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朝井リョウ『ままならないから私とあなた』
本書の一作目『レンタル世界』から読み始めた。
同著者のエッセイ『風と共にゆとりぬ』には、レンタル業者を利用したエピソードがあったことを思い出し、ニヤニヤしながら読み進めていくと、ショッキングなゴールが待っている。
ちょっと前に流行った「レンタル何もしない人」ではなく、「レンタルめっちゃ演じる人」の話である。
エッセイには「なりきりたい願望を満たす」ためにレンタルしたとあり、架空の人間関係を楽しんだエピソードが笑えるのだが、その体験を糧にしたのだかしてないのだか知らないが、「人間関係の不確かさ」を小説に落とし込んでいるのが、ほんとうにさすがなのである。オードリー若林やクリーピーナッツのDJ松永などの文化系面白お兄さんと単なる仲良しだと思ってはいけないのである。(その二人も大好きだけど。ラジオリスナーです)
上記のエッセイでは私の出身高校にも言及してあり、なんだかうれしい。高校演劇の項。
朝井リョウといえば、部活やめるってよ、が筆頭に上がるだろうし、青春小説のイメージがずっと強かった。神木隆之介主演映画は観たし小説も読んだけど、どうも青春小説特有の倦怠会話を読み進めるのが困難で、苦手意識を持っていた。
現代の青春小説はだいたいにおいてダルい会話で成り立っていて、その「ダルさ」が思春期の表現なのかもしれないけど、前述の出身高校では全くそのような雰囲気はなく、慣れ親しんでいないし懐かしさも感じず、ただただダルい。
それがこのたびの小説では、シャープでスピーディーな会話が散りばめられており、日常ショートサスペンスの手触りを見せてくれるのが気持ち良い。
エッセイと併せて読むと、おそらく二倍は面白い。
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