天使は瞳を閉じて(虚構の劇団)
東京公演:座・高円寺1(2016年8月5日(金)~14日(日))/愛媛公演:あかがねミュージアム あかがね座(多目的ホール)(8/20(土),21日(日))/関西公演:AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)(26日(金)~28日(日))/東京凱旋公演:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)(8月31日(水)~9月4日(日))
戯曲を読んだことがあって、第三舞台でのキャストがすぐに思い出せるという作品に出演。配役が何故か伏せられていても考えるだけで打ちのめされるのが目に見えていた。第三舞台の初演キャストに当て書きのような役どころで、きっちりそれを自分の物にしてくれるのだろうか。
戯曲を手に入れてほぼ内容を理解したうえでの初日観劇にも拘わらず、終幕後言葉が出ない状態に陥るほど凄かった。
ケイを演じる佃井さんとのシーンは乱暴過ぎる互いへの気持ちを表現しているようで、でもそれを受けて受け入れて貰える幸せに満ちているようにもみえて。じゃれている時の声のトーンから、ふっと本音を漏らした瞬間の声の響きの差にグラグラと心を揺さぶられた。どこまで本気かわからない…彼女の呟きは観ている側のそれとも同じような気がする。
最初の方で披露される歌のうまさに揺さぶられ、それから露呈していく、ユタカという男の駄目さ、汚さ、ずるさ……本当に最低な男。なのに。そのかっこ悪さとかっこよさのバランスが絶妙で。
なにより彼の歌が忘れられない。終盤に彼がまた歌い踊るともう一度歌って欲しくなる。魂が揺さぶられるような歌。きっと板の上にいる女性達と同じように、あんなに駄目な男なのに引きずられていく。
どうすればあの歌をもう一度聴けるのだろうか。
……気がついたら多めに取っていたにもかかわらず当日券でチケットを足しては観にいった。千穐楽の前であれば彼のあの歌をまた聞ける。ただそれしかなかった。ユタカに会うにはステージに通うしかないのだ。
舞台が終わってもなにかにつけてユタカを思い出して、ユタカに会いたくなる。ユタカの歌が聴きたくなる。本当に格好良くて最低な男だった。それを演じきってくれた姿を見れたのは、言い尽くせない幸せなことだったと思う。