリスターノさんはもう片方の手を胸に当てて)お辞儀。
二人共、角度が九十度。
深い!
お客さん、一階席から三階席まで立ちあがってる人が一杯!
割れんばかりの拍手。
すごい盛り上がり!
一度、カーテンコールした後、すぐに照明がついて、もう終わっちゃうの!? と思ったら、もう一度お二人で出て来てくれました。
再度ハグしかけて、照れて肩を抱くお二人。
角野さんはさっとマイクを握ると、「時間の関係上、今日はアンコールなし」とコメント。
「後日、ブルーノートでトリスターノとまた演奏するので、良ければ見てね。配信もあります」とお知らせして、笑顔で去って行かれました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?