森人との約束

木が揺れている

遠くに見える樹が
 揺れている

ザワザワ

ギシギシ

聴こえるはずの無い音が聴こえる

その揺れを見ると
思い出す

あの女(ひと)

強きひと
 そして
  弱きひと

人は多くの自分を持つ

あの時は

剣を持つ武人

雄叫びが
 森に響くと
  木々が揺れる
草木に風が這う
 風が鳴く

守り人

剣には多くの血が流れた時がある

彼は
 その時を思う時
  心に風が吹く

森はその香りで
 彼を癒やす

わたしは
 大樹から見守っていた

時に彼は私や
 周りの見えぬ者たちとも話していた

一人生きる

その姿は歳を重ねても凛とし
最期の時にさえ
森を見ていた

わたしは
 最期の時
  彼の唇に1度の口づけをした

次、出会う時は
 共にある事を願いつつ

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