ウクライナ語文法シリーズその31:動詞の活用(第一活用非過去形:母音幹動詞)
今回から動詞の活用を見ていきます。変化表盛りだくさんですのでお楽しみに!
ウクライナ語の動詞の非過去形は第一活用と第二活用とに大きく分けられます。今回は第一活用の動詞のうち、母音幹のものの活用を覚えていきましょう。
第一活用の活用語尾をまとめると以下のとおりです。
ウクライナ語では、ほんとうの意味での不規則変化動詞というものはあまり数がなく、第一活用動詞については上記の表から逸脱することはありません。次回紹介する第二活用動詞も基本的に同様です。
他方で学習者にとって厄介なのは、規則変化の中に色々とパターンがあることです。
以下、第一活用のパターンごとに紹介していきます。第一活用は特にバリエーションが豊富です。
まず最初の今回は母音幹動詞です。人称語尾の直前の語幹が母音に終わる動詞を指し、非常にスタンダードな変化パターンとなります。
基本活用
語幹の最後の母音は -а-、-і-、-и-、-у- です。したがって、これらの動詞の不定形は -ати、-іти、-ити、-ути に終わりますが、不定形がこれらに終わるからといって必ずしもこの変化パターンに当てはまるわけではありませんので、ご注意ください。
このパターンでは、人称変化の際にアクセントが移動することはありません。
それでは順に変化表を見ていきましょう。
чита́ти 「読む」(不完)
ма́ти 「持っている、ある、~しなければならない」(不完)
розумі́ти 「理解する」(不完)
ми́ти 「洗う」(不完)
чу́ти 「聞こえる、感じる」(不完)
чу́ти のように -у- に終わる母音幹動詞は実はかなり珍しいです。
この変化パターンが第一活用すべての基礎になりますので、何回も唱えて覚えてください。
できれば人称代名詞をつけて一緒に唱えてください。三人称単数はお好みでどれか。
接辞 -ува-、-ава- のつく動詞
動詞の不定形が -увати (-ювати) や -авати で終わっているときは少しだけ注意が必要です。これらの動詞の非過去形では、-ва- がとれてしまうのです。
それ以外は非常に規則的となります。
アクセントの位置は少々注意で、-увати (-ювати) で終わる動詞の場合、不定形でこの -ва- の部分にアクセントが置かれている場合は、非過去形では -ва- の直前の母音にアクセントが置かれます。不定形でそれより前にアクセントが置かれている場合は、アクセント位置は不変です。
他方で、-авати で終わる動詞は、非過去形のアクセントは一番最後の母音に置かれます。
関連して、ウクライナ語の動詞全般に言えるアクセントの法則として、非過去形の二人称単数形でアクセントが人称語尾の母音に置かれる場合、すべての人称でアクセントが一番最後の母音に置かれるというものがありますので、なんとなく覚えておくとよいでしょう。
これらの接辞がついている動詞は基本的に不完了体が多いですが、接頭辞がつくと完了体になることもあります。
працюва́ти 「働く、営業する」(不完)
завойо́вувати 「征服する、勝ち取る」(不完)
устава́ти (встава́ти) 「立ち上がる、起きる」(不完)
ゼロ母音の母音幹動詞
これから紹介する4つの動詞 пи́ти、би́ти、ви́ти、ли́ти は非常に基本的な意味を持つ重要単語で、変化パターンから言えば第一活用の母音幹動詞型なのですが、語尾の直前に母音が現れないという特徴があります。じゃあ子音幹では?と思う方もいるかと思いますが、語幹の母音が「ゼロ」になっている、と解釈し得るものです。その証拠に、子音幹動詞とは異なり活用語尾の母音は軟母音となっています。
実用的には、пи́ти、би́ти、ви́ти は語幹の -и- を取って ‘(アポストロフ)に変え、その上で先の2パターンと同じ軟母音の人称語尾をつけます。ли́ти は語幹の -и- を取るまでは同じですが、л をもう一個重ねた上で軟母音の人称語尾を直接つけることで非過去形となります。
アクセントは、母音が語尾にしかありませんので、自然と先ほど紹介した法則に則って一番最後の母音に置かれます。
このような非過去形を持つ動詞はこの4つと、これらの完了体をはじめとする、接頭辞をつけて派生した動詞のみです。
пи́ти 「飲む」(不完)
би́ти 「叩く、殴る」(不完)
ви́ти 「織る、編む」(不完)
なお、ややこしいのですが、不定形が同じ ви́ти 「うめき声を上げる、声を上げて泣く」という動詞があります。こちらは典型的な母音幹動詞で、я ви́ю, ти ви́єш... と変化します。
ли́ти 「注ぐ」(不完)
-іяти に終わる動詞
数はそれほど多くありませんが、不定形が -іяти に終わる動詞は -я- を取って人称語尾をつけます。
сі́яти 「種を蒔く」(不完)
ді́яти 「行動する、機能する」(不完)
мрі́яти 「夢見る、願う」(不完)
母音幹の第一活用動詞の変化は以上です。
本当は今回、第一活用すべてを網羅しようかと思ったのですが、子音幹動詞のパターンが非常に多く、とても重厚長大な記事になってしまいそうでしたので分けることになりました。
次回からが本番!です。