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Tempalayの武道館を観た

九段下の駅を降りたら、一斉にツアーTやグッツを身につけている人に囲まれた。
Tempalayのファンはファッションセンスが異様に高い。行ったことはないが、kroiとかBREIMENもそんな感じがする。
田舎者の僕は、そんな都会的な原色の波に飲まれるがまま地上に押し出され、あれよあれよと武道館の前まで辿り着いた。

武道館。小学生の頃からの憧れ。

高校生の時に一番聴いたバンドであるTempalay。

会場に向かう前から、何故か観る側なのに無限の緊張感に襲われ、動悸を起こすわ腹ぶっ壊すわで散々だった。

15時半には会場に着きたかったのに、体が動かず16時半までホテルにいたし、なんなら15時過ぎまで国会図書館にいた。何してるんだ。
踏ん切りをつけてホテルを出るも、表情が強張って口角が謎に上がっていた。ものすごく変人だったと思う。

列があまりに長く、最終的には崩壊していた物販コーナーで黒ロンTとタオルを買い、さらに列が爆発していたアリーナ入場口を17:59に突破(開演18:00)すると、既に会場内は祝祭のムードで満ち満ちていた。

初めて入った武道館。そこは何度も映像で見たものそのものだった。当たり前だがそれが無性に嬉しく、ついぞここに来たんだという気持ちを何倍にも増幅させてくれた。

そこからの約3時間は、もう夢だったと思う。

圧倒的サイケでアシッドなVJとライティング、6人編成のバンドサウンド、全部夢だった。本当に全部夢だった。

セトリもオールタイムベストと呼べるほどのラインナップで、文句のつけようがなかった。
特に21世紀より愛をこめてからは大半の曲が演奏され、改めてこのアルバムの完成度を思い知らされた。高校の僕は間違ってなかった。

それらの曲が演奏されるたびに、朝ごった返す陸前山下駅や、帰りの石巻線に流れる田園風景を思い出す。
滲み出てきた涙はコンタクトレンズに全て吸収されたため、なんとか事なきを得ていた。

ベストはそなちねだったと思う。
もちろんSONIC WAVEや脱衣麻雀、カンガルーも考えているなども素晴らしかったが、それらの曲では楽しくて踊るところを、そなちねではただただ有るものを目撃している感覚に陥った。美術館で絵画を観る感覚。ギターソロに至っては体が微動だにせず、立ち尽くした。ライブでこんなことになるのは初めてだった。

決して暗いわけでもなく、むしろ背景のオイルアートと相まって神々しい。言い表せないような光景だった。あれはあの場に居ないと理解できないと思う。

終盤のMCで「やめなくてよかった」と小原綾斗が口にこぼし、続けて「好きも嫌いも行くとこまで行ったら愛憎になった」というMCからの愛憎しいは流石にグッときたし、珍しく曲中にありがとうと叫ぶ姿も、生身の人間感が溢れていた。

小さい娘さんやら親族30人やら離婚した両親が関係者席で見守る中、Tempalayは武道館というライブをしたと思う。そういう感想でいいと思う。
武道館に立つとはどういうことか、柄にもなく禁酒した本人たちも分かっていただろうし、会場にいる全員が分かっていたと思う。
でもその期待をこの日は軽々超えていった。Tempalayは成っていた。

そんな祝祭に参加できたこと、指板が見えるくらいの席だったこと、何よりずっと大好きだったバンドの節目を観れたこと。
全部が幸せだった。このために来てよかった。このバンドを好きになれてよかった。

最後、「やめるまでやります」と照れくさそうに言っていたが、そのスタンスでのらりくらり続けて欲しいと思う。
僕のギターヒーローは、本当に最高だった。

2024.10.03
Tempalay「惑星X」

1. のめりこめ、震えろ。
2. 人造インゲン
3. 続・Austin Town
4. とん
5. ああ迷路
6. 未知との遭遇
7. my name is GREENMAN
8. Booorn!!
9. どうしよう
10. Festival
11. カンガルーも考えている
12. 大東京万博
13. 今世紀最大の夢
14. 脱衣麻雀
15. シンゴ
16. EDEN
17. GHOST WORLD
18. 預言者
19. 深海より
20. 革命前夜
21. SONIC WAVE
22. 新世代
23. 愛憎しい
24. NEHAN
25. ドライブ・マイ・イデア
26. そなちね
27. 続・New York City
28. Last Dance


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