ウクライナ語文法シリーズその33:動詞の活用(第二活用、不規則動詞の非過去形)
今回は第二活用の動詞と不規則動詞の非過去形の活用を学んでいきましょう。第二活用動詞は基本的なところは第一活用と共通する上、第一活用ほど活用のバリエーションが分かれるわけではないですし、また不規則動詞もごくごく少数ですので、頑張りましょう!
第二活用動詞
第二活用の活用語尾をまとめると以下のとおりです。
基本的に第一活用の語尾の -е- を -и- に変えればよいのですが、三人称単数では末尾に -ть がつく点、三人称複数で母音が -я/а- となる点が異なります。
基本変化
多くの第二活用動詞は、不定形で -ити に終わります。第二活用の動詞の変化で重要なのは、基本的に一人称単数で子音の交代を伴うという点です。第一活用の子音幹動詞で出てきたような変化が、多くの場合一人称単数でのみ適用され、それ以外の人称では元の子音が保たれます。
アクセントは移動するかしないか、様々です。
плати́ти 「支払う」(不完)
ходи́ти 「(歩いて)行く」(不完)
носи́ти 「(歩いて)運ぶ、帯びる」(不完)
вози́ти 「(乗り物で)運ぶ」(不完)
пусти́ти 「通す、行かせる」(完)
ї́здити 「(乗り物で)行く」(不完)
語幹末の子音が唇音(б, п, в, м)になっているときは要注意です。第一活用の動詞のところで触れたように、これらの子音は л がついた形に交代します。それだけでなく、第二活用でこれらの子音が語幹末に来る動詞の場合は、三人称複数でもこの音交代が起こることに注意してください。
люби́ти 「好む、愛する」(不完)
топи́ти 「沈める」(不完)
лови́ти 「捕まえる」(不完)
томи́ти 「疲れさせる、苦しめる」(不完)
語幹末の子音が交代できない場合、つまり -н、-р、-л、-ж、-ш、-ч、-щ の場合は、すべての人称で子音はそのままとなります。
дзвони́ти 「(ベルなどを)鳴らす、電話をかける」(不完)
говори́ти 「話す」(不完)
пали́ти 「焼く、タバコを吸う」(不完)
служи́ти 「務める、従事する」(不完)
ріши́ти 「解決する、決める」(完)
ба́чити 「見る、見える」(不完)
不定形が -ати に終わるもの
このタイプの動詞は、不定形が -ати に終わるために一見第一活用に見えますが、実際の活用は第二活用です。これは覚えるしかありません。-ати の直前の子音は硬口蓋音(ж, ш, ч, щ)のことが多いです。
活用自体には特段ややこしいことはありません。
лежа́ти 「横たわっている、横になっている」(不完)
крича́ти 「叫ぶ、大声を出す」(不完)
пища́ти 「キーキー言う、きゃあきゃあ言う」(不完)
спа́ти 「寝る、眠る」(不完)
不定形が -іти に終わるもの
このタイプの動詞はそれほど数は多くないですが、動詞によってアクセントが2パターンある場合があります。
-іти となっていますが活用語尾の母音が -і- になるかといえばそんなことはなく、基本変化とさほど変わりません。
сидіти 「座っている」(不完)
свисті́ти 「笛を吹く、口笛を鳴らす」(不完)
терпі́ти 「耐える」(不完)
ви́сі́ти 「掛かっている、ぶら下がっている」(不完)
次の болі́ти はその意味上、三人称の形しかありえません。
болі́ти 「痛む」(不完)
болі́ти の主語は痛む場所になりますので、常に三人称のみです。用法として、意味上の主語は与格または「в/у+属格」で表されます。
不定形が -оя́ти に終わるもの
このパターンとしては2つの動詞を覚えておけば大丈夫です。接頭辞がついて派生した動詞はありますが、活用のしかたは一緒です。
語幹が -й- で終わっていますので、人称語尾の母音が -ї- になります。
стоя́ти 「立っている、停まっている」(不完)
次の боя́тися には動詞の末尾に -ся という接辞がついています。これは別途解説する 「ся動詞」というものですが、とりあえず今は「よくわからんけどつけとく」くらいの感じでとりあえず活用をそのまま覚えてください。
боя́тися 「恐れる、怖がる」(不完)
なお、三人称の単数及び複数の -ться の部分は -цця と発音します。また、二人称単数の -шся の発音は -сся になりますので、覚えておいてください。
бі́гти
第二活用の最後に、「子音幹」の第二活用動詞である бі́гти を紹介しておきます。
第一活用の子音幹動詞でもそうだったように、語幹末の子音がすべての人称で交代しています。
бі́гти 「走る」(不完)
不規則動詞
ウクライナ語の不規則動詞は非常に少数で、基本的に3つしかありません。これらに接頭辞がついたり、別の接頭辞がついたりして派生している動詞も同じ変化となります。人称語尾がこれまでの活用とはかなり異なるものになっています。
三人称複数の語尾に注目すると、да́ти は第一活用型、ї́сти と відпові́сти́ は第二活用型と言えるかもしれません。
да́ти 「与える」(完)
ї́сти 「食べる」(不完)
відпові́сти́ 「答える」(完)
відпові́сти́ のタイプには他に、接頭辞が変わった опові́сти 「話す、物語る」(完)や розпові́сти́ 「詳しく話す、語る」(完)、допові́сти́ 「報告する」(完)などがあります。
以上で動詞の非過去形の活用はおしまいです。一部少々マイナーな活用パターンは漏れているかもしれませんが、これでほぼすべての活用は抑えてあるはずです。これらのパターンがひとたび身につけられれば、少々例外的な活用パターンを持つ動詞に行き当たっても、それほど苦も無く覚えることができるでしょう。
次回は未来時制の表し方についてまとめたいと思います。お疲れ様でした!