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眼鏡姿が忘れられない。
いつ出会ったのか、初めて喋ったのはいつなのか、いつから仲良くなったのか、なんて覚えていない。
気がつけば名前も顔も知っていた。
クーラーで冷えた会議室。ふたりきりになった会議室。気まずい空気。目の前のパソコンを見て考えているフリをしていた。
「このあと飲みに行かない?予定がなくなってさ。」
確かこの言葉がきっかけだったとおもう。飲むと意外と喋るところとか、目を細くして笑う姿とか、いつものぶっきら棒なあの人とは別人だった。
一緒にいると楽しくて落ち着く、そう思ってるうちに私のマンションの扉の前でふたり手を繋いで立っていた。
これがはじまり。
彼はどれだけ遅くても必ずタクシーで家に帰る。泊まる日はなく、いつも感じる、
彼が大切にしている存在。帰る場所。
出張先が同じで初めて朝まで一緒に過ごしたあの日。狭いビジネスホテル。それでも時間は限られていた。チェックアウトの10時がリミット。
嬉しかった。起きると隣にいる彼。眠っているとき、割とイビキがうるさい彼。
知らなかったことがたくさんある。
普段コンタクトの彼がメガネを取り出し、メガネをかけていた。その姿が、普段は見れない姿が、愛おしくて特別で、
たまに思い出す、
今でも忘れられない、
もう二度と見られないあの姿。