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水風呂へ沈む

気がつけば私は水風呂に入る時に「冷たッ!」とリアクションを取らなくなった。

ざぶんっと足から一気に肩まで浸かることに対して躊躇いは無い。

水風呂と私の距離は縮まり、もう恐れる相手では無くなった。

少し寂しいような、嬉しいような…複雑な感情だ。もう以前のように水風呂に対する恐れは抱かないのだから。


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この間、後輩を連れてサウナへ訪れた際に水風呂に入る時の初々しいリアクションを見て、いつからか「水風呂に入ることが普通」なことになったと思いを巡らせる機会があった。

昔は水風呂が嫌いだったのに不思議なものだ。

水風呂に体を沈めていくとスーッと体に電撃が走る。

吸い込む息も水面付近だと冷たく感じ、サウナ後の体にじっくりと冷気が体に溶け込んでいく。

皮膚は熱を逃さないようにキュッと締まり、水と肌の境界線に熱の羽衣が生まれ寒さを感じなくなっていく。

頭が急激に冷えていき、思わず息が漏れる。

私は水風呂を通して生を感じているのだ。


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熱は水風呂の中に溶け込まずに体の中へと混ざっていく。

水風呂から出た時の体は熱を帯びており、寒さを感じることはない。

椅子に深く腰をかけ空を見上げる。

腕を天高く伸ばすと、白い湯気が踊るように燻らむ。

私の体の中にある「熱」が私の内側にある氷塊を溶かし、蒸発させていく時、私の心は調律されていく。

溢れるような情報過多な世界に生きる私は、毒を喰らいながら日々を過ごす。

私にはサウナが必要なのだ。

サウナがなければきっと私は毒に呑まれて死んでしまうのだろう。

私は水風呂へ沈む。

水風呂の底は赤く美しい。



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S.Uto
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