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伝統芸能・民俗芸能 × デジタルマーケティングを考える|【5300文字】
伝統・民俗芸能の課題
伝統・民俗芸能は国が保有する歴史的価値のある財産であり、後世まで語り継ぐ価値のある文化です。
「歌舞伎」や「能」「文楽」のように日本を代表する伝統芸能では代々技術が伝承され続けており、能に至っては室町時代から演目が引き継がれているほど長い歴史を誇ります。
地域に根付く民俗芸能も同じく数百年の歴史を持つものもあり、神楽や囃子、舞踊は歴史的価値の高い文化です。
日本にとって価値のある芸能ですが、現実問題として「担い手不足」「需要の低下」「収益に繋がらない」といった大きな壁があり、存続の危機に瀕しています。
認知度がある伝統芸能でも同等の課題に悩まされていることもあり、日本が世界に誇る文化が数年後には絶滅にまで追い込まれる可能性もゼロではありません。
また、多くの民俗芸能に関しては需要の低下や収益に繋がらないことからも「アマチュア感」が強く「内輪ノリ」が蔓延していることもあり、人離れの悪循環が生まれています。
さらに民俗芸能は情報発信をする、記録を残すといった習慣が無いことから「興味があっても知ることができない」状態にあり、深刻な状態です。
そのため早急に「知ることができる環境」の構築が必要です。
デジタルマーケティングによって解決できる課題
マーケティングとは「モノやサービスを顧客に買ってもらえる流れや仕組みを作ること」を指し、デジタルマーケティングは「デジタル領域」において実施するマーケティング活動となります。
※マーケティングの定義について「SEOやWeb広告を学んでも「マーケティング」ができるわけではない」でも紹介しております。
デジタルマーケティング活動を行うことで以下の効果が期待できます。
・芸能の存在そのものの認知
・演目内容の説明や見所解説
・プロの技を分かりやすく紹介
・担い手の募集やスタッフの募集
・「希少性」や「価値」を伝える
・チケットの購入や寄付等の訴求
・会場案内や当日のタイムスケジュール
・他の芸術分野との共同でイベントの開催…など
デジタルマーケティングはWebサイトやSNS、アプリといったデジタルテクノロジーを活用して「選んでもらうための仕組み作り」を行う活動を指します。
伝統芸能と民俗芸能ではそれぞれ注力すべき箇所が異なります。
伝統芸能の場合、以下の項目を対策することが重要になります。
「知っている人の興味関心を爆発させる」
「鑑賞するアクションを起こさせる」
「演目を観るハードルを下げる」
「感動をシェアしやすい環境を作る」
「役者や演者のプロフェッショナルさを伝える」
「情報を発信し続ける環境の構築」
伝統芸能は民俗芸能と異なり「存在そのものはすでに認知している」傾向にあります。
そのため「知っている人」に対して「へー面白そうじゃん」「おぉ…こんなに凄いの?」と感情を揺さぶることが重要となりますが、デジタルマーケティングの手法を活用することで関心を惹くことができます。
民俗芸能の場合、以下の項目を対策することが重要になります。
「存在を知ってもらうための足掛かりを作る」
「民俗芸能側から能動的に存在をアピールする」
「興味関心を惹く世界観をブランディングする」
「地域密着であることを武器に外部へ発信する」
「体験という価値を提供する」
「観に行くハードルを下げる」
伝統芸能と異なり「存在を認知されていない」というハードルがあります。
予算の関係上、数百万規模の予算をかけて大規模なキャンペーンを行うこともできないため、SNSやブログ、動画コンテンツを活用してコアな層の定着と、新規層への話を少しづつ広げていく戦術が必要です。
また、伝統工芸や和楽器奏者にも同じような課題が挙げられます。
「知ってもらうこと」は想像以上に大切
どんなに優れたモノでも、誰も知らなければ売れることはありません。
多くの人は「良いものを作れば知ってもらえる」「良いものを作れば見てもらえる」「良いものを作れば買ってもらえる」と考えてしまう傾向にあります。
頭では「そんなことはあり得ない」と分かっていても「自分は別」と思ってしまうのが人間の性です。
「知ってもらう」ためには『情報を発信する』『広告を打つ』『人に会ってPRする』『メディア露出』などが挙げられますが、デジタルを屈指すれば低予算で実現することもできます。
【デジタルマーケティングの手法を用いて「知ってもらう」方法】
・オウンドメディア(ブログ)で情報を発信する
・YouTubeなどのプラットフォームから動画を配信する
・Web広告(リスティング広告・ディスプレイ広告など)に出稿する
・SNSで能動的に情報を発信し、フォロワーとの関係性を構築する
・メディアサイトにコンテンツを寄与する
・インフルエンサーとコラボをする
「頭の中に存在が居座ること」を目標に実施することが重要です。最初から「認知」や「興味関心を惹く」ことは難しく、人によって好きになるきっかけも異なります。だからこそ、存在を頭の片隅に残すことが大切です。
「知ってもらう」ためには情報を様々なチャネルから継続的に発信し続ける必要があります。日々の積み重ねが「知ってもらう機会の増加」に繋がっていきます。
ただ、最初は成果が見えずらく「こんなに頑張ったのに…」と心が折れてしまいがちです。
そのため、少しでも成果が出るタイミングを早めるために「戦略」を練ってから「認知施策」を行いましょう。
また、その際の受け皿となるWebサイトは最低限「モバイル端末に対応しているデザイン」であること「文字サイズが小さすぎない」こと「表示速度が遅すぎないこと」だけは守りましょう。
予算が少ない場合はWebサイトに数百万円も用意できないため、WordPressでテンプレを基に簡易的に(かつ綺麗に)作成をするか、無料ブログなどを活用するのも手です。
※予算をかけずに簡易的(でもしっかりしている)メディアを作りたい場合はご相談くださいませ。
SNSの発信は「共感」と「驚き」の2軸
伝統芸能や民俗芸能でSNSの活用は浸透しつつあります。
歌舞伎や能、狂言などの伝統芸能では役者だけでなく囃子方もSNSを活用している傾向にあります。
民俗芸能も保存会単位でSNSを開設し、情報の発信をしていることから「SNSは最も慣れ親しんだチャネル」と言えます。
実際にSNSをやってみると想像以上にフォロワーを増やすことが難しいことに気づいた方も多いのではないでしょうか?
もともとニッチな界隈でもあるため全体的な母数は少なない傾向にあることも要因の一つですが、何よりも「存在に気づいてもらえない」ことがフォロワー数を増やしにくい要因となっています。
伝統芸能・民俗芸能の界隈でSNSを盛り上げていくには""協力すること""も重要な要素であるぐらい、フォロワー数を増やすのは難しい傾向にあります。
また、発信する情報の質も大切です。
重要なのは「共感を生む」「驚きを生む」ことです。
共感:「分かる!」と関心を生むこと。「何かしらの感情を動かす」ことが拡散を生みます。
驚き:「ええ!」と知らなかった事柄を教えること。「知らなかった」と知的欲求を満たすことがポイント。
また、業界にとっての常識は外部から見れば「未知なこと」なので当たり前のような情報を継続的に発信することが重要です。
「よく分からない」壁を越える「触れ合う機会」を作る
「知ってもらう」ことだけに注力するのではなく「触れ合う機会」も重要です。
「百聞は一見に如かず」と言いますが、「百見は一触に如かず」です。一度体験してしまった方が理解を得るのは最速最短で済みます。
伝統芸能・民俗芸能でのデジタルマーケティング活動内の目標は「知ってもらうこと」「興味を抱いてもらうこと」「触れてみたいと思うこと」「観に行ける機会を知ってもらうこと」「体験した後の感想を共有してもらうこと」の5つに分かれます。
「触れ合う機会は」体験会や講演会、書籍の販売といったリアルイベントから「YouTube等のライブ配信」「電子書籍の販売」「音源の配信」「ゲームの開発」といったデジタルコンテンツまで幅広く複数のチャネルで提供できます。
これらをWebサイト、オウンドメディア、SNSを活用して情報を発信し、SEO、広告、PRなどの手法で拡散を助長します。
また、インフルエンサー(著名人や芸能人)を活用したイベントやSNSコンテンツによる拡散といった方法も「体験」へと繋がります。
優れた過去のコンテンツ(映画、ドラマ、書籍、ゲーム、話題になったニュースなど)があれば再評価する形で表に出すのも「体験」の提供につながります。
素晴らしい文化だからこそ、多くの人に好きになってもらいたい
私は、伝統芸能や民俗芸能が好きで、独自に調べて理解を深めるのを趣味としていますが、伝統芸能はともかくとして民俗芸能は「知る」だけでも一苦労します。
情報がネットに存在していないため、中々実情を掴めないし、映像コンテンツもしっかりとしたコンテンツで提供されていることは少ないです。
「収益」ならないことも予算も時間も当てることができない大きな要因であると推測できますが、素晴らしい芸能であることを発信しなければ「収益が生まれる機会」すら作り出すことができません。
マーケティング活動は「投資」のため効果がすぐ出るわけではありませんが、行動を起こさなければ何も得られません。
難しいと目を逸らしたくなる気持ちも分かります。
もし、本気でマーケティング活動をしたい保存会や団体がいる場合、相談であれば無償でお受けしますのでお声掛けください。
何か力になれることがあればお手伝いいたします。
補足:事業者にマーケティング依頼する際のポイント
マーケティング活動を行う際は社内で担当者を決めて独自に展開できるのであれば、専門のチームを発足し、運用を開始するのが理想です。
もし、マーケティングに対する知見がある方がいない場合は「外部のマーケターに依頼する」ことも一つの手です。
特に民俗芸能の場合は「予算」も「知見」も少ない上程であることが多いため、フリーランスのマーケターにアドバイザーのような形で「方向性の示す指針」としてパートナーになってもらうといった形が理想です。
また、マーケター側が「伝統芸能、民俗芸能が好き」である点は重要になります。
※もし、相談だけでもしたい場合は私でもお話お伺いしますのでお気軽にお声掛けくださいませ。
外部の事業者に依頼するときは以下の点に注意をしてください。
① 特定のソリューションにしか精通していない
デジタルマーケティングの支援会社や広告代理店に依頼をすると「専用のサイトを作成して、メディア展開しましょう」「伝統芸能・民俗芸能の魅力を伝える高品質な動画を作成して広告展開しましょう」と言った予算以上の大掛かりな提案をしてくる可能性があります。
少ない予算や人材でも実施できるマーケティング施策の提案が可能な規模感となると支援会社よりも「フリーランス」がオススメです。
ただし、数百万規模の予算を確保できるのであれ支援会社に依頼をする方がハイクオリティのクリエイティブでマーケティング活動を促進することができます。
② 予算や規模に合わせて最適なパートナーを選びましょう
マーケターはマーケティング支援会社や広告代理店、ツールのベンダー企業だけではありません。
個人で活動をしているフリーランスのマーケターもパートナーの対象となります。
特に予算が確保できない時は、フリーランスの方に相談してみるのも一つの手です。
予算と相談して、適切なパートナーを選びましょう。
③ 課題が明確になっていない場合は慎重に!
「何か改善をする必要があるが、具体的に何をして良いのか分からない」場合は課題の抽出から相談できるマーケターにお願いするのが理想です。
「アドバイザー」のような形で入ることができるマーケターとご一緒することができれば、問題の提示から具体的な解決方法まで二人三脚で進めることができます。
もし、何かマーケティング活動の中で不安点や気になる部分、相談したいことがあれば気軽にご連絡いただければ幸いです。
私でよろしければ無償でお話しをお伺いさせていただきます。
【パーソナル】
名前:Uto
職業:Webマーケティングコンサルタント
Webライター、Webマーケスクール講師
趣味:サウナ、アート鑑賞、一人旅、音楽
ラジオ、伝統・民俗芸能について調べること
特技:和太鼓、フットワークが軽い
【連絡先】
メールアドレス:yy.edih.xx@gmail.com
Twitter:@hd2OimM
Web制作会社のマーケティング支援部門でWebマーケティングコンサルタントとしてSEO、広告、コンテンツ制作、LPO、EFOなどの手法を元にお客様のWeb戦略のサポートを担当。提案・分析・企画・施策の実施・効果測定まで全て一気通貫で対応できることが強み。その後、Web接客ツールのベンダー企業にカスタマーサクセスを提供するコンサルタントを経て、現在フリーランスとして活動中。
何かございましたらお気軽にお声掛けください。
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