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名刺 セルフライナーノーツ

ようやくリリースに伴うプロジェクトがひと段落しました。
1st EP. 「名刺」、聴いていただけたでしょうか。

6月のリリースに先立って、メンバーには1月くらいに全部の曲を動画化するという構想を話していたけど、こんなに大変になるとは思いませんでした。1ヶ月でドット絵を100枚描く経験とか、もうしたくないです。MV自体は気に入っているけど。


前説 形態としてのEPについて

2023年末。ローライラックはシングルの輪廻転生、共催企画で出した飛べないペガサスが既発曲としてある状況でした。
来年の春くらいに曲出したいよねって話をしたのはいつだか忘れましたが、活動の軌跡みたいなものとして、この2曲を1つの盤に収めたくなりました。

ただ、今から+6曲程レコーディングする余裕もなく、かといってまたシングルで出すことも気持ち的に憚られました。
バンドの活動記録を時期に区切って残せるものは、アルバムという形態しかないと個人的に思っている故、シングルとして野放しにしてしまうのは曲にもバンドにも乱暴になると感じていました。
そうして出てきたのがEPという案です。

当初、EPとはなんぞや状態でした。
両A面シングル(もう死語)の延長線上とかなんか言われましたが、アルバムのような一つの作品としての繋がりも希薄、シングルのような曲のバランス感もまばら。

アルバムという文化を好んで、プレイリスト的な聞き方を拒んできた人間にとって、それに近い形態でリリースするのは多少なりとも違和感を拭えませんでした。

であるならば、もういっそのこと開き直って両A面的なことをやってみようと。

収録曲もシングル的なパワーを持ってる花と夢物語を入れることで、それ自体にコンセプトを持たせられないかを模索し始めました。それの結果が全曲の動画を制作したことだったりします。

要は僕のワガママです。ローライラックは全てがそうだからこれに限った話ではないけど。
軌跡でありながら、ローライラックというバンドの紹介のような、そんなEPです。
タイトルの名刺はそういう部分に起因します。漢字ダサいなと思い英語にしたらNAME PLATEとかそのまま出てきて流石にやめました。

楽曲解説

1. 花と夢物語

2017年に書いた曲です。

中学3年生の夏、スプラトゥーンに激ハマりしていた僕には、いわゆる「ネッ友」のグループみたいなものがありました(チームみたいなもの)。
ついこの間、今年の4月にも東京で結婚祝いの飲み会をしたり、バンドやってるやつとローライラックが対バンしたりと、交流はゲームをやめてからも何かと8年ぐらい続いています。
そこの中にR君(仮名の仮名)という、性格、口、その他諸々悪い男がいて、そいつに向けた曲が花と夢物語の原型になります。

当時R君は黒髪ロングという、いかにもな手品部の女に惚れていました。
確かその恋は叶わず終いだったはずですが、妙にはぐらかしながら話す内容が面白く、なぜか記憶に残っていました。
そいつの恋話を題材にした理由はもはや覚えていません。単に好奇心だったかも。

そんなこんなで出来た原型は、キャッチーなメロディが頭に残り、中学3年生の時に作った曲の中でも、頭ひとつ抜けたような存在でした。
ただ原型はAメロとBメロが完全に別物で、転調もしていました。なんならコード進行なんてものは高校で学んだので、全く知りませんでした。

ただ、サビの歌詞とメロディ、シンセのリフは当時から一切変えていません。変な題名もそのままです。

時は進んで2020年冬。
受験勉強に明け暮れながら、逃れるように作曲していた僕は、輪廻転生を作り終えた後で思い出したかのようにこの曲をリメイクすることにしました。
シンセサイザーをこれでもかというほど使ったダンスナンバーになったのは、僕がGarage Bandの操作にようやく慣れ始めた頃だったからです。
リードシンセは種類の違う音源を3つ重ねています(左、中央、右)。その他にもpadシンセをEQ変えながら同時に2つで流していたりと、悪ノリの極地みたいなことをやりまくった結果です。レコーディングの時にそれら全てを書き出してカズさんに送ったところ、半分呆れられました。

歌詞も、今まで書いてきた中で5本の指に入るくらい好きです。
「波立って揺らいでる 淡いコントラスト 潮に混じる風」
これは「海」という言葉を使わずに絶対海の景色が想像できる歌詞が書きたくて、悪戦苦闘しながら捻り出したものになります。
潮という言葉が入っている時点で半分チートかもしれませんが、綺麗じゃないですか?

他にも2番Aメロの「壁の汚れで昔の僕を見て」は元々書道教室だった僕の部屋の情景だったりします。
墨を落としきれずに汚れた壁紙が、受験勉強で部屋に袋詰めになっていた僕には自由の象徴みたいに見えたりして。
韻の踏み方とか破裂音とドラムアレンジを合わせたりとか、細かいところまで手が届いた歌詞になったなと思っています。

サビの「恋心」は、拡大解釈で、日常のありふれたものに対して、忘れがちな、普遍的に持っている好意のことです。
性善説とかそんなたいそうなものではなく、あの路地良いなとか、このペットボトルコーヒー美味いなとか、その絶対気に留めないような1シーンって体に一番近い好意だと思っています。
恋愛の歌ではないです。書けないので。そういうもの。

2. ヨルムンガンド

2019年に作った曲です。
初めてギターで作った曲でもあります。

ギターを買ったのは高校入学と同時だったものの、そこから挫折で寝かせていた期間が半年くらいありました。
冬になんとかコードを抑えられるようになって、初めてユニコーンの「Feel So Moon」をコピーできたときは喜び過ぎて祖父母の部屋のベッドで跳ね回り、voxの10wアンプと一緒にそのまま倉庫に放り出されそうになりました。

そんなギター初心者(今も)の頃に作ったので、使うコードや抑え方はめちゃくちゃシンプルになっています。
イントロからBメロまでDM7とAM7だけです。今考えたら怖い。

アレンジはパズルだと思って考えていました。
ベースのフレーズを音ハメの要領で考えたり、エレピも理論そっちのけで気持ちよさ優先みたいなフレーズ構成をつけたり。そのくせギター2本はずっと同じフレーズを弾いてる。つまりそれぞれの楽器の役割が逆になっています。

象徴的なのは間奏だと思いますが、大サビが元々別の曲だったので、なんとか違和感なく繋げようと四苦八苦した末のポリリズムだった気がします。前半の暗部から後半の明部に持っていく過程で、景色が開けていく神々しさみたいなものを目指しました。シンセパッド3つ重ねてます。

歌詞は完全に散文詩の寄せ集めです。綺麗で冷たいもの、という薄らなテーマは一応あります。
「コートには未だ冬の残り香」とか「雨はこれを見越して項垂れた僕を笑うんだ」とか、心象描写に徹したら今まで書いた歌詞の中でも相当鬱蒼としてる内容になりました。書いたのが受験期だったからですかね。

登場人物が自分だけ、というのもお気に入りポイントです。

3. 輪廻転生

シングル既発曲。
MV3000回再生本当にありがとうございます。最近はいへいと一緒にいる時ずっと歌われます。なんなん?

1曲で戦えるパワーを持った曲なんだなって、ライブを重ねるごとに作った側が思い知らされてます。
こういう曲もっと書けたらいいな。あとは前回のライナーノーツに散々書いたのでよろしければそちらの方も。

4. 飛べないペガサス

明確にいつ作ったとかは覚えていません。
記憶にある限りでは2012年くらいからありました。小学3年生です。

実家に古いモデルのキーボードが置いてあります。キーボードといっても、midiの接続端子すら付いていないような、相当年季の入ったものです。その機能の一つに、ワンフレーズを繰り返す自動伴奏というものがありました。
これに合わせて単音を押していくことが、小さい頃の遊びでした。

そうしていつの間にか生まれていたのがこの曲です。明確に作ろうと思ったわけではなく、気づいたら心の中にありました。
同じように生まれた曲は沢山ありましたが、そのほとんどが時間の経過と共に忘れられていく中で、未だ心の深層部分にあり続けています。

それだけ、この曲は特別です。

人生の支柱は家族や恋人、趣味などの形にあるものから経験値的なものまで、多岐に渡ると思います。
僕にとっての支柱は、飛べないペガサスという曲なのです。

だからこの曲を音源化しようと決めた時、プロダクトの全てを人に預けることなく、自分の中で完結させることにしました。
10年来の付き合いがある友人の服装を、一番格好よく仕立てられるのは僕しかいないだろうと。

要は自意識です。自意識の塊。しかし、曲自体が田代唯人という人間の源流みたいな存在だから、それもいいのかなと思いました。でも、やればやるほど、技量の足りなさを痛感しました。mixはまだまだ、もっと勉強します。

曲自体の解説をすると、王道のふりして結構変な曲です。複雑さとかではなく、サビの進行が2パターンあるという点で。
コード進行のみで起承転結のあるストーリー性みたいなものを目指しました。Ⅰ→Ⅳのみで進むAメロや1サビ、マイナー調になるBメロ、王道進行のラスサビを経た後のⅠ→Ⅳアウトロなど、物語性を帯びてると思います。歌詞も相まってフィクション感強め。

ペガサスが飛べない理由は色々あります。でも一番は人の目です。今でこそ冷笑という言葉で置き換えられますが、何かに本気で取り組むと馬鹿にされるんじゃないか、という気の弱さ、自信の無さ。歌詞上では僕からペガサスに問う形ですが、実際にはずっと自問自答してます。

だから、問う側の自分と問われる側の自分が1つになれるならば、みたいな曲です。ざっくり。かなりざっくりですが。

脈絡もない話ですが、僕はバンドもとい音楽をやる上で、小学5年生から絶対的な夢があります。武道館公演のダブルアンコールで飛べないペガサスを歌う、というものです。言霊をだいぶ信じているのでここで公言しておきます。文章の方が効力が強そうだし。

総括

EPを出してから、というかCDを作ってタワレコの方に置いていただいてから、知り合いが結構増えました。
やっぱりバンドはリリースだなと思う一方、やっぱりアルバム作りたい!とも。

というのも、頭から通して聴きたいと思えないんですよね。
本当にプレイリスト的な作品としての印象が強くなりました。ランダム再生みたいな。
そうしようと思って作ったのも僕自身ではあるものの、肌感に合わないのは事実そうなんだろうとリリースしてから感じる機会が多くありました。

僕はアルバムで育ってきた、時代錯誤の人間です。つくづくそう思います。

だから次の目標は、6-7曲くらいのアルバムを作ることにしました。1枚に明確な世界観を感じられるような。頭から聞くことで内容が深まるような。
名刺はローライラックの表面側みたいな作品なので、次作はもっと趣向みたいなものを存分に出した、冷たい裏面側のアルバムにしたいです。テクノとファンクを混ぜてバンドで出力してるみたいな、また面白いもの作ります。宮城にいるうちに。

最後に、EP制作に携わってくださった方々に多大なる感謝を、この場を借りて伝えたいです。
カズさん、ひでぽんさん、ソルファスタッフの方、CD印刷工場の方、そして僕以外メンバー全員。僕からの返信がとてつもなく遅い中、一緒に良いものを作っていただいて本当にありがとうございました。

そしてEPを聴いてくれた方、ミュージックビデオを見てくれた方、ローライラックに出会ってくれた方、これからも続いていくローライラックのことを、どうか末長くよろしくお願いします。


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