虹と共に旅する者
「サキール神と風の女王の名において命ずる!嵐と落雷を顕現し我が盾となれ!!」
天上に湧き上がる黒煙
強き風と雷鳴が鳴り響く
次元の狭間から現れようとするその存在を封じるかのごとく大きな力が働きかける
短く切りそろえた髪が風に激しくなびく
多くの輝きを束ねたようなその髪の虹色は
漆黒の闇においても強く輝いている
小柄で戦士とも魔道士ともつかない風体で
その杖はかかげられ
一点に力を向けられている
彼女の背後には
盾を持つサキール神の姿
その水色の髪と額にある宝珠が輝きを増す
その存在は浅黒い緑の泥
全身には汚れた白い文様が刻まれ
呪われた燃える瞳で
異界の門をこじ開けようとしている
咆哮を共に大地が揺れ
狭間から闇が漏れ出してくる
虹の髪をもつ者
善き菌の友
言霊の錬金術師
多くの名を持つ彼女
今、まさに開かれようとする
異界門封滅
彼女はこの地でそれを成そうとしている
この地の伝説に
浅黒き緑が現れた後
堕ちた葡萄の精霊
その復活で世界は滅ぶ
今、この時で止めなければいけない!
彼女は新たなる呪文を唱える
空にある星が輝き
多くの流星が門へ流れ込む
泥は止まらない
最後の詠唱の瞬間
天上には大きな白き姿が舞い降りた
白き狐にして
天上橋の守護獣
その輝く白き毛並みは星の輝きを現す
泥の首元に噛み付くと閃光が一面を覆う
光を中心に大きな虹色の光が広がる
いくばくかの時が流れ
そこには草原と星々のみが残った
一人草原に立つ彼女
その瞳から一筋の涙
安堵なのか?
失ったものへの弔いか?
一滴、落ちる涙は虹色に輝き
やがて大地へ還っていく
虹と共に旅する者 彼女の心に捧げる
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