ウクライナ語にも他の多くのヨーロッパの言語と同様、形容詞に比較級と最上級があります。英語などに比べると若干比較級と最上級の境目が曖昧な部分があり、特に最上級では構文もあまりカッチリとはしていないのですが、その分比較級はよく用いられます。
比較級
英語と同じく、形容詞そのものが変化するものと、more に相当する語との組み合わせで作るものの二通りあります。
おおむね語幹の音節が2つより多い形容詞の場合は бі́льш を前につけることで比較級を表します。非常に簡単です。
それ以外の主要な形容詞は、多くの場合、男性形の -ий を -іший に変えることで比較級の形となります。このとき、アクセントが і に置かれることが多いです。
比較級も原級と同様に男性、中性、女性、複数の語尾を持ちます。また、副詞形もあり、これは中性主格形と同じ形になります。
基本的な比較級の作り方は上記のとおりですが、一部の非常に基礎的な使用頻度の高い重要な形容詞は、不規則というほどではないのですが、上記とは少々異なった比較級の作り方になります。
いずれも超重要語ですので、この場で覚えてしまいましょう。よく使うので原級・比較級それぞれの副詞形もカッコ内に示します。
また、「大きい」、「小さい、少ない」、「良い」、「悪い」は不規則な比較級を持ちます。
「良い」に相当する語は до́брий と га́рний の2つがありますが、比較級の方も кра́щий と лі́пший の二通りあります。何かの微妙な違いでもあるのではないかと思って調べたことがあるのですが、どうやらこれはどちらでも良いようです。(地方によってどちらを使うか傾向はあるようです)
また、до́брий と га́рний には「良い」のほかに、それぞれ「優しい」と「美しい」の意味もありますが、こちらの意味での比較の場合には、まれに、通常の規則的な比較級を使うこともあるようです。
文で比較を表す際、比較の対象を表す方法はいくつかあります。主なものはніж、від、заを使うものです。
ніж (格の変化なし)
від +属格
за +対格
その他に「як +(格の変化なし)」、「про́ти +属格」、「над +対格」、でも表されます。
ウクライナ語においては比較級は必ずしも比較を表すとは限りません。つまり、比較の対象なしに用いられ、強調の意味合いで使われたり、もしくは派生的な意味で使用されることもあります。
最上級
最上級は非常に簡単で、比較級の形の最初に най- をつけるだけです。бі́льш を使う場合はこれを найбі́льш に置き換えればOKです。
また、これらの形に що- または як- をつけることで意味を強めて使うことがあります。日本語には少々訳しづらいですが、図抜けて程度が最も高いことを表したりするようです。また、通常の最上級がある一定のグループ内で比べたときに「最も〜である」という意味が出ているのに対し、що- や як- のつく形は「可能な限りの最大限」という意味合いで使われることが多いようです。
比較の対象の表し方はこちらも色々あり、「з+属格」、「се́ред+属格」、「за+対格」、「від+属格」、「між+具格」、「з-по́між+具格」などがありますが、これは比較のための構文というよりは意味上「~の中で」という意味の前置詞が主に使われるに過ぎませんので、特段特別なことはありません。
形容詞については以上となります。
ポイントは名詞と性・数・格の一致をするということですので、まずはなんにしても変化を覚えてしまってください。比較級・最上級の作り方、特に基礎的な形容詞の不規則っぽい比較級の形はもちろん覚えてしまったほうが良いのですが、あまり厳密に記憶しなくても出現頻度が高いので自然と覚えてしまえるのではないかと思います。
次回からは代名詞を見ていこうかと思います。