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なぜサウナ室では音に敏感になるのか?|サウナと音の関係性を考察してみた

サウナにおいて「音」という要素を重要視する方が多いことに気づいた。

「熱気浴」を行うサウナで「音」に対するこだわりが数多くみられることからもサウナにおいて「音」は心地よくサウナを楽しむために必要な要素ではいないかと思い、サウナ室で聞こえる音とサウナ浴の気持ち良さについて考察をしてみたいと思う。

「サウナ」と「音」の関係性について知ることによって、より「ととのう」ことができる・・・はず。


■なぜサウナ室では「音」が気になってしまうのか

「音は空気中を移動する目に見えない振動である」

あらゆる「音」に関する現象は「空気中」を移動する「振動」によって起こり、サウナ室でも例外はありません。

TVが無く、BGMが設定されていないサウナ室にいる時、まぶたを閉じて耳を傾けると様々な音が聞こえることでしょう。

・自身の呼吸音
・サウナ室の扉の開閉音
・サウナストーブの可動音
・サウナストーン が焼ける音
・ロウリュ時の水が蒸発する音
・サウナ室外の人の会話や水の流れる音
・サウナ室で使われる材質の軋む音
・人から発せられる音(汗を拭く、身体を掻く、呼吸)
・会話やひとり言

テントサウナであれば川の流れる音、風の音、鳥の鳴き声、虫の鳴き声など自然の音も聞こえることでしょう。

サウナ室にいると普段なら気にもしない小さな音も、なぜか耳に入り音に気を取られて集中できない経験をしたことがある方も少なくはないのでしょうか?

なぜ、サウナ室では小さな音すら耳に入り、気になってしまうのか。

実は音には「温度」「湿度」によって聞こえる音の速さや大きさに違いが生まれる特性があり、その性質からサウナ室ではいつもよりも鮮明に音が聞こえやすくなる傾向があると思われます。

そしてサウナ室だからこそ「音」に対して敏感になり、小さな音に心地よさを感じ流ことができるのです。


■温度と音

空気中に伝わる音は「温度が高くなればなるほど速く伝わる」性質があります。

なぜ温度が高いと伝達速度が上がるのかというと、空気中の温度が高い方が空気分子が激しく動き回るため、隣の分子に波を伝達するのが速くなるからです。

つまり、サウナ室では温度が高い状態が維持されており、空気分子が激しく動き回っている環境となるため音が速く耳に届くのです。

また、遠くの音が耳に届く要因として温度に加えてサウナ室の構造も影響があると考えられます。

熱は高いところに集まる性質があり、サウナでは段が下がれば下がるほど温度が低くい傾向にあります。

気温が高いと音の伝達が速くなる性質と、上段に行けば行くほど熱くなる性質が組み合わさることにより、音の波は高い温度に向かって屈折します。

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※Weathernews「気温が関係あり?音が遠くまで聞こえる理由」参考

温度が高いと音は速く伝わるため、低い温度帯で発生した小さな音も、サウナ室上段の対角線上にいる人にも聞こえるというわけです。


【まとめ】
温度が上がれば上がるほど「音」は素早く伝達される。
また、天井付近の温度が高い際には音は遠くまで届くようになる。


■湿度と音

ドライサウナの場合、湿度は10%前後に保たれており、高温低湿がサウナの特徴です。ロウリュを行うことで瞬間的に湿度を高くすることで熱伝導を高め、瞬間的に体感温度を上げることはあるが、基本的に低湿であることが多いです。

音の伝達速度は湿度が高くなればなるほど速くなります。

湿度が高くなり空気中の水分量が多くなると振動する物質が多くなることが要因です。

ただし、これは低音域の音に限り、低湿の時は高音域の音がよく聞こえるようになります。

高音域の音は振動幅が少なく、エネルギーを持っていない状態なので、水分を持った空気に抵抗する力がないため吸収されてしまいます。

そのため湿度が高い状態で高音と低音を同時に鳴らすとこもった音になってしまうわけです。

サウナ室は湿度が低い空間のため音の鳴りが良いと推測されます。

そのため通常より音がよく聞こえるようになるのです。


【まとめ】
湿度が低いと音が水分に吸収されず聞こえやすくなる


■サウナと音の関係

サウナ室は高温低湿のため「音」の伝達速度が速く、遠くまで届き、小さな音も水分に吸収されず振動が耳まで届く環境であると言えます。

つまり、サウナ浴中に発生した音は小さな音でも耳に届くため、通常時よりも音に敏感になりやすい状態にいることになります。

サウナ室にいると小声での会話も良く聞こえてしまうのは高温低湿の環境が大きな要因なわけです。

逆にサウナ室内ではいつもよりも音に敏感なため流れてくる音が心地よいとリラックス効果が高まり、精神的にも落ちつく効果が得られると想定されます。

また、いつも以上に音が聞こえる環境であるためBGMで流れている音楽やTVの音声は小さめに設定することが理想と言えるでしょう。過剰に音が耳に届く環境では居心地の良さを演出するための「音」が不快な音になってしまうからです。

さらにサウナ室での会話も想像以上に周りに聞こえていることも配慮する必要があります。聞かれたくない会話はサウナ室でしないことが賢明かもしれません。

また、良く聞こえるためサウナ室での会話自体は外よりも集中できるとも言えます。フィンランドにはサウナ室で接待を行ったり、サウナ室でコミニケーションを楽しむ文化がありますが、サウナ室では「会話に没入しやすい」環境が整っていることも文化の発展に寄与する要因なのかもしれません。

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ロウリュの音をサウナ室で聞くと心地よい要因としても「音の聞こえやすさ」は関係があると思われます。

水の蒸発する音が耳に空気中の水分というフィルターなしでダイレクトに届くため、体感的には「ヘッドフォンで高音質の蒸発音を聴いている」状態に近いです。

自然の音には、ストレスを軽減するセロトニン分泌を促進する働きがあります。 心地よいと感じたりしている状態のとき、セロトニンが分泌され、自律神経系や免疫機構、代謝機能などが活性化されることが判明しており、サウナ浴では自律神経も活発な状態になっているため「ロウリュの音」は高いリラクゼーション効果があると想定されます。

サウナ室では「音」を「聴く」ことに対して理想的な環境であり、水が蒸発する自然音のリラクゼーション効果と相性が良く、ロウリュの音を聴くと心地よく感じるのだと思われます。

薪ストーブを熱源とするときに「薪の燃える音」がサウナ室だと心地よく聞こえるのも同じ理由でしょう。

【まとめ】
サウナ室では音が聞こえやすい環境であることを認識する
自然音にはリラクゼーション効果があるためロウリュの音が心地よく感じる
また、薪ストーブも同じ理由である


■まとめ:「音」でととのう

サウナ室では「音」がいつもよりも聞こえやすくなる性質があると思われます。サウナ室における「音」の関係性を認識することでサウナ室内の環境を見直すきっかけや、サウナ室での振る舞いに対して考えるきっかけになるのではないでしょうか。

また、サウナ室で過剰に音に対して反応する方も、音のメカニズムを知ることで逆に「音」を楽しむという新しい楽しみ方を見つけたり、音から受けるストレスを減らすことができるかもしれません。

「音」が良く聞こえるということは「サウナ室で聴く音」はいつもよりも解像度が高く、入ってくる情報も異なる可能性があります。

音を仕事にしている人は「試しにサウナ室で聴いてみる」というのも上質な作品を作るヒントになるかもしれません。
※できるところは限られていますが…

また、「音」をメインにしたサウナ体験を提供するのも良いかもしれません。サウナ室で聴くオーケストラ、サウナ室で聴くテクノ、サウナ室で聴く落語…どれもいつもとは違う風に聞こえ、新しい発見があるかもしれません。

新しいサウナ体験として「音」に拘ってみるのも新しい一歩かもしれませんね。


【捕捉「音の波の種類について】
音の波は縦波で横波ではありません。
空気分子は横波を伝えることができず縦波しか伝えないので音波は縦波になります。

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【捕捉「漢字の使い分けについて】
聞く:音を耳で感じ取る。自然に耳に入ってくる。
聴く:聞こうとして聞く。注意してよく聞く。



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S.Uto
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