新機種Nova(ノーヴァ)開発ストーリー

タイトルにもあるように新機種をリリースします。
Addictoneのオリジナルモデルとしては3機種目ですね。


Addictone NOVA Prototype
/Blu Glauco (Lamborghini)

これまでのモデル:ARENAとECHO

3年ほど前(2021年)にリリースした
1機種目はARENAといい2ハム仕様のモデルで
見た目はディンキースタイルのモダンなギターだけど
ピックアップはPAFタイプの出力弱めでクリーン、クランチでも非常に良いサウンドが作りやすい見た目に反してかなりトラッドなモデルでした。
ARENAを開発していた4年前くらいにはこういうモデルが市場には
ほとんどなく(実際にはあるにはあったがちょっと中途半端だったり魅力にかけるものがほとんどだった)
2機種目はECHOというモデルで(2023年リリース)
ARENAからの派生モデルとしてボディシェイプをシングルカッタウェイにしたもの。
ECHOはMusicman時代のEVHモデルにインスパイアされ
ARENAの設計とミックスしたものになります。
ボディとフラットTop にしたり、バックのコンターを限りなく小さくしたりすることでテレやレスポールのようながっしりとした鳴り方をするようにしています。

新しいモデル「NOVA」のコンセプト

今回開発している新機種は
コンセプトは80年代後半から90年代の頭くらいの
ハードロックやヘヴィーメタルの全盛期に焦点を当てたモデルです。(メタル専用機というわけではないのですが)
当時はそういう音楽が全米Top40などにも入る時代で、
競うようにギターテクニックが進化してギターヒーローが次々と登場して
アンプのハイゲイン化などが進みロックギターが一番進化してさらに多くのギターが作られた時代でもあります。


80年代のKramer Stagemaster 

ただ当時市場に出回ったギターの多くは、流行に乗って大量生産されたものがほとんどで、品質が低いものも少なくありませんでした。
今みたいにインターネットが普及する前なので情報も少なかったですし。

ボディシェイプの決定

今回3機種目を開発するにあたって
悩んだのがボディシェイプ
コンセプト(80年代後半から90年代頭くらい)にあったもので
何か新鮮味を出したくて
すでにいわゆるストラトシェイプ(ARENA)は作っていたのでそれ以外の形を模索していました。ただ今回はGibsonスタイルのセットネック仕様は
除外しました。その当時セットネックの仕様のギターもありましたが
コンセプトにはぴったりとはハマらないためです。
色々と模索している中で
いくつかのギターが気になっていました。
それがEpiphoneのWilshire
GibsonのLes Paul Special  Double Cutawayなどの左右対称系のギターです。
ただ漠然と気になっていただけでそういうギターを作りたいという感じではなかったのですが、、


左右対称系のギターってGibsonスタイルのギターしかないけどなんでだろう?と、ふと思ったんですが
単純にネックセットの問題で左右対称系のボディになると
セットネックのようにネックをボディに差し込んで接着しないと
ジョイント部分が強度を確保するのが難しいという問題があったため
セットネックジョイントを採用しているGibson系のブランドでしか作られなかったのでしょうね。つまり構造上の都合ですね。

ただ記憶を遡ってみたら他にもいくつかあったんですよ。
Ibanez Ghostriderという90年代中期のモデル。このギターはあまり知られていないかもしれませんが、ボルトオン仕様で左右対称のシェイプが特徴です。このデザインにインスパイアされて、NOVAも左右対称のボディシェイプを採用することに決めました。


Ibanez Ghostrider



多分知らないという人も多いと思いますがそれもそのはずで
1、2年で廃盤なっているんで。。。笑
それ以前に日本では生産されず市販モデルは韓国製だけだったようです。
日本では販売もされてないかも?(これは定かではないですが)くらいの
人気がなかったのでしょうか。
プロトモデルではLA Custom Shopで製作されたもので
ポールギルバート(ボルトオン24フレット仕様)や、アレックススコルニック(ボルトオン22フレット仕様)ションレーン(24フレットセットネック)などがGhostraiderの元となる仕様のギターを使っていましたが
市販モデルは22フレット、セットネック仕様でギブソンスケールで作られてしました。フラットTopとアーチTopの2種類があったようですね。


Shawn Lane  / Ibanez Ghostrider LACS


Paul Gilbert  Ibanez Ghostrider LACS



もっと古い話になりますがポールギルバートが80年代半ばレーサーX時代に
EpiphoneのWilshireやそれを元にIbanezに作ってもらったWilshireシェイプを無理矢理ボルトオン仕様で作ったモデルなどもありましたね。

そういうわけでボルトオンでは左右対称系のギターは構造的に
楽器としていい感じに成り立たせるのが難しかったため
どうしてもストラト系の形のもやそのバランスの延長で作ったギターが多いということですね。

話がどんどん脱線していきますがもう少しお付き合いください笑
そんなこんなでボディシェイプを
左右対称系のものを採用したということですね。
ネックジョイント部分のボディのネックを受けるいわゆるネックポケットの左右の壁の面積が小さくなってしまうのが音やネックの安定に問題があるのでそこを解決すればいけるのか?
ということで試作をスタートしました。


Nova  1st Prototype


プロトタイプの試作

サウンド的には80年代後半から90年代の頭のサウンドを
コンセプトに掲げていたので今回は
あえてDiMarzioのPUを採用しました。
DiMarzioは最近の流行りメーカーというわけではないですが
実は良いピックアップだと思います。
特にあの時代のサウンドを作るには一番わかりやすく
手っ取り早くあの時代に戻れると思ったのでDimarzioを使いたいと1番に思いましたね。


PUをDiMarzioを採用するにあたり
いくつかモデルをあらためて試してみたのですが

Super Distortion
Tone Zone
PAF 35 Aniversary
PAF Pro


他にも90年代以降の発売されたモデルやアーティストモデル関しては
いくつか個人的に以前試したこともあったですが
今回は除外しました。

HSH仕様にするためにシングルでセンターPU様に試したものは以下の3つ

FS1
Fast Track1
The Chopper


実は80年代や90年代って今よりも
ギターは本当に歪みがメインで、ほとんど歪んでれば良いみたいな
時代だったんですよ(ちょっとした語弊はあるが)
正直ギター本体は良いギターじゃなくても
出力高めにPUとアンプでゲインあげればそれでOKみたい
ギターばかりでした。

ただ今、昔のギターひっぱり出してきて
弾いても正直あまりグッとこないのは
近年の良いギターに慣れてしまって、、という感じがします。

80年代のギターが良くないというか、
大量生産が基本で一般のユーザーが手に入れられるギターって
そういうものだったんです。

プロトの製作を何度か繰り返してうちに
コンセプトもブラッシュアップしていき
ボディトップに緩やかなアーチをつけることに。
ストラト的な設計がどうしても
サウンドや弾き心地にも影響が出て、弾いた時にストラトっぽさを連想させてしまうので
今回のNovaではストラトっぽさを徹底的に排除することに。



2本目のプロトではボディ形状の修正と
Top に仮のアーチをつけてバランスをみたりして
Novaの完成形へ向けての進めていきました。
実際に1から新しいギターを作る場合
ある方向に向けて細かい部分までつめすぎてしまうと
悪い部分がどこなのか判断が難しくなって
修正箇所を見つけにくくなるため
まずは大まかなイメージだけで
まずギターにしてみて弾いてみて判断する必要があります。

ボディ形状はこの方向で良いのか、
ラフカットでアーチをつけてみてどんな鳴り方になるか
持った時のバランスはどんな感じか

Nova 2nd Prototype
ステッカーはアーチがラフカットだったため
それをカバーするために貼りました。


この時点でこの方向がダメなら1からやり直しだし、
良さそうだとなれば、そこから少しずつブラッシュアップしていくのが良いかなと考えています。


2個目の試作機で大まかにはこの方向で行けそうだという確信ができたので
一気にブラッシュアップをしていきました。
ボディの形状含め木工部分の修正は2ndプロトから3rdプロトを作る時点で
10ヶ所以上。それは図面上で直したい箇所をチェックしてデータを修正していきました。


Nova 3rd Protoのボディ

サウンドとコントロールについて

3rdプロトではかなり細かい部分まで作りこみ
木工部分はほぼ最終形と言っていいことまで進めました。
ただここでまだ終わりではなく
残っていたのがボディ材と
PU周りのコントロールを最終的にするのかという部分が残っています。

Novaでは標準でHSH仕様というのを固定で考えていたのですが
通常であればストラトと同様の5wayのスイッチを選ぶのが無難なのですが
そこの常識もなぜそれが1番なのか?という疑問が昔からあって
なんとなくのサウンドバリエーションを優先するか
実際に意味のある使い方を優先したコントロールにするかを検討した結果
Novaでは3wayセレクター+ミニスイッチでセンターPUのオンオフ
という仕様を選びました。
ミニスイッチでセンターPUをオンしてない時は
2ハムのギターとして機能するようになっています。
トーンをPullすれば2つのハムがタップされます。
ミニスイッチをオンにすればセンターPUが立ち上がり、
トグルスイッチで選んだPU+センターPUというMixサウンドになります。

10人いれば色んな好みがあり、
PUのコントロールも様々な要望があって当然だと思いますが
Addictoneの提案として今回はこういうPUコントロールのレイアウトにしました。


Nova 3rd Proto

さあ間も無く最終形製品版のNOVA 完成します。


3rdプロトの材違い
Nova Elite(1Pフレイムメイプルボディ)


ちょっと長くなりましたが
今回は新機種NOVAの開発のお話でした!
楽しみにお待ちください。


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