若者のすべて
僕が思っているより世界は平和で、愛おしいものかもしれない。
そんな春の夕暮れ。今年の夏、花火大会はないのだろうな、と思いながら帰る道すがら、二人は一つにはなれないから、どうしても合わせてしまったり、すれ違ったりするのだろう、と思うのであって。
嘘のない愛を求めて、寂しくなったり、体を重ねては虚しくなったり、するのだろうか、と思うのであって。
あの日、東京で僕は何をしていたのだろうか、とか思い出しては忘れてみたり、する。
東京の夜を思い出すと、ああ、青春をしていたな、と思ったりするのだが、10代の若さがあなたに、逢わせてくれたのだな、と花火のように散った恋のことを思い出しては忘れて。
あのとき、僕が思っていた以上に彼女は僕のことを好きじゃなくて、それでも好きだ、と言ってくれたことを思い出す。
そう、僕は大志を抱いて荒野を歩く、と決めていたから。
彼女は気を遣ってくれたのだろう、と思うと情けなくて涙が出て、死にたい夜にかぎって君の名を思い出しては忘れて。
海岸通りで僕は歌を唄いながら、君の名を忘れようと必死だったことを思い出した。
今年の花火大会は、いつもの何倍も寂しいものなんだろうな、と思いながら。
夢の影は 今うつつ ながら雨に
さえぎられ 今は遠しと 思う頃かな
僕が思っているよりも世界は残酷で、美しいものかもしれない。
アナタのちからを僕に分けてください。