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【対談企画】Yorihisa Taura × yk (Hello1103) #3 まとめ編


この対談は、たまたまアルバムの発売日が同じだったYorihisa Tauraとyk(Hello1103)が、せっかくだからそれぞれの作品について深堀りしていこうという趣旨の企画です。

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=Yorihisa Taura =yk(Hello1103)

▶最初はちょっと分かりやすくいこうかな
:全体を通して思うのは、『Haven』は結構リスナーとの駆け引きを想定している感じがありますよね。
:そうですね。その辺ってどうですか?Tauraさんは。
:ないです(即答)
:(笑)いいと思います。
:まあ、極端に聴き心地が落ち着かない曲順にはしないようにしてます。ただ、今回の『Augmentation』は特に、クライマックスをあえて配置しないようにしたというか、本来だったらここでガッときて、爆音で終わるみたいな流れがあってもよかったかもしれないですけど、そこはあえてやめたっていう。
:そこが作家性ですよね。私はデザイナーとかもやっているので、リスナーとの距離感を考えちゃうんですよね。こうした方が分かりやすいなとか、考えた曲の配置です。ソロアルバムとしては初の作品なので、これが名刺みたいなものですね。だから、最初はちょっと分かりやすくいこうかなって、そういう考えはありましたね。
:だから今後、2作目3作目って作っていくうえで、たまには分かりづらいのがあってもいいし、たまには全曲踊れるみたいなやつにしてもいいし、そうなっていくんですよね、きっと。それはすごく楽しみです。僕はちょっともうよく分かんないですけど(笑)
:この対談を始める前に、Tauraさんと文通している中で「緩やかな絶望」が制作のテーマになってるって聞いて、すごくいいなと思って。私はたぶん、「死」なんですよね。「死」とか「怠惰」とか。結構ネガティブな作品ですね、どっちも。
:ネガティブっちゃネガティブ……何て言うか、難しいですけどね。確かにポジティブではないかもしれないですけど、でもみんな感じてるでしょ実は、っていう(笑)
:そうですよね。それそれ(笑)
:言わないだけでね。
:言わないだけ(笑)
:やっぱ普通に生きてても、身近な人が亡くなるとかあることだから。言わないだけで、そういうネガティブなものと隣り合わせなんだけどね、っていう気持ちはありますよね。ポジティブなものの裏側にはネガティブなものがあって、表裏一体だから。ネガティブなものを抑圧してポジティブに生きようみたいなやつは……。
:あーきついです、ほんと。
:それはどうかなって。そのとき、それぞれで表出してくるもののバランスがちょっと違うだけじゃない?とは思いますね。
:それはめちゃくちゃ思いますね。
:そこはyukakoさんの作品からも感じるところで。
:よかった(笑)どう聴こえるか分からないですからね、自分では。
:分からないですよね。
:実際は自由に聴いてもらえればそれが1番だとは思うけど。
:まあ、あえて分かりづらく作っている部分もあるっちゃある。
:悟られないようにってことですよね。結構自分を隠しますか?
:うーん、そうですね。隠すかもしれない。というか、分かりやすさを記号的に配置しちゃうのはできれば避けたいっていう気持ちはあります。
:何かそれって理性的じゃないですか。
:逆張りとも言うかもしれない(笑)
:(笑)分かりやすくして、ここで盛り上がるだろうっていう、定石を排除していくのって、作品の気持ちいいツボをあえて消すってことだから、結構苦しいというか、理性の行為だなと思うんですね。
:あとあれですよね。本当に気持ちいいのか、という疑い。アンビエントだからきっとこうだろうみたいな、記号的な部分があったとして、その記号は本当に気持ちいいのかなって、1回疑ってみる。
:それはわかるなあ。
:だから、自分の過去作を聴いてると、ああ、記号的な表現に流されてるなってところもあったりして、ちょっときついなって思うこともなくはないですけど。
:その点について、私は『Haven』では初期衝動に近い感じで作っちゃったので、流されっぱなしだとは思うんですけど……。聴き手によって評価の分かれるところですが、私もいつかは記号を排除していけたらいいなと思って(笑)
:(笑)そんな無理に排除しなくていいのでは?
:怠惰で快楽的な人間なので、できないかも(笑)
:僕みたいな逆に張ってる奴がいるのは、順に張ってる人が多数派だからであって……。
:なるほど。じゃあ順張りの人が減ったら困るんですか?
:やっぱ王道みたいなのが少なくなったら困りますよね。Twitterとかで、アンビエントミュージシャンっぽい発信ってあるじゃないですか。
:ありますあります。
:あえてそれはやりたくない(笑)だからカピバラの写真をあげているわけで。
:この間、Heidiさんと羊を焼いたときに(※ジンギスカンのことです)、Tauraさんのツイートが面白いという話をしていて、でも悔しいからいいねはつけないって(笑)
:いいねをつけてください!

▶対になってる感じ
:結局アンビエントは、癒しとか落ち着くとか安らぎとか、そういう感じのものだけではなく、私は快楽的に作ったけど、Tauraさんみたいにこう理知的な……。
:理知的ではないと思いますけど……。
:理知的というか理性ですよね。大学のときにデュオニュソス的・アポロン的っていうのを習った気がするんですけど、『Haven』と『Augmentation』は逆の作品だなって。そうやって聴き比べると面白いですよね。
:確かに結構逆な感じはします。対になってる感じがして、きっと違いがあるんだろうなと思って、喋りません?って声をかけたんです。
:多分、最初は『Haven』はコンセプチュアルな作品でしょって思ってましたよね。
:そうですね、そう思ってました。
:意外と違うんですよね(笑)滅茶苦茶、突貫工事だった。できた曲をまとめるときにシナリオもまとめたんです。

▶画面越しでは伝わりきらない部分はある
:『Haven』のアートワークは私が自分で作ったんですけど、緻密に緻密にPhotoshopで切り抜いて、それを配置していきました。細かいから、盤にしたとき眺めて楽しいっていう考えは、『Augmentation』のアートワークと全く一緒です。いろいろなモチーフを集めたんですけど、アートワークを見ながら、曲を聴いてモチーフを見つけていくと、今まで見えなかったものが見えると思います。そういうのを見つけてもらいたいなと思って、いろいろイメージを配置しましたね。
:すごく不思議なアートワークと言うか、ぱっと見ただけでは全容がつかめない。
:抽象画ではないけど、『Augmentation』のアートワークと似てるなと思っていて、でかく見ることもできるし、細かく見ることもできるって同じ発想だなと。技法は全然違いますけど。
:画面越しでは伝わりきらない部分はありますよね。特にサブスクのジャケットってすっごいちっちゃいじゃないですか。せめてCDサイズで見てほしいですよね。
:あのサムネのサイズで勝てる画像もあるかと思うんですけど、あえてもうそれは無視して。
:ああ、僕もそうですね。
:それはいいや、って。届く人に届けばいいなって。

▶めちゃめちゃ売れてほしいですけどね(笑)
:これ言うとあれかもしれないですけど、『Haven』は売れるとか全然考えてない作品でして、その辺どうですかTauraさんは。
:いやもう、めちゃめちゃ売れてほしいですけどね(笑)
:(笑)そうですね。
:特にCDはね、在庫ができちゃうんで。
:ということで、
:めちゃめちゃ、
:買ってください。お願いします。
:流通には乗っけてるから、店舗になくても予約すれば買えるわけですから。
:何店舗か、実店舗で置いていただけるところが見つかっていて、私はもう盤ができてるけど、Tauraさんはこれからですよね、いろいろ決まるのが。(※この対談は2021年12月上旬に行われました)
:予約すれば買えますので、ものぐさをするなと言いたいですよね(笑)
:作り手としては、届けばいいなという思いで。配信はあるんですか?
:あります。Bandcampとかも用意するんで、そっちで買ってくれてもいいんですけど、まあせっかくなんでね、ここはひとつCDで(笑)

同じところもあれば、違うところもある
:締めますか。
:締めますか。
:今日どうでした?対談。
:何ですかねえ。アンビエントって人によっていろんな音があるし、いろんな作り方があるので、あとあんまりアンビエント仲間もいないので、そうなんだ!っていう発見がありましたね。同じところもあれば、違うところもあるという、ごく普通のことしか言ってませんが(笑)
:結構違いましたよね。本当はもっといろいろ話せたらよかったけど。Tauraさんはルーツになっているものが映画ですよね。私はゲームなので、その辺の違いも面白いですよね。
:そういうルーツも違うし、聴いてきた音楽も違う。
:面白いですね。
:女性でアンビエントやってる人ってあんまりいないんですよね。不思議なことに、エレクトロニカはいっぱいいるんですけど、アンビエント、ドローンみたいなフィールドだと途端に少なくなっちゃう。
:何人かいらっしゃるけど、少ないかもしれませんね。そう言えば。
:やればいいのにね、って思います。やってください(笑)
:(笑)私も今回、対談に声かけてもらって、Tauraさんのこと先輩だと思っていたので、光栄でしたね。
:先輩とかないでしょって思いますけどね、こういうのに(笑)
:でもずっとアンビエント作っていらっしゃって、私初めてのリリースなのに、いいのかな私ごときでって思ってたんですけどね。
:いやいや。
:ありがとうございます。

:ということで、2021年12月17日リリースですね。よろしくお願いします。
:買ってください!
:買ってください。またね。

『Augmentation』※サブスクリプション近日公開です
01. Ordinary Grace
02. Cynicism
03. Astrocyte
04. Black Rain
05. Oblivion
06. Shizukanoumi

all songs written by Yorihisa Taura
recorded by Yorihisa Taura
mixed by Yorihisa Taura
mastered by Takayuki Noami(Non-REM Studio)
illustration : Ai Komuro
photography : Kenji Agata
cover design : Takayuki Noami(Non-REM Studio)
supervisor : Kazuo Funabashi(Cat&Bonito)

Apple Music :

Bandcamp:

Taura Yorihisa :
ギタリスト、アンビエント音楽作家。
2013年からギターを用いたアンビエント/ドローンの作品を国内外のレーベルから発表し続けてきている。主なソロ作品に、『Nocturne』(2014年、Econore)、『Poo-Tee-Weet』(2017年、セルフリリース)、『nightfall』(2018年、Tanukineiri Records)などがある。また、国籍の異なる4人の音楽家によるスプリットカセットテープ『Puzzle Time』(2018年、Third Kind Records)への参加や、ノイズ音楽家 Tia Rungray との共作『Froth on the daydream』(2017年)、『Juvenile』(2020年)など、さまざまな実験的コラボレーションにも積極的に取り組んでいる。
SoundCloud:https://soundcloud.com/taura-yorihisa

Haven』 - yk (Hello1103)
01 - Susurration
02 - Dusk
03 - Moonlit
04 - Goodbye
05 - Wriggle
06 - Bottomless
07 - Forgotten Haven
All tracks and artwork by yk (Hello1103)
Mixed by Katsuhiro Hitomi
Mastered by Chihei Hatakeyama
Label : Dewfall Records / DFRD016
Website : https://hello1103.com/haven/

Spotify :

Apple Music :

yk (Hello1103) :
電子音楽ユニットHello1103のVJ・映像作家。
潜在意識を具現化したかのような抽象・ミニマルな映像表現を用いてmouse on the keys、Aureole、SuiseiNoboAzなど数多くのアーティストのVJを務める。
作品に対する美意識は音楽表現にも通底しており、2020年よりアナログシンセサイザーを用いたソロライブ活動を開始。アンビエントやノイズを軸足として、映像演出と同様に即興性を含んだ抽象的なスタイルで演奏を行う。
Website (Hello1103) : https://hello1103.com/
twitter : https://twitter.com/yk_hello1103
instagram : https://www.instagram.com/yk_hello1103/

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