写真は「まこと」を写すと書くけれど
建築学科の学生時代、「建築写真」という授業があった。
「新建築」という大御所の雑誌の撮影もされている偉い先生が教えてくださった。
建築写真は垂直と水平があっていないといけない。歪んでもいけない。
確かに先生がおっしゃることは正しい。「あるがまま」を伝えることが建築の情報誌としての使命であったはず。
バブル期の当時の「新建築」にはそれはそれはお金をかけているであろう素晴らしい建築が「正しい撮り方」で撮影されてたくさん載っていた。
でもほとんど「そそられない」写真ばっかりだった。大御所の先生にこんなことをいうのは失礼だと思うけれど、「正しく撮られた」写真は必ずしも建築家の意図を組んだ写真ではないように感じられた。
それよりブルータスなどの建築特集の時に載っている写真の方がずっとそそられた!
何が違うのか理由はよくわからなかった。
それから時は流れて今から10年以上前、40歳をすぎて少し経った頃、mixiをするようになって、趣味で写真を撮るようになった。
学生時代使っていたのがキャノンだったので、デジタルの一眼もキャノンのイオスキッスにした。
毎日何かしら撮ってはアップした。最初のうちは何を撮っていいかも定めず、毎日カメラを持ち歩いては、パチパチ何十枚も撮っていた。
雨の日も傘で濡らさないよう工夫しては撮っていた。そんなある日撮ったのが次の写真だ。
初めて「写真に映るのは目に見えている景色ではない」と気づかされた!
雫に景色が映り込むことは知っているけどこんなに綺麗に映り込むとは!近所のコインパーキングの汚いフェンスと遠くに映るありふれた車のテールランプもまるで違うものに感じられる。
初めて写真の面白さに気づいた瞬間だった。
それからは毎日何十枚と撮ってはSNSにアップしてみんなの反応を見るのが楽しくなった。
ボケの具合や光の具合で「目で見えているのとは違う」景色を切り取るのが特に好きになっていった!
写真は「まことを写す」というけれど、それは見た目の「まこと」ではなくて心の目でみた「まこと」なんじゃないかって思う。
写真を撮るのが好きになったきっかけの一枚だ。