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サウナ浴で重要な水風呂の温度について考える

サウナにハマった人の多くの人が口を揃えて言う言葉「水風呂が最高」

少し前までは「水風呂」を苦手としていた人も自ら望んで水風呂へ入り「気持ち良い」と声を漏らす様になっているのをよく見かけます。

私もその一人でサウナの魅力に取り憑かれてから水風呂の素晴らしさに気づいた口です。

「水風呂を制する者はサウナを制する」

最強の水風呂術を求めて今日もサウナへ・・・

サウナにおける水風呂の歴史

サウナの本場フィンランドでは「水風呂」はありませんが、代わりに「湖」がありました。

人類最初のサウナは、青銅器時代(紀元前1500年~500年)と言われており、サウナ自体が2000年近くの歴史を持つ文化ですが、サウナの発展は自然とともにあり「水」は重要な要素として現代まで伝わっています。

日本における「水風呂」の歴史自体も古く、鎌倉後期の宮廷医師惟宗具俊によって著された「人間関係を重視した医書」である『医談抄』の中に「風呂事」という項目にて水風呂に関する一文があります。

遊戯沈酔ノ人ノ所為ナリ、湊理ヲムシアケテ冷水ヲカケアラハヾ、ヒサシク雑談シテ風ヲ引ナルヘシ』

『医談抄』、国文学研究資料館「新日本古典籍総合データベース」より

「湊理」は皮膚を意味し、文書を直訳すると「皮膚を蒸し上げて冷水をかけて洗う」という形で蒸気浴を行っていたという意味になります。

「水に浸かる」のではなく「水をかける」という形ではありますが、太古から蒸し風呂の後は水を身体にかけることを行っていたと推測されます。

※詳しくはSaunology「水風呂の歴史 -前編-」をご覧ください。

医談抄
通常の医書に記されるのは薬の処方や治療法に関してで、それは太古の時代も変わらないものですが、医談抄はそのような医書とは異なり、天皇や位の高い人にどのようにして医療法を施すかについて書かれた書物。

当時は病は「鬼の仕業」とされていたこともあり、どの様にして医療方を施すのかは重要なことであった。


サウナの歴史の中には必ず「水」が密接に存在していることから「サウナ浴」には水風呂は必要不可欠であり、なくてはならない存在であると言えるでしょう。


水風呂の理想とされる温度を考える

水風呂は一般的に17℃前後であることが多く、20℃以上だとぬるめと言われています。

サウナにおいて水風呂の温度は低ければ低いほどよいと言われていますが、実際に何度ぐらいが適温なのでしょうか?

サウナ王こと太田広氏は水風呂の温度についてこの様に発言しています。

先日、某温浴施設の経営者と水風呂の温度設定についての話しになった。
実はこの水風呂の設定温度の話しは、前の週に某サウナ施設の支配人とも話した話題でもあった。
某温浴施設の現在の水風呂温度は18℃。
〜〜中略〜〜
温度は18℃設定。
サウナーからは「熱い!」と言われる温度である。
最低、16℃以下でないと、サウナ好きは納得しない。
欲を言えば、14℃以下が理想である。

水風呂18℃じゃ火傷するよ!サウナ王が伝授する水風呂の設定温度とは!より抜粋

最低でも16℃が理想的で、サウナ愛好家からすると14度以下であることが望ましいとのことです。

つまり「冷たければ冷たいほど良い」というのはサウナ好きによって発せられた理想とも言えます。


確かに冷たい水風呂はサウナ後において非常に気持ち良く、瞬間的に身体を冷やし熱を一気に閉じ込めてくれます。しかし、15℃以下の水風呂に浸かると「痛み」が生じるため長居することはできません。

この冷たい温度に反応する痛みは「冷痛覚」と呼ばれ10℃以上30℃以下で反応するそうです。

15℃以下の温度刺激は痛みとして感じるということですから、単純に考えると15℃以下の水風呂に入ると「冷たい」を通り超して「痛い」と感じるということでしょう。実際に15℃くらいになるとかなり体感は冷たく、入った瞬間「痛い」と感じることもあります。

Saunology「温度感覚と痛み -水風呂編-」より抜粋


水風呂の温度は冷たければ冷たいほど長居はできませんが、その分「あまみ」は出やすくなると感じることが多いです。

Saunologyさんでは「水風呂に浸かる時間」について、瞬間的に冷やすことで表面は急激に冷えるが身体そのものは冷えておらず、じっくりと冷えていく感覚が身体に起きると推測しています。

冷たい水風呂に短時間入り、休憩をすると、身体の中はまだ冷えていないので血流量を増やそうとし、表面は冷たいので細い血管は締まっているという状況になり、結果的にじわじわという感覚が身体に起こると考えられます。

一方、温度が高めの水風呂にゆっくり浸かった場合、身体の中も比較的温度が下がってきて、冷たい水風呂に入ったときよりも血流は激しくないのかもしれません。

Saunology「温度感覚と痛み -水風呂編-」より抜粋

水風呂の温度によって身体の冷やし方は異なり、低すぎる温度帯(15度以下やシングル)では長時間浸かることとは別で、冷やし方にも遊びが生まれます。

サウナ愛好家たちが低い温度を望むのは、水風呂に対してできるアプローチの奥深さが低い温度帯であればあるほど身体に如実に影響が出るので「面白い」と感じているからではないかと思います。

※実際私もその一人です。


サウナストーブのメーカーであるMETOSは自身のWebサイトにて水風呂の温度について17℃が程よく最もサウナ好きから要望の多い温度と述べています。

水風呂の温度は、お客の要望に合わせて決めている所が多いようです。15℃では冷めた過ぎるし、20℃ではぬる過ぎ、大体17℃位に設定されています。

サウナの正しい入り方」より抜粋

冷たすぎると「心地よく水風呂に浸かることができない」

よく考えてみると「冷たすぎる」ということはリラックスするという意図に対して間違っているかもしれません。

例えば池袋にある関東最大のサウナ施設「かるまる」にはサンダートルネードと呼ばれるシングル水風呂があります。

その効果はすざましく一桁温度の水風呂にジェット水流を発生させ一気に身体を冷やすというもの。

私も体験したことがありますが「凍えるほど冷たい」です。

これに対して「露天にある二桁温度の水風呂も近くに欲しい」という意見を聞いたことがあります。

この様な意見が出る理由として、シングルは冷たさゆえに心地よく水風呂を味わうことができないからだと推測します。

ととのえ親方こと松尾大氏による著書「Saunner Book」では水風呂の理想の温度は16.5℃と述べています。

ちなみに人間の体には、精米活動の危機判断に用いられる温度センサーがいくつかある。
〜〜〜中略〜〜〜
心地いいと感じるかどうかの温度センサーの境目は16.5℃と言われている。実際、僕はこの16.5℃くらいの水温が、いちばん気持ちいいと思うんだよね。

松尾大「Saunner Book」より抜粋


他にも水風呂に関して多くのプロサウナーやサウナブログ、サウナ施設やサウナ設備のメーカーによって発信されていますが、多くは18℃はぬるく、15℃以下は冷たいという意見が多くみられることから「水風呂における理想の温度」は17℃〜16℃であると思われます。

実際に水風呂に入ってみると分かるのですが、水温における「1℃」の違いはかなり大きく、18℃と17℃は別世界です。

ととのえ親方の提言する「16.5℃」は心地よく水風呂に浸かることができる温度帯として指標にしても問題ないのではないかと思います。


まとめ:自身にとって理想の水風呂を求める旅は終わらない

水風呂の良さは温度だけでは語り尽くせません。

水質や水源、湯船の深さや広さ、使われている材質や水風呂までの導線など多くの要素が複雑に絡み合って「理想の水風呂」が出来上がります。

「水風呂メイン」という言葉が広がり、今やSNSでサウナを語る時に「水風呂」の話題は避けては通れず、様々な切り口で水風呂について語られています。

自身の理想とする水風呂について探究する旅に終わりはありません。

常に追求し続け、理想の水風呂を追い求めましょう。

※ちなみに私が理想とする水風呂の水温は16℃です。
  理由は浸かる時間も1分は確保したいから・・・



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S.Uto
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