ウクライナ語文法シリーズその27:集合数詞、序数詞
ウクライナ語には基数詞のほか、さらに集合数詞と序数詞があります。まずは集合数詞から見ていきましょう。
集合数詞
集合数詞は英語などには無い概念ですが、「複数のものをひとまとまりのグループとして表す数詞」になります。実用的には、①複数形しか持たない名詞を数えるとき、②人数を表すとき、の2つの用途があります。
まずは形を見ていきましょう。
見てお分かりと思いますが、それほど予想を裏切るような形はありません。2と3については -є をつけ、それ以上については -еро を付けたような形で作られます。
一応、12以上や20,30もあるにはあるのですが、作り方は同じです。また、現実的に使用されるのはせいぜい де́сятероくらいまでとのことですので、省略します。40以上は存在しないとされています。
主格と無生の対格以外の格変化形は、基数詞と全く同じです。
そして、主格と無生の対格で名詞が後ろに付くときは、名詞は必ず複数属格形を取ります。
①複数形しか持たない名詞を数えるとき
英語でも例えばハサミを a pair of scissors, two pairs of…とわざわざ pair という単語を使って単位化します。日本人にはなかなか理解しがたいですが、単数形と複数形を厳密に区別する言語では、元々複数形の単語にそのまま「2」や「5」などの基数詞を付けるのは不自然なようです。
ウクライナ語では「1」に複数形がありますし、また2以上も集合数詞がありますから、これを活用して英語などよりは比較的すっきりとした表し方になります。
②人数を表すとき
日常的にはこちらの用法が圧倒的に多く用いられます。人にも動物にも用いられ得ますが、人間の人数を示す際には特に口語では集合数詞を用いることが多いようです。
上記の両方の例で、それぞれ Нас чоти́ри. や два бра́ти としても全く問題ありませんが、これらのように人数を表すときは、集合数詞がよく用いられます。
ところで、上の1つ目の例文を見ていただくとわかりますが、数詞や数量詞などが述語となるとき、本来その数詞や数量詞が付くべき語は、語順にかかわらず数詞や数量詞が付いたときの形になります。名詞は数詞などが前についてはじめて、その組み合わせのために複数属格などの形を取るはずですが、語順的にその数詞や数量詞が直接前に付いていなくても、付いたときと同じ形が残るのです。
はじめのうちは唐突に複数属格が使われてきて驚くかもしれませんが、慣れてくれば文脈も手伝って複数属格が使われた時点で最後まで聞かなくとも「ああ、いっぱいあるのね」と想像がついてきます。
また、特に「子ども」の数を表すときは集合数詞の方が好まれます。
ですが、これも три дити́ни といっても間違いではなく、問題はないようです。
「~人で」
ついでに集合数詞から作られる(形からは判別が難しいですが)、「~人で」という副詞も覚えておきましょう。なお、「ひとりで」は基数詞の оди́н や одна́ (及びひとまとまりのグループとして「~だけで」を表す時は одні́)を副詞的に使って表されます。
(語頭の в- は直前の語が子音で終わるときは у- になります。)
序数詞
序数詞とは、「~個目の」や「第~の」といった順序を表す数詞です。ウクライナ語では、全ての序数詞は形容詞の形をしており、形容詞型の変化をします。すなわち、性と数によって形が変わります。
性・数・格の変化自体は規則的ですので、男性主格形を代表にとって、何度も唱えて覚えてください。
英語では「第1の」と「第2の」が first と second というふうに、one と two とは全く異なる形になりますが、ウクライナ語でも「第1の」と「第2の」は оди́н や два とは全く異なる形を取ります。
省略してある13から19も -на́дцять を -на́дцятий に変えるだけです。
また、序数詞の中で「第3の」を表す тре́тій のみ、軟変化型ですので注意してください。
пе́рший は「第1の」のほかに「最初の」や「初めての」という意味で用いられることも多いという点と、дру́гий は「第2の」のほかに「次の」や「別の(もう1つ/1人の)」という意味でも用いられるということを頭に入れておいてください。また、この2つは表現としても例えば「まず第一に~~~。次に~~~」や「前者は~~~後者は~~~」といった対比の際にもよく用いられますので、しっかり覚えてください。
なお、大きな数字になるときは、一番下の桁の数詞のみが序数詞になります。