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ウクライナ語文法シリーズその19:比較級、最上級

ウクライナ語にも他の多くのヨーロッパの言語と同様、形容詞に比較級と最上級があります。英語などに比べると若干比較級と最上級の境目が曖昧な部分があり、特に最上級では構文もあまりカッチリとはしていないのですが、その分比較級はよく用いられます。


比較級

英語と同じく、形容詞そのものが変化するものと、more に相当する語との組み合わせで作るものの二通りあります。

おおむね語幹の音節が2つより多い形容詞の場合は бі́льш を前につけることで比較級を表します。非常に簡単です。

бі́льш симпати́чна люди́на 「より好ましい人」 


それ以外の主要な形容詞は、多くの場合、男性形の -ий を -іший に変えることで比較級の形となります。このとき、アクセントが і に置かれることが多いです。

холо́дний 「冷たい、寒い」 – холодні́ший 「より冷たい、より寒い」
те́плий 「温かい、暖かい」 – теплі́ший 「より温かい、より暖かい」
ціка́вий 「おもしろい、興味深い」 – цікаві́ший 「よりおもしろい、より興味深い」 

比較級も原級と同様に男性、中性、女性、複数の語尾を持ちます。また、副詞形もあり、これは中性主格形と同じ形になります。

холодні́ше 「より冷たく、より寒く」
теплі́ше 「より温かく、より暖かく」
цікаві́ше 「よりおもしろく、より興味深く」 

基本的な比較級の作り方は上記のとおりですが、一部の非常に基礎的な使用頻度の高い重要な形容詞は、不規則というほどではないのですが、上記とは少々異なった比較級の作り方になります。
いずれも超重要語ですので、この場で覚えてしまいましょう。よく使うので原級・比較級それぞれの副詞形もカッコ内に示します。

дале́кий (дале́ко) – да́льший (да́лі) 「遠い―より遠い、今後の、さらなる」 ※比較級の副詞形が例外的な形となるので注意
близьки́й (бли́зько) – бли́жчий (бли́жче) 「近い―より近い」
легки́й (ле́гко) – ле́гший (ле́гше) 「軽い、簡単な―より軽い、より簡単な」
тяжки́й (тя́жко) – тя́жчий (тя́жче) 「重い、難しい―より重い、より難しい」
важки́й (ва́жко) – ва́жчий (ва́жче) 「重い、難しい―より重い、より難しい」
висо́кий (ви́соко) – ви́щий (ви́ще) 「高い、背が高い―より高い、より背が高い」
ни́зький (ни́зько) – ни́жчий (ни́жче) 「低い、背が低い―より低い、より背が低い」
широ́кий (ши́роко) – ши́рший (ши́рше) 「広い―より広い」
вузьки́й (ву́зько) – ву́жчий (ву́жче) 「狭い―より狭い」
тонки́й (то́нко) – то́нший (то́нше) 「細い、薄い―より細い、より薄い」
товсти́й (то́всто) – то́вщий (то́вще) 「太い、太った、厚い―より太い、より太った、より厚い」
до́вгий (до́вго) – до́вший (до́вше) 「長い―より長い」
коро́ткий (ко́ротко) – коро́тший (коро́тше) 「短い―より短い」
дороги́й (до́рого) – доро́жчий (доро́жче) 「(値段・価値が)高い、愛しい―より(値段・価値が)高い、より愛しい」
деше́вий (де́шево) – деше́вший (деше́вше) 「安い―より安い」
стари́й – ста́рший (ста́рше) 「古い、年をとった―より古い、より年をとった」
молоди́й – моло́дший (моло́дше) 「若い―より若い」
глибо́кий (гли́боко) – гли́бший (гли́бше) 「深い―より深い」
ду́жий (ду́же) – ду́жчий (ду́жчий) 「力強い―より力強い」
швидки́й (шви́дко) – шви́дший (шви́дше) 「速い―より速い」 

また、「大きい」、「小さい、少ない」、「良い」、「悪い」は不規則な比較級を持ちます。

вели́кий – бі́льший (бі́льш(е)) 「大きい―より大きい」
мали́й (ма́ло) – ме́нший (ме́нш(е)) 「小さい、少ない―より小さい、より少ない」
пога́ний (пога́но) – гі́рший (гі́рше) 「悪い―より悪い」 

「良い」に相当する語は до́брий と га́рний の2つがありますが、比較級の方も кра́щий と лі́пший の二通りあります。何かの微妙な違いでもあるのではないかと思って調べたことがあるのですが、どうやらこれはどちらでも良いようです。(地方によってどちらを使うか傾向はあるようです)

до́брий (до́бре)/га́рний (га́рно) – кра́щий (кра́ще)/лі́пший (лі́пше) 「良い―より良い」

また、до́брий と га́рний には「良い」のほかに、それぞれ「優しい」と「美しい」の意味もありますが、こちらの意味での比較の場合には、まれに、通常の規則的な比較級を使うこともあるようです。

до́брий (до́бре) – добрі́ший (добрі́ше) 「優しい―より優しい」
га́рний (га́рно) – гарні́ший (гарні́ше) 「美しい―より美しい」 

文で比較を表す際、比較の対象を表す方法はいくつかあります。主なものはніж、від、заを使うものです。

ніж (格の変化なし)

Він ви́брав ни́жчий стіле́ць, ніж і́нші ді́ти. 「彼は他の子どもよりも低い机を選んだ」
Книжки́ в цьо́му магази́ні були́ доро́жчі, ніж в то́му. 「この店の本はあの店よりも高かった」 

від +属格

Моя́ сестра́ розумні́ша від браті́в. 「私の姉は男兄弟よりも賢い」 

за +対格

Я не ба́чив нічо́го кра́щого за це. 「私はこれより美しいものを見たことがない」 

その他に「як +(格の変化なし)」、「про́ти +属格」、「над +対格」、でも表されます。 

ウクライナ語においては比較級は必ずしも比較を表すとは限りません。つまり、比較の対象なしに用いられ、強調の意味合いで使われたり、もしくは派生的な意味で使用されることもあります。


最上級

最上級は非常に簡単で、比較級の形の最初に най- をつけるだけです。бі́льш を使う場合はこれを найбі́льш に置き換えればOKです。

холо́дний – холодні́ший – найхолодні́ший 「寒い、冷たい―より寒い、より冷たい―最も寒い、最も冷たい」
близьки́й – бли́жчий – найбли́жчий 「近い―より近い―最も近い」
промисло́вий – бі́льш промисло́вий – найбі́льш промисло́вий 「工業的な―より工業的な―最も工業的な」 

また、これらの形に що- または як- をつけることで意味を強めて使うことがあります。日本語には少々訳しづらいですが、図抜けて程度が最も高いことを表したりするようです。また、通常の最上級がある一定のグループ内で比べたときに「最も〜である」という意味が出ているのに対し、що- や як- のつく形は「可能な限りの最大限」という意味合いで使われることが多いようです。

щонайсильні́ший 「飛び抜けて最強の/最大限強い」
якнайшви́дший 「飛び抜けて最も速い/最大限速い」 

Він — щонайста́рший над усі́ма. 「彼は皆の中で最も年長だった」
Дани́лові довело́ся лише́ ду́мати про якнайскорі́шу реаліза́цію свого́ пла́ну. 「ダニロフがすべきは自身の計画のいち早い実現について考えることのみであった」

比較の対象の表し方はこちらも色々あり、「з+属格」、「се́ред+属格」、「за+対格」、「від+属格」、「між+具格」、「з-по́між+具格」などがありますが、これは比較のための構文というよりは意味上「~の中で」という意味の前置詞が主に使われるに過ぎませんので、特段特別なことはありません。

Се́ред усі́х батькі́в вони́ найбі́льш симпати́чні. 「全ての親の中で彼らが最も好ましかった」

形容詞については以上となります。
ポイントは名詞と性・数・格の一致をするということですので、まずはなんにしても変化を覚えてしまってください。比較級・最上級の作り方、特に基礎的な形容詞の不規則っぽい比較級の形はもちろん覚えてしまったほうが良いのですが、あまり厳密に記憶しなくても出現頻度が高いので自然と覚えてしまえるのではないかと思います。

次回からは代名詞を見ていこうかと思います。

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