ウクライナ語文法シリーズその23:指示代名詞
指示代名詞とは、日本語の「これ・それ・あれ」または「この・その・あの」に相当する代名詞です。日本語では「こ・そ・あ」というように、話者と相手との距離に応じて3段階がありますが、ウクライナ語では基本的に це 「これ、それ」の系統と те (то) 「それ、あれ」の系統の2段階になります。(3段階とする説もあります)
「この、その、あの」
まずは「この・その・あの」のように名詞を修飾する際の形をそれぞれ見ていきましょう。形容詞の変化に似て、性と数によって変化します。
цей 「この、その」
той 「その、あの」
それほど目新しい変化でもないと思いますが、той の女性属格及び具格に二通りがあり得るのに注意してください。
また、人称代名詞と同様、前置詞が付く場合にはアクセントが一つ前にずれます。
「これ、それ、あれ」
特に後ろに名詞が付かない形で、単に「これ、それ」や「それ、あれ」を表す際には、それぞれ中性形の це や те または то が用いられます。「それ、あれ」の場合は、修飾する場合の те ではなく то が用いられることも多いです。
また、慣れるまですこし注意が必要ですが、те (то) 系統は主に це 系統との対比で用いられます。そのため、日本語では「あれ」を用いるような場合でも、示される対象を初めて話題にするような文脈では це で表されることがあります。
なお、ウクライナ語の A=B の文の現在形では be 動詞の現在形が現れないことは既に説明したとおりですが、це や то が A と B を繋ぐ繋辞として用いられることも多いです。
また、той/та/те/ті 及びその変化形は、関係代名詞 хто や що と組み合わせて「~する人」や「~するもの」を表す用法もあります。
この場合、той は 「той, хто…」の形で単数の「~する人」を表し、та は「та, хто…」である程度特定された「~する女性」を表します。これに対し、те は「те, що…」で主に一般的に「モノ」について、ті は「ті, хто…」の形で一般的に「~する人々」を表します(もちろん、特定の複数の「モノ」を表す時もあり、その場合は「ті, що…」となります)。後ろにつく хто や що は格変化したり前置詞が付くことで様々な意味を表します。
ところで、цей と той には前に о- が付けられることがあります。この場合、注意を引く意味が出て、「ほらこの、ほらあの」といったような意味合いになります。
また、це や то のように単独で強調の意味で用いられる形として、ось, от, он があります。「ほら~」という意味のほか、感嘆文的な意味合いでも用いられます。
その他の指示代名詞
このほか、指示代名詞に含まれるものに сті́льки 「これほど(たくさんの)」と таки́й 「このような」の二つがあります。それぞれ、疑問代名詞の скі́льки と яки́й に対応します。文法上の扱いも似ていて、сті́льки の後に名詞が続く場合、主格・対格では名詞は属格になります。
сті́льки 「これほど(たくさんの)」
таки́й 「このような」
指示「代名詞」とは異なりますが、場所や方向を表す語に以下がありますので紹介しておきます。