ウクライナ語文法シリーズその34:未来時制
今回は未来時制についてまとめたいと思います。
未来時制の表し方は動詞の体によって異なり、また不完了体動詞では未来形の作り方が2通りあります。
完了体動詞
完了体動詞による未来時制は単純で、非過去形が未来時制を表します。非過去形の活用については前回までで詳述しましたので省略します。
繰り返しの説明になりますが、完了体動詞は最後まで動作をやり切るという様態を表し、「~してしまう」というニュアンスを持ちますので、現在時制を表すことが性質上そもそもできず、非過去形がそのまま未来時制を表してしまいます。
完了体動詞非過去形による未来時制は、このあと動作の最後までやってしまう、その動作を完結させてしまう予定だ(少なくともその発言の時点ではそのつもりである)ということを常々意識してください。
ただし、訳すときは「やってしまう」「やり終える」という意味合いを敢えて訳出しなくとも、日本語の普通の現在形(非過去形)で表したほうがスッキリとして自然になることも多いです。もちろん文脈次第ですが。
不完了体動詞
「未来形」と呼べる形を持つのは不完了体動詞だけです。不完了体動詞の未来形には、①助動詞бу́ти の未来形と動詞の不定形を組み合わせる合成未来形と、②動詞の不定形に人称接尾辞を付けて表す総合未来形の2つがあります。
この2つに細かいニュアンスの差は無いそうで、どっちを使っても全く問題ないようです。ただし、私自身がその差異をネットで調べていたときのネイティブの意見としてよく見受けられたのが、ウクライナ語の使用率が伝統的に高い西部の方言では総合未来の形はまず見られず合成未来のみが用いられ、現代ウクライナでは元来ロシア語母語話者である人々がウクライナ語を話す際に「らしさ」を出すため(注:ロシア語に総合未来形は存在しない)に総合未来形を多用している傾向がある、というものでした。いずれにせよ、好きな方を使えばよいと思います。
不完了体の未来形では、完了体と異なり、なにかを最後までやってしまう、という意味合いは全く無く、単純に「~するつもりだ」「~するだろう」という未来を表します。大事なことなので言葉を変えて繰り返しますが、その動作を終わらせるかどうかは話題の範疇に含まれません。
また、不完了体ですので、未来における習慣的・繰り返しの動作も表します。
合成未来形
合成未来形は бу́ти の未来形と不完了体動詞の不定形を組み合わせて作られます。
例として、чита́ти の合成未来形は以下のとおりです。
下記の例文はさっきの完了体動詞の未来形の例文に合わせていますが、訳文だけでは違いが分かりづらいと思いますのでカッコ内に補足を入れています。ただし、文脈によって話者の意図や表す状況が変わることがあり得るのでご了承ください。
なお、基本的には上記のような語順が標準ですが、ウクライナ語は語順が比較的自由なため、бу́ти と本動詞の順番が逆になったり、間に別の語が挟まったりすることもあります。
総合未来形
総合未来形は動詞の不定形の接尾辞 -ти のあとに以下のような総合未来形特有の人称語尾をつけることで作られます。
例として、чита́ти の総合未来形は以下のようになります。
作り方は非常に簡単ですね。ところで、第一活用動詞の非過去形のところで出てきた прийня́ти などの -йня́ти の部分を持つ動詞の変化を覚えているでしょうか。この -йня́ти の部分は、現代ウクライナ語では古語となっておりほとんど使われないもののもともと単独で「持っている」という意味を表す動詞で、その人称変化形は я йму, ти ймеш...... でした。総合未来形は、動詞の不定形と助動詞 йня́ти を組み合わせたものが起源となっているとされています。
以上になります。
今回は短めで申し訳ないですが、未来形はそれほど難しくないのでこんなものかなとも思います。
次回は前回出てきた -ся のついた動詞についてまとめたいと思います。