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気鋭のマエストロと新時代のピアニストが描く 魅惑のラフマニノフ!

プログラム

・グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

・ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲(ソリスト:角野隼斗)

・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番(ソリスト:角野隼斗)

アンコール
・花は咲く(ソリスト:角野隼斗)

グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

 悪魔に誘拐された姫リュドミラを、騎士ルスランが救出すると言う物語で、冒頭に演奏される「序曲」は、ハッピーエンドの場面を抜粋して、まとめ直した楽曲とのこと。

 今回初めて聴きましたが、ファンタジックで明るい印象。
 軽快なテンポが、幸せなムードをより盛り上げている感じ。
 コンサート一発目の曲として、ホールの空気をパッと華やかにしてくれました。

ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

 以前に、大阪でも聴いたこの曲。(当時のレポはこちら
 その時と今では、印象が少し異なります。

 前回は、びっくり箱から次々に、色とりどりの宝石が出て来る様を眺めて、それを楽しむような感じ。

 今回は変奏ごとに、色んな世界を旅して回る感覚

 ワクワク、ドキドキ感を楽しんだ前回。
 壮大な世界観に引き込まれた今回。

 同じ曲でも、聴きに行く度に新しい印象を受ける、彼の演奏。
 これだから、コンサートに何度でも足を運びたくなる。

 でも、第18変奏の、夢のように美しい音の世界は、前回同様に今回も素晴らしく、音の粒がキラキラと輝いて見えるようでした。

 コンサート当日の夜、角野さんが自身のYouTubeチャンネル上で、曲についての解説をされたのですが、構成を紐解きながらその魅力を語っていて、とても興味深い内容でした。
 かてぃんチャンネルの、有料のメンバーシップ動画になりますが、アーカイブが残っているので、気になる方は是非。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番


 角野隼斗さんのピアノコンチェルト、いつか生で聴いてみたいと思っていたうちの一つが、ラフマニノフの2番で、今回はその夢がついに叶いました……!

 YouTubeで彼の存在を知り、初めてコンチェルトの演奏を観たのが、PTNA2018特級ファイナルでのもの。

 最初に聴いた時は、その音色があまりにも美しくて、息を呑みました。今でも、このドラマティックで夢のような演奏、空気感を度々味わいたくなり、よく聴き返しています。

 鐘のようなピアノの音色で始まる冒頭、弱音でも生だとすごく響いて、よく聴こえます。そして、彼の弱音の何と美しいことよ……!
 そこから、一気に曲の世界へ惹き込まれました。

 演奏では度々、言葉にならない感動を覚える瞬間がありました。
 私はものすごく感動する時、どうも、耳から受け取った情報を頭で処理して、感動を言語化する前に、心でジーンと感動していることが多いように感じています。

 感動したその時、咄嗟に脳味噌から搾り出せるいくつかの言葉では、到底その感覚を表現出来るものではなく、処理が追い付かなかった結果、そのバイブレーションのみを先に感じているのかもしれません。

 その瞬間に言語化できなかったものの一部でも、何とか形にして、思い出に残せないかと、今こうしてあがいていたりします(笑)。

 第二楽章の途中と第三楽章のクライマックスに向かう直前の演奏では、ぶわっと角野さんのオーラが、ステージ上からホール全体に広がって感じられるような瞬間があって、心が震えました。

 終演後、角野さんがTwitterで「全エネルギーと情熱と祈りをこめて」と語っていましたが、彼のそんな想いがピアノに乗っかり、オケの音色と混じり合ったエネルギーが、その感覚を生んだのだと思います。

 感動する客席のエネルギーと響き合って、ステージが輝いて見えるような、神々しい感覚を覚える瞬間もありました。
 「祈り」をこめたと言われたその想いが、確かにその瞬間、伝わっていたのだと思います。

花は咲く


 この流れで、アンコールに彼が演奏したのが「花は咲く」。
 一音目から、胸から込み上げる感覚があり、涙ぐみました。
 音色があまりにも優しくて、温かくて……!
 紡ぐ音の一つ一つに彼の想いが篭っているように感じられて、心に沁みました。

 一年前の3月11日に、YouTubeでこの曲の演奏が公開されているので、リンクを貼っておきます。

終わりに

 このコンサートの感動を話せば、想いは尽きないですが、人生の終わりに一生を振り返る時、宝物にしたい思い出の一つとして、今日の演奏は必ず思い出すだろうなと感じました。
 愛に溢れ、温かく、奇跡のような時間を、ありがとうございました。

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