他学部(not心理実習)から臨床心理士指定大学院入学を目指す人へ

このノートは臨床心理指定大学院受験を予定している、公認心理師コース以外の(心理実習に行ってない)大学生に向けたノートです。
臨床心理指定大学院受験を10校行った筆者の経験、筆者が通った予備校3校の情報、筆者の周りの大学教員により提供された情報に基づく内容となっております。

また、心理学部(公認心理師課程未履修)の方は他学部と同等の扱いを受けるため、ここでは他学部とまとめさせていただきます。

筆者情報
 都内心理大学4年
 実習以外の公認コース履修済み
 gpa3.5
 1年生でお金を貯め3年から予備校(計3校)
 心理学検定特1級

今の臨床心理士指定大学院への合格はほぼ不可能

理由

タイトルの通り、今現在、臨床心理指定大学院への合格はほぼ不可能でしょう。
理由は大きく3つあります。

  1. 臨床心理指定大学院を受ける殆どの学生が、公認心理師課程を履修し、実習経験を積んでいるから
    臨床心理指定大学院では、学内外の施設で実際にクライアントとのカウンセリング実習を行います。
    公認心理師課程で心理実習を行なっている学生と全く現場を知らない学生、どちらをとりたいでしょうか。
    今までは、心理実習を行なっていない学生も多く、受け入れる間口は広かったですが、ほとんどの学生が実習済みの今、あえて行っていない学生を取るメリットはほぼありません。

  2. 殆どの指定大学院が公認心理師課程を併設し終わっているから
    現在首都圏の臨床心理指定大学院のうち、公認心理師課程を併設していない大学院は、創価大学大学院のみです。
    公認心理師課程を併設している大学院では、公認心理師合格数を売りにする大学院、臨床コース全員に公認心理師課程と同じカリキュラムを受けさせる大学院が多くあります。
    そのような大学院は、公認心理師育成大学院のようなものであり、これまた学部で公認心理師課程を取ってない学生をあえて受け入れる必要はないのです。

  3. 院試は面接が重視される、いわばブラックボックスによる合否であるから
    上記2つに付いて、「でも結局感情論だよね。筆記で点数を取れば良くない?」と思われた方がいるでしょう。
    そこが大きな勘違いなのです。
    臨床心理指定大学院の院試は、公認心理師課程が始まるずっと前から“面接を重視する”と言われています。
    それは実習があるという性質上仕方ないことです。
    また、ある大学教授は「臨床心理士試験の2次の口述試験で弾かれそうな生徒は落としている」とまで公言しています。
    心理士という職業を育成する場所として、兼ねてから面接は非常に重視される傾向があるのです。
    そのような視点で評価される合否において、筆記試験はもはや足切り程度であるとも考えられるでしょう。
    ちなみに筆者は筆記9割とっても面接で「実習経験ないんだ。」と言われて落とされました。

経験から考えた最大限の対策

それでも大学院を受けたい!と思う方はいるでしょう。
私もかつてはそうでした。今思えば、予備校の講師の言う通り、臨床心理指定大学院は諦めるべきだったのですが。
そこで最大限の対策を考えてみました。

  1. 研究室訪問
    必要ない、迷惑、推奨されてない…色々意見はありますし、行かない方が良いことも大いにあります。
    しかし、絶対に行い、以下の2点を聞くべきです。
    ・公認心理師課程以外の学生はいるのか
    ・その学生について
    言うまでもなく、自身が入れる環境であるかを見極めるためです。
    公認心理師課程の人しかいない、大学から持ち上がりが多いなど言われれば確率はかなり絞られたと思って良いです。
    そしていた場合、さりげなく話を聞くことをお勧めします。
    まず、社会人であれば現場経験や将来へのステップなど、キャリア採用のような形で受かった場合が多いためチェックしておくべきでしょう。学生であれば、内部から指導教官とのつながりがあった可能性や外部でも特別枠の可能性があります。
    外部から普通の入試であっても、自分の入学後の参考にするという点から、その方の情報について話を伺うといいでしょう。
    あまり聞きすぎるのは良くないですが、公認心理師課程の中、自分だけ臨床という立場であったら少し不安はありませんか?その不安を払拭するという意図で聞いてみると良いと思います。

  2. 心理系ボランティア
    面接で再三聞いた言葉がこれです。「ボランティア経験はありますか?」
    相手が欲しがっているのは公認心理師課程という前提で考えれば自ずとわかるのですが、“実際に現場を知っている”ということは重要です。
    なんか思ってたのと違った、実際に人と話すことがとても難しいと知った、そんな理由で辞められたら困りますし、そんな思いをするのも困りますよね。
    ちなみにここまで重視される学部の心理実習ですが、専門的なことをやっているというよりかは見学やサポートといったことを行なっています。
    ではなぜその有無を重視するかというと、資格云々もありますが、適性的な面を見ることにもなっているからです。
    そのため、実習をしていなくてもボランティアなどの経験があることで少しではありますが、カバーできる部分があります。
    また、実体験に基づく志望動機や目標を面接で話せることは面接でのダメ押しも可能にするでしょう。

  3. 間違った対策
    「心理実習以外の公認心理師課程の単位は取ってました!」
    やりがちですが、これが1番ダメです。
    なぜなら今時は通信で誰でも取れるし意味がないからです。

国公立の勧め

上記の努力をもしかしたらしなくても可能性があるのが、国公立大学院です。
いくら面接が重視されるとはいえ、国公立は私立と大きく異なり厳正な判断が求められます。
私立は極論誰でも落とせますし、誰でも合格させることができます。
実際に、一般枠も内部生でほぼ全員固めている私立大学院の情報は、少し教授と仲良くなれば簡単に聞き出せます。
いくら枠が多く記載されていても、事実上入れないことはザラにあるわけです。
しかし国公立においてはそのような不正は認められづらい傾向にあり、公平性がある程度担保されています。
受験するのなら確率は高いと思われます。

別ルートの提案

さて対策について書きましたが、ここで考えてみてほしいのは、なぜ臨床心理士になりたいかということです。
ざっくりわけて皆さんはどのタイプでしょうか。
1 臨床心理士として現場で働きたい
2 心理の大学院に行きたい
3 心理職になりたい

この3タイプに沿って、順に別ルートの提案を行いたいと思います。

3年次編入

「臨床心理士として現場で働きたい」
こちらの方へ。3年次編入を強く勧めます。
現在、現場では公認と臨床のダブルライセンスを求める傾向があり、特に医療に関していえば公認は必須となっています。
公認心理師は、その質は疑問視されていますが、国家資格です。
カウンセリングの保険適応傾向などで、医療の点数をつけられる国家資格は重視されます。
風当たりの強い院試を受けるというリスクを冒して手にする資格かと言われれば首を傾げざるを得ません。
現在心理実習を履修できる3年次からの編入は少なくありません。
通学に限れば、その年により受け入れ状況が異なるという点が懸念点ですが、通信であればいくらでも入る余地はあります。
通信を懸念される方もいると思われますが、通信で3年次編入可能な聖徳大学では、東京大学を始めとする有名大学の臨床心理指定大学院への入学実績が多くみられます。通信だからといって学習の質が担保されていないわけではないのです。(聖徳大学は実習先は自主開拓です)

指定ではない大学院

「心理の大学院に行きたい」
こちらの方には指定でない大学院を勧めます。
所謂、基礎心理というものですが、研究内容について言えば基礎のみには絞られません。
そもそも心理の分野において、臨床でしかできないものの方が珍しいとも言えるのです。
「でもせっかくだし資格も取りたい…実習もしてみたい…」
そういった方には臨床発達心理士の指定大学院を勧めます。
臨床発達心理士には実習要項があり、外部での実習を行えます。
また、資格についても、価値がないということは全くありません。
児童施設の心理判定員や民間の心理検査の実施業務などの心理系職員の募集要項には、臨床発達心理士も書かれていることがあります。
人手不足の現状で、医療系以外を目指すなら1つの選択肢として考えるのも良いでしょう。

公務員

「心理職になりたい」
そう思っている方へ。まず安定した心理職といえばこれなんです。
近年、心理系公務員のハードルは下がりつつあります。
大阪や横浜など、一部ではすでに教養試験や論述が廃止され始めているからです。
心理系の知識と面接で合否が決まるという院試とほぼ同じ待遇なので、今まで勉強されてきた方ならまず受かるでしょう。
そして大学院卒とは違う区分で募集されており、大きな違いとしてグループディスカッションの有無があります。
学部卒対象であればグループディスカッションを行わないところが殆どであり、むしろ難易度は比較的優しいとも言えるでしょう。

終わりに

ここまで羅列しましたが、結局はブラックボックスなのです。
予備校講師は「現役他学部の大学生の合格率は著しく下がっている」とおっしゃっていました。この他学部には私のような心理学部卒も含まれています。
私は予備校で志望校のA判定以外を目にしたことがなく、研究室訪問や説明会への参加を怠ったこともなく、指導教官からは確実に受かるだろうと言われていました。
受かると思って何校も入試を駆け抜けていた秋〜冬にかけて、段々と周りを含め、疑問が確信に変わっていきました。
私立10校、筆記通過で面接落ち。筆記は9割取れていた大学院、定員割れしていた大学院もありました。なぜでしょう。
そして今、ダメ元で最後に受けた基礎心理の大学院は1校目で通り、入学することになりました。
もう後悔はしていませんが、確信に気づきかけた時の戻れない絶望を誰にも味わってほしくないです。
誰かの参考になりますように。


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