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私にとってのヒーローは、世界最高の2番手

幼少期何を見てたんだ?

最近同い年の友人と話していて、自分の趣味の少なさを思い知らされた。特に幼少期は何をして育ったのだろうというレベルだ。友人は「監禁されてた?」といじってくるが間違いじゃないように感じる。戦隊モノやウルトラマン、アンパンマンだったり仮面ライダーはどれも見たことない。ドラゴンボールもワンピースも見た事ないし、サッカーをやってたのにイナズマイレブンも見た事ない。ただその代わり幼少期の私は何回も何回も繰り返し、2008年のf1総集編を見ていた。本当に狂ったように見ていたし、今でもたまに見返す。その中に私のヒーローは美しく力強く出てくる。そう、フェリペ・マッサだ。

フェリペ・マッサというドライバー

ブラジル人のf1ドライバーと言えば、多くの人がアイルトン・セナを思い浮かべるであろう。本当に生で見たかったと今も思う。ブラジル人のマッサはやはりセナに憧れていたようで、サインを求めて断られたこともあったそう。そんな彼も立派なドライバーとなり、06年はフェラーリでシューマッハの相方を務めた。07年はシューマッハに代わって加入したライコネンがチャンピオンを取った。エースドライバーとまではいかないものの、トルコマイスターと呼ばれるほどのトルコでの強さを見せたり、トップドライバーの1人ではあったとは思う。

2008年、最高のシーズン

08年のf1は、前年に続いてメルセデスとフェラーリが速く、ハミルトンとマッサがタイトル争いをする事になる。フェラーリの方が速いものの、安定感に欠けていたように思う。デビュー2年目のハミルトンもまだ荒々しい所も目立ち、マッサのチームメイトライコネンや、BMWザウバーのロバート・クビサ、デビューイヤーのセバスチャン・ベッテル(トロロッソ)この歳からルノーに戻った2度の王者フェルナンド・アロンソが優勝することもあった。(アロンソの優勝はクラッシュゲート絡みだが割愛)
この中でもクビサとベッテルの優勝は感動的なので少し詳しく書く。クビサは07年のカナダGPで車が原型を保てないほどの大クラッシュをした。幸い大きな怪我には繋がらなかったものの、見てるだけでトラウマになるような事故だった。そして1年後の08年カナダGP、荒れた展開をチームメイトのニック・ハイドフェルドと共にくぐり抜けキャリア初勝利、結果的にこれがキャリア唯一の勝利となった。08年総集編でナレーターが「来た!クビサだ!」と言うシーンは何度見ても鳥肌ものである。

08年から初のフルシーズン参戦となったベッテルは、決して速いとは言えないトロロッソチームでもひかる走りを見せていた。第14戦イタリアGP、大雨で予選から波乱の展開となった。そんな中に初日の練習走行を雨でもサボらず入念に行ったベッテルは、予選でポールポジションを獲得する。これは当時最年少記録だ(21歳72日)。そして翌日の決勝でもルーキーとは思えない安定感でポールトゥウィン。これもまた当時の最年少優勝記録だ。私は優勝インタビューでの彼の発言が印象に残っている。最年少記録について問われた彼は「こういう記録はまた若いやつが出てきてすぐに抜かれるのさ。」と答えた。なんて大人なんだと衝撃を受けた。彼はこの後2010~13で4年連続チャンピオンに輝いている。必然だったのかもしれない。
そんな面白いシーズンも終わりに近づき、タイトルの行方は最終戦ブラジルGP、インテルラゴスサーキットで決まることとなった。

最終戦、ブラジルGP

この時点でチャンピオンの可能性はハミルトンとマッサに絞られた。条件は以下の通りだ。

ワールドチャンピオン獲得の条件

・フェリペ・マッサ
優勝→ハミルトン6位以下
2位→ハミルトン8位以下

・ルイス・ハミルトン
5位以上→チャンピオン

条件はハミルトンの方が有利だ。しかし、会場はブラジル。マッサの母国である。想いが違うだろう。その想いは予選から感じられた。マッサは堂々のポールポジション。しかしハミルトンは少しミスがあり4番手スタートに。どちらともいえない状態で決勝を迎えることになった。
決勝スタート直前、大雨が降り出し、路面が濡れる。雨はすぐに止むも、レース中のコンディションも読みづらい状態の中スタートした。マッサはスタートダッシュを決め、1位で逃げる。ハミルトンは6位に落ちる事もあったが、自力でオーバーテイクをし、4位まで戻っていた。このまま終わればハミルトンがチャンピオンである。
しかしそう簡単には終わらない。残り9周ほどで、また大雨が降り出したのだ。f1には晴れ用タイヤと雨用タイヤがあり、晴れ用で濡れた路面を走るのは不可能に近い。雨が降ってきた時点でほとんどのドライバーがピットインし、タイヤ交換を行った。ここで順位の変動が起きた。このタイミングでの順位を整理する。
1.マッサ(雨タイヤ)
2.アロンソ(〃)
3.ライコネン(〃)
4.グロック(晴れ用タイヤ)
5.ハミルトン(雨タイヤ)
6.ベッテル(〃)

このままの順位だとハミルトンがチャンピオンである。ちなみにマッサはダントツトップで逃げていたため、ハミルトンの順位によってチャンピオンの行方は決まることとなる。
4位のグロックだけは残り周回数が少ないから晴れ用タイヤで走りきる選択をした。そしてハミルトンの後ろからは、大雨で初優勝をしたベッテルがものすごいペースで迫っていた。

残り3周でハミルトンが少しミスをした。その隙をベッテルは逃さなかった。ベッテルがハミルトンをオーバーテイク。この時点でチャンピオンの権利はマッサに移った。
晴れ用タイヤで走るグロックのペースは遅いものの、15秒以上の差があり抜けるかどうかも怪しい。

マッサはそのまま1位でゴール。他を寄せ付けない圧倒的優勝だった。しかしこれはマッサのチャンピオンを表すものでは無い。
必死に前を追うハミルトン。残りは半周もない。しかしそんなハミルトンの前に、晴れ用タイヤで大苦戦するグロックの姿が見える。最終コーナーでハミルトンがグロックのインをつき、5位に浮上。1年間のシーズン、18戦あった中での最後の周、1117周目の最終コーナーでチャンピオンの権利は再びハミルトンの元に帰ってきた。チャンピオンはルイス・ハミルトンに決定した。

涙の表彰台

チャンピオンはハミルトンではあるが、ブラジルGPの覇者はマッサである。表彰台の頂点で涙を流しながら母国ファンに向かってガッツポーズをする彼の姿は、スポーツ史上もっとも美しい敗者の姿と言って過言では無いと思う。
ハミルトンはこの後、合計7回のチャンピオンに輝き、歴史に名を刻んだ。対するマッサは09年に大クラッシュを起こし、段々とキャリアは下降線を辿っていってしまう。結果的にはマッサのf1キャリアでの最後の優勝はこの08年のブラジルGPとなった。

あとがき

私にとって、マッサは最高のヒーローであり、私にとっては最高のドライバーだ。彼のおかげでモータースポーツにハマり、その後も沢山の好きなドライバーが出てきた。
f1の美しさをこれ程までに表すシーズンを私は知らない。

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