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本棚から消えた本
小説を書く、という行為が非常に億劫です。20年以上小説を書いてきてここまで追い詰められるのは多分はじめてで、本というものを視界に入れるのも多少ためらってしまう。
村谷由香里です。
noteをご覧いただきありがとうございます。
そもそも何を書きたいんだったかと、早朝に本棚を漁っていました。しかし整理整頓があまりに下手で、このアパートに持ってきたはずの本がごっそり10冊くらいなくて、寝てないテンションでそのまま数冊同じ本を買いました。絶対この部屋のどこかにはあるはずなんだけどどうやったら10冊も本をなくすのか……。
文章が綺麗な物語が好きです。というか、物語の体をなしている必要性もあまりなかったのかもしれません。何が書いてあるのかよくわからないものでも、美しければそれで良かった。そういうものが書きたくて、でもわたしには書けなかったんですよね。純文学への適性がなかったから。だからといってエンタメが向いているというわけでもない。エンタメ小説が好きなわけでもない。
面白い物語を書きたいと思ったことは、もしかしたら一度もなかったのかもしれない。いつだって、文章という手段を使ってなにか綺麗なものを作りたかった。たとえば閉館するプラネタリウムの投影機が最後に語ってくれた星空の記憶、架空の海辺の町で暮らした毎日、本当はどこにもいない同居人との会話、火星の青い夕焼けを見た日のこと。
別に始まりも終わりもしない、わたしだけが美しいと思う虚構を書いていたかったんだろうな。もしくはほんの数人のために作る、綺麗な嘘が好きだった。
まあ、それは大半同人でやっていることに他ならないんだけどね。やっぱりわたし同人作家の方が圧倒的に向いているんですよ。好き勝手に自分の作りたい虚構が作れる。同人の企画ばかり思いつく。最近そのことばかり考えてしまうけど、〆切は待ってくれないので大人しく文章を書くことにします。
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