自信が生んだ落ち着きと余裕。「勝てば甲子園」の一戦を制したのは―(2019年度秋季近畿大会準々決勝【明石商-大阪桐蔭】試合回顧)
こんにちは、じーやまです!
今回は10月27日(日)に佐藤薬品スタジアム(奈良)で行われた、2019年度近畿地区高校野球大会・準々決勝の明石商-大阪桐蔭戦について、試合レポートを書いてみようと思います!
近畿地区に与えられたセンバツ出場枠は6つ。
勝つのは春夏連続甲子園4強、悲願達成にむけて負けられない明石商か。
それとも、夏の覇者・履正社を倒し、覇権奪還を狙う大阪桐蔭か。
勝てばセンバツ当確の一戦を制するのは―。
…ということで、今回も長文かつ拙文になりますが、最後まで読んでいただけると幸いです!
※選手名は敬称略とさせていただきますので、ご了承ください。
目次
1.試合経過
―⑴大阪桐蔭の“らしくなさ”が目立った序盤
―⑵3回裏の同点劇~我慢の中盤戦
―⑶6回裏の攻防~最終回へ
―⑷白熱の最終回~試合終了
2.勝負を分けた3つのポイント
3.センバツに向けて
1.試合経過
早朝に雨が降った影響もあり、厚い雲に覆われた空はどんより重く、羽織っていた上着を思わず握りしめてしまう肌寒さの中、プレイボールを迎えた第一試合。
内外野ともに試合開始を待たずして満席。
立ち見客も後を絶たないほどの注目を集めた一戦のスターティングメンバ―は以下の通り。
先攻:明石商
1.来田(中)
2.井上(遊)
3.植本(一)
4.福本(右)
5.宮城(二)
6.福井(左)
7.名村(捕)
8.井崎(三)
9.中森(投)
後攻:大阪桐蔭
1.池田(中)
2.伊東(遊)
3.西野(三)
4.仲三河(右)
5.船曳(左)
6.加藤(二)
7.前田(一)
8.清水(捕)
9.藤江(投)
【大阪桐蔭の“らしくなさ”が目立った序盤】
勝てば甲子園という一戦。
独特な緊張感の中、試合は初回から動きます。
1回表、明石商の攻撃は先頭の来田が四球で出塁すると、2番井上が送り、一死2塁のチャンスを作ります。
大阪桐蔭の先発は左腕エースの藤江星河。
初戦の立命館守山戦では、3回を1安打5奪三振無失点に抑える好投を見せましたが、この試合ではボールにばらつきが目立ち、苦しい立ち上がりとなりました。
続く3番植本は外のスライダーで空振り三振に仕留めるも、続く4番の福本綺羅がカウント1-2からの4球目を叩き、センターの右へ適時三塁打。
明石商が1点を先制します。
福本が打ったのはインコースのストレート。
一つ前のカウント1-1からの球は、ベース手前でバウンドするスライダーに体勢を崩され空振り。
先頭打者に四球を与えるなど、藤江に不安があったのも確か。非常に難しい場面ではありましたが、カウント的にも余裕があったこと、スライダーに完全に合っていなかったことを踏まえても、ストレートで無理にストライクを取りに行かず、様子を見てもよかったのではないかと個人的には感じました。
さらに2回に入っても藤江の投球は安定せず、2つの四死球を与え、二死1.2塁のピンチで打席には1番の来田涼斗。
カウント3-2からの7球目を捉えた打球は、定位置よりやや後ろに守っていたレフトの前へ。
大阪桐蔭のレフト・船曳はこの打球に対し、ダイビングキャッチを試みますが、後逸して2点タイムリーに。
明石商が2点を加え、3-0としました。
この場面、まだ序盤で1点差、さらには相手が春夏の甲子園で計3本塁打を放った強打者の来田であることを踏まえ、外野手は定位置より後ろ。単打での1点は最悪OK、長打警戒のシフトを敷いていました。
にもかかわらず、無理なプレーで結果2点を与えてしまったことについては、どこか大阪桐蔭に“らしくなさ”を感じました。
それだけプレッシャーのかかった試合だったということでしょう。
【3回裏の同点劇~我慢の中盤戦】
試合は3-0のまま、3回裏の大阪桐蔭の攻撃。
明石商の先発は中森俊介。
最速151キロのストレートにスライダー、更にチェンジアップを操り、1年夏から甲子園で活躍。
旧チームではエースとしてチームを春夏連続甲子園ベスト4に導くなど、能力面、実績面含め、現時点では全国NO.1投手と呼んでも差し障りない好投手です。
そんな中森ですが、1.2回は快投を見せるも、3回裏の二死から1番の池田に死球を与えます。
続く2番伊東が右安を放ち、二死1.2塁としたところで打席には3番西野力矢。
初球、2球目の低めの変化球を見極めると、3球目のやや浮いた外角のストレートを捉え、ライトへの同点スリーラン。大阪桐蔭が試合を振り出しに戻しました。
西野は180センチ95キロという堂々たる体躯、豪快なスイングから如何にも強打者という雰囲気。
しかしながら、履正社の岩崎、さらに前述の中森という全国屈指の好投手を相手に三振0、さらに空振りは僅か1つと、選球眼に優れ、甘い球を逃さない実戦向きの素晴らしい打者という印象を受けました。
試合はその後、両投手とも出塁は許すも、相手のミスに助けられることもあり、何とか踏ん張り、3-3の同点のまま試合は6回に突入します。
【6回の攻防~最終回へ】
6回裏、大阪桐蔭の攻撃は一死から4番仲三河がヒットで出塁。続く5番船曳が四球を選び、一死1.2塁のチャンスを作ります。
中森はこの回先頭の西野にも3球連続ボールを与えるなど(結果は三ゴロ)、イマイチ制球が定まらない印象。すかさず守備のタイムをとります。
打席には本日2打数2安打の6番加藤。
カウント1-1からの3球目、外のスライダーを粘り強くはじき返し、セカンドへ進塁打を放ちます。
状況は二死2.3塁と、依然としてピンチが続く中、明石商の狭間監督は再び守りのタイムをとります。三度しか取れない守りのタイムを、2連続で使うほど重要な場面であったことは間違いないでしょう。
しかし、7番前田への4球目が暴投となり、思わぬ形で大阪桐蔭が勝ち越し。4-3とします。
結果として、加藤の進塁打が生きた形となりました。
2死3塁とピンチは続きましたが、ここは中森と明石商の守備陣が意地を見せ、前田を遊ゴロに打ち取ります。
その後は両エースが0に抑え、試合は最終回へ。
【白熱の最終回~試合終了】
最低でも同点、更には逆転を目指したい明石商は9回表、先頭の6番福井が初球を叩いて左安。無死1塁とします。
続く7番の名村は2球目を送りバント。
打球は投前に転がり、セカンドに投げてもアウトになるかもしれないタイミングでしたが、投手の藤江は一塁を選択。同点のランナーを2塁に送ります。
8回までに5四球を与えるなど、苦しい投球が続いた大阪桐蔭のエース藤江。
球数も100球を超え、疲労もたまっているはず。
しかしここで藤江がエースの意地を見せます。
一死2塁から8番の井崎をインコースのストレートで見逃し三振。
更に、9番の中森を外の球で追い込むと、フルカウントから最後は再びインコースの真っ直ぐで見逃し三振を奪い、ゲームセット。
激戦を戦い抜いた両チームを讃えるように、溢れんばかりの日差しが差し込む中、大阪桐蔭が明石商を4-3で下し、センバツへの切符をほぼ手中に収めました。
ランニングスコアは以下の通り。
明石商業 120 000 000|3
大阪桐蔭 003 001 00×|4
(明)中森-名村
(桐)藤江-清水
本塁打:(桐)西野③
2.勝負を分けた3つのポイント
手に汗握る大熱戦となった準々決勝ですが、勝負を分けたポイントは3つあると僕は考えています。
1つ目は、3回裏の死球が生んだ中森のわずかな動揺。
好打者である池田陵真、仲三河優太を三振に斬ってとるなど、盤石の立ち上がりを見せた中森。しかし、10月21日のサンケイスポーツの記事(※)によると、ここ最近投球フォームが定まらず、苦しんでいたそうです。
※https://www.sanspo.com/baseball/news/20191021/hig19102113180003-n1.html
そんな中、3回裏ツーアウトの場面で投じた一球がすっぽ抜け、右打者である池田の背中に直撃する死球に。
すかさず内野手が声をかけるものの、動揺を抑えることが出来ず、スライダーが2球連続低めに外れ、カウント2-0。
続くストライクを取りに行った真っすぐを西野に完璧に捉えられ、同点被弾。
これが1つ目のポイントだと僕は考えています。
2つ目は、明石商の5〜8回の拙攻。
大阪桐蔭の先発・藤江は大阪府大会決勝の履正社戦も然り、球数が100球を超えかかった中盤以降に失点するケースが多く、秋に入ってから公式戦での9回完投の経験はなし。
この試合も4回までに77球を投じる苦しい投球になりました。
しかし、明石商業が5~8回に投げさせた投球数は前半の半分以下となる35球。
特に6回は、四球で出たランナーをバント失敗で送れず、さらに続く打者がバスターエンドランを仕掛けるも、セカンドへのポップフライとなり、1塁ランナーが戻れず併殺打に。
試合巧者の明石商と言えども、夏の甲子園で準決勝まで勝ち進んだこともあり、まだ新チーム発足から僅か2か月。
拙攻と言わざるを得ない中盤以降の攻撃が、相手投手の藤江が最後まで余力を残せたことに繋がったと言えるでしょう。
これが2つ目のポイントです。
3つ目は9回表のバント処理に見えた大阪桐蔭の落ち着きと余裕
9回表無死1塁からの7番名村の犠打は投手藤江の真正面。
客観的に見て、送球ミスさえなければセカンドでもアウトが狙える打球でしたが、藤江は落ち着いて一塁へ送球しました。
1点差の9回表。同点のランナーを2塁に送ると、当然相手にとってはチャンス、自軍にとってはピンチとなります。
それでも、万が一ミスが発生した時に逆転のランナーの出塁を許してしまうこと。
さらには、それによって一打で試合の流れを変えられるスター性を持つ1番来田に高確率で打順が回ることを考えると、「最悪1点はOK」という判断に間違いはありません。
さらに、2死となり9番中森を迎えたところで、外野陣はやや後ろへ。
ツーアウトということもあり、セカンドランナーが思い切ってスタートを切れることを踏まえての「1点OK」の意識を保ちつつ、フライでアウトを取れる範囲を広げるポジショニングであり、ここにも大阪桐蔭の状況判断能力の高さ、落ち着きが見て取れました。
また、それが出来るのは9回裏、そして延長に突入しても競り勝てるだけの打線への信頼があってこそ。まさに自信が生んだ落ち着き、余裕と言えるでしょう。
さらに、この場面で光ったのは捕手清水の冷静な判断力と声かけ、さらにはインコースを上手く使った強気のリード。
大会前に府大会で主にマスクを被った吉安遼哉が近畿大会前に故障で離脱。
急遽スタメン出場することになった清水でしたが、序盤こそ先に述べた通り、多少焦りが見られたものの、中盤以降の守りは見事。
9回表も、バント処理時の好指示やその後の間の取り方、さらに頻りにジェスチャーを加えながら状況確認の指示を送るなど、ここぞの場面での落ち着きは素晴らしいものがありました。
ということで、以上3つが僕が考える勝負を分けたポイントです。
3.センバツに向けて
勝てばセンバツ当確という一戦で僅か1点の差で涙をのんだ明石商。
しかし、近畿地区に与えられたセンバツへの出場枠は6つ。
兵庫県大会2位通過という部分がネックにはなりますが、この試合の内容と他試合の結果を踏まえても、明石商の出場は濃厚であると個人的には思っています。
今日はあと一本が出ない展開が続きましたが、ここぞという場面で絶対に好機をモノにする旧チームのようになれるかどうか。
冬場の成長に期待です。
対する大阪桐蔭はセンバツ当確、さらには準決勝進出。準々決勝の「智辯対決」を制した智辯学園との対戦が決まりました。
府大会決勝、さらにこの試合を見る限り、現時点のチーム力なら近畿大会、更には神宮大会制覇も十分可能だと僕は思っています。
そのような意味でも、これから先の戦いから目が離せません。
ということで試合回顧はこれにて終了。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
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