SEO担当者なら知っておきたい「2021年のSEOトレンド」|【15,000文字】
SEO(検索エンジン最適化)は検索エンジンにおいて検索結果(SERP)の上位に表示されるように、Webサイトを最適化するWebマーケティング施策の一つです。
事業者さまのWebマーケティング戦略のお手伝いをするコンサルタントとして活動をする中で、2021年以降のSEOは何を重視すれば良いのか?という質問をよくいただきます。
結論から申し上げますと、Googleが常に掲げている「ユーザーのニーズを汲んだ質の高いコンテンツの提供」が重要になることはこの先も変わりません。
ただ、現在TwitterやInstagramを代表するSNSの普及や、YouTubeを代表とする動画コンテンツの発展、2021年に流行る可能性が高いと注目されている音声コンテンツの登場によってインターネットにおけるユーザーと企業の接点はWebサイト以外にも拡大し続けています。
調べ物をする際も以前であればGoogleの検索エンジンで検索を行うことが主流でしたが、2021年現在では「SNS検索」「動画サイト内での検索」など検索の幅も広がりました。
Webサイトの活用も時代とともに変化し、ユーザー行動の変化や検索エンジンの進化により「質の高いコンテンツの提供」だけたは100点のSEO対策ができなくなってきた現状もあります。
変化の多いSEO業界の中で、今押さえておきたいSEO対策の重要項目となるトレンドを紹介します。
SEO対策をする中で何かヒントになれば幸いです。
■モバイル ファースト インデックス
モバイルファーストインデックスはGoogleのインデックス登録とランキングで、モバイル版のコンテンツを優先的に使用することです、
2021年3月現在においてモバイルファーストインデックス(以後MFI)への以降は最終段階に入ったようで、MFIはSEO対策において必須項目になりました。
Web担当者Forum「グーグルがMFIへの切り替えを正式に開始!」より抜粋
実際MFI対策を細かく実施しているWebサイト自体少なく、SEOマーケターでも「レスポンシブデザイン」意外に対策をしたことがない方も少くはありません。
ECサイトやメディアサイトではモバイルファーストな設計は必要不可欠ですし、BtoB領域でもモバイルサイトは重要な要素に繋がることでしょう。
ここではMFI対策として改善策の一例を概要的にを紹介します。
・レスポンシブデザインにする
レスポンシブデザインはMFI対策においてGoogleも推奨している対策の一つです。
MFIにおいてGoogleは以下の要素が適切であるかを重視しているため、MFI対策を前提としたサイトリニューアルをする際は以下の点をチェックすることをオススメします。
・メインコンテンツの表示(画像、動画、リンク)がディスクトップ、モバイルで差異がなく、同等である
・目的地へたどり着ける導線がモバイルでも変わらない
・どのモバイルデバイスでもデザイン崩れが発生しない
・テクニカルSEO対策
検索結果に表示される各種マークアップがデスクトップとモバイルで同等であるか確認することをGoogleは推奨しています。
モバイルサイトを別URLで制作しているWebサイトはメタタグ(titleタグ、descriptionタグ、 robotsタグなど)が同等になっているか、構造化データが同等に設定されているかを確認し、もし差異がある場合は同じにすることもMFI対策になります。
・メタタグの差異がないか
・構造化データに差異がないか
・hreflangの指定が適切にされている。
・robots.txtが問題ない設定になっている。
・rel="canonical"とrel="alternate"の指定で、モバイル版とデスクトップ版の違いが適切に設定されている。
・サイトの表示速度の改善
表示速度はSEOにおいて非常に重要な要素で、MFI対策でも例外ではありません。
1s to 5s the probability of bounce increases 90%.
「ページの読み込み速度が1秒から5秒に増えると、訪問者の直帰率は90%増えます」
Think with Google:"Find out how you stack up to new industry benchmarks for mobile page speed"より引用
GoogleがWebサイトの表示速度に関するユーザー行動との関係性について「ページ読み込み速度の増加でモバイルユーザーの離脱行動が増加する」ことを述べていることから、MFI対策においても表示速度の改善は優先度の高い改善項目であることが分かります。
Slow loading sites frustrate users and negatively impact publishers. While there are several factors that impact revenue, our model projects that publishers whose mobile sites load in 5 seconds earn up to 2x more mobile ad revenue than those whose sites load in 19 seconds.
「ロードが遅いサイトはユーザーをイライラさせ、サイト運営者にネガティブな影響を及ぼします。収益に影響を与えるいくつかの要素が存在しますが、私達の調査ではモバイルサイトの読み込み時間が19秒かかるようなサイトに比べ、読み込み時間が5秒のサイトは2倍の収益をあげました」
Think with Google:"The need for mobile speed: How mobile latency impacts publisher revenue"より引用
表示速度の差で収益にも影響を与えることも報告されていることから、モバイルデバイスから訪問する割合の多いWebサイトを運営している場合、表示速度の改善で直帰率や離脱率の改善へ繋がり、「購入」や「問い合わせ」にも影響を与える可能性があります。
・画像の最適化
画像はWebサイトにおいて重要な要素ですが、モバイルサイトでもその重要性は同等です。
モバイルサイトで表示される「画像サイズ」や「画質」が適切であるか、altタグがモバイルでも適切に設定されているかを確認することをオススメします。
特にレスポンシブデザインが正しく機能していないサイトでは画像の表示幅が縦長になっていたりすることが多々見られます。
・PWAの導入
PWAはWebサイトにアプリケーションのような機能を持たせることができる技術で、モバイルサイトではUX領域にて重要な要素となります。
アプリでは備わっている機能や技術をWebサイトでも使用できるためモバイルユーザーのUX向上やストレス軽減が見込めるだけでなく、アプリと同じ挙動でWebサイトを利用することで高いユーザー体験を提供することもできます。
アプリと同じような機能の例として以下のようなことが可能になります。
・ブラウザを開かない状態でのプッシュ通知
・コンテンツの事前読み込み
・オフライン環境での利用
・GPS機能の利用
※PWAの詳細は後述
・モバイルフレンドリーなサイト設計
レスポンシブデザインを導入しているサイトにありがちなのが「モバイル端末での使用感を重要視していないこと」で、「読みにくい」「使いにくい」サイトが多い傾向にあります。
これはモバイルフレンドリーなWebサイトとは言えず、ユーザーにストレスを与えてしまう要因です。
Googleがモバイルフレンドリーと判断したからといって、ユーザーが実際にサイトを利用する時のUI/UX領域も最適化し続けることでユーザーにとってストレスの無いサイトにすることができます。
①文字サイズが適切である
②画像サイズが適切である
③リンクはクリックしやすい
④サイトの表示領域が適正である
⑤広告がユーザー行動を妨げていない
■コア ウェブ バイタル
2020年にGoogleから発表されたWebサイトにおける最新のUX重要指標が「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」です。
CWVでは「LCP」「FID」「CLS」の3つの要素を特に「重要なもの」として扱っています。
LCP: Largest Contentful Paint
「最大コンテンツの描画」の意味で、メインの要素が読み込まれるまでのページ表示速度を測る指標です。
ブラウザの表示範囲内で、メインヴィジュアルとなる画像・動画の初期表示画面、背景画像、テキストを含むブロックレベル要素、優先度の高いJavaScriptやCSSなど、そのページでメインとなるコンテンツが表示されるまでの時間を表します。
コンテンツの容量が大きいと表示速度に影響を及ぼす。また読み込みの遅さによってユーザーの直帰行動へと結びつく可能性があるため、改善することでユーザー行動に大きな影響を与える可能性があります。
LCPの数値は秒で表し、値が小さいほどUXが良いとされます。
FID: First Input Delay
「初回入力遅延」の意味で、ユーザーが第一印象として感じるサイトのインタラクティブ性や反応速度を測る指標です。
FIDはユーザーがページにアクセスして初めて行動(クリック・タップ・テキスト入力など)をした後に、ブラウザがその行動結果を反応するまでにかかった時間を表しています
ユーザーが目的を達成するために、行動を起こした際のタイムラグによるストレス軽減を目的とするもので、ページにアクセスして初めて行動(クリック等)した後、その行動結果が反映されるまでの時間が早ければ早いほどユーザーへ与えるストレスが軽減されます。
数値はミリ秒で表し、値が小さいほどUXが良いとされます。
CLS: Cumulative Layout Shift
「累積レイアウト変更」の意味で、視覚要素の安定性を示す指標です。
ユーザーがサイト内を閲覧しているときに「意図せぬレイアウトのずれ」がどれぐらい発生したかを、「レイアウトシフトスコア」で表すものです。
レイアウトずれとは、例えばページ内にある画像の読み込みが遅れており、ページ下層にて読み込みが完了した際に、その画像サイズ分画面の表示がずれることを意味します。
ユーザーが起こす「移動」というアクションに対して、表示速度の遅延がユーザーにストレスを与えていないかを重要視するものです。
数値はスコアで表し、値が小さいほどUXが良いとされます。
また、CWVは「ユーザー体験」において数値化できた要素を指標にしたものであるため、3つの指標を改善しただけではUX向上には繋がらない可能性もあるため注意が必要です。
・検索意図を満たす高品質なコンテンツ
・ユーザビリティが高い
・ユーザーニーズの把握・・・など
■ページ エクスペリエンス シグナル
ページ エクスペリエンス シグナルとは、ユーザーがWebページで操作を行った際の、情報そのものの価値以外に関するエクスペリエンス(ユーザー体験)の尺度となるシグナルのことで、前項にて解説した「コアウェブバイタル」もその内の一つとして含まれます。
ページエクスプレスシグナルの一部は既にGoogle検索のランキング要素に含まれており、2021年5月にはコアウェブバイタルも追加される形でリリースされると事前告知がされている状況です。
・モバイルフレンドリー
・セーフブラウジング
・HTTPS
・煩わしいインタースティシャルがない
・コアウェブバイタル
ページ エクスペリエンスは重要ですが、それでも Google は、ページ エクスペリエンスが劣っていても、全体的に価値の高い情報を含むページを上位にランキングするようにしています。
つまり、いくらページ エクスペリエンスが優れていても、コンテンツが優れたページを上回ることはありません。
ただし、関連性が同程度のページが多数存在する場合の検索ランキングにおいては、このページ エクスペリエンスが一段と重要になります。
Google検索セントラル:「ページ エクスペリエンスの Google 検索結果への影響について」より引用
Googleが表明している通り、ページエクスペリエンスは重要な要素ですが、ランキング要素としては「価値の高い情報を含むコンテンツ」が上位に上がります。
SEO対策を行う時の優先度として「コンテンツの品質」を最優先するべきであることは2021年以降も変わりません。
■GA4(Google アナリティクス4 プロパティ)
2020年10月にリリースされたGoogle アナリティクス4 プロパティ(以後GA4)は次世代のGoogle アナリティクスとして発表されました。
【GA4によって変化する3つの新要素】
■アプリとウェブをまたがったクロスプラットフォーム計測
■Googleの機械学習モデルを活用した予測機能の導入
■プライバシー重視のデータ収集
旧Googleアナリティクス(以後旧GA)とGA4との違いは「顧客単位(ユーザー)の計測」「機械学習によるオーディエンスの予測機能」「プライバシー重視の設計」となります。
新しいアナリティクスは、昨年ベータ版として導入されたアプリ + ウェブ プロパティを基盤にしています。
機械学習を軸に、有用なインサイトが自動的に提示されるため、複数のアプリやプラットフォームにまたがって顧客のことを包括的に理解できます。
新しいアナリティクスはプライバシー重視の設計となっており、Cookie や ID に関する制限事項などの業界の変化によってデータに不足が生じた場合でも有効活用できます。
新しい Google アナリティクスなら、将来に備えるために不可欠なインサイトを得ることができます。
マーケティング プラットフォーム 日本版 公式ブログ:「新しい Google アナリティクスのご紹介」より引用
公式ブログでGA4は将来のニーズに対応できるような形で設計されており、「ユーザー行動」を明確にし、よりユーザーファーストなサイト改善が可能になります。
顧客との接点をより包括的に把握ようになった次世代のアナリティクスは従来の「ページ単位」「セッション重視」と考え方自体が異なるため、新しい指標に対して視点を変える必要がアナリストには求められます。
現在SEO対策では「ユーザーのニーズを汲み取った質の高いコンテンツを提供すること」が重要視されています。
GA4を活用することで、顧客行動を把握できることになり、よりユーザーファーストなSEO対策が可能になります。
■SEOライティング
SEOライティングとはSEO(検索エンジン最適化)を意識した記事の書き方で、対策するキーワードの検索意図やニーズを汲み取って文章を書くテクニックを指します。
SEOライティングという概念自体は以前からありますが、2021年ではMFIの促進、GA4の標準化、コンテンツの品質重視がより重要なポイントになるため、「量」を重視したコンテンツでは効果はでず、より「質」を追求したハイクオリティなライティングが技術が必要です。
SEOライティングには以下の点が重要視されます。
・ユーザーファースト
・分かりやすい見出し
・独自性
・専門性
・検索意図やニーズを満たせている
SEOライティングのポイントとして『Google が掲げる 10 の事実』を参照にするのもオススメします。特に「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」は記事企画の段階から意識するべき指標となる言葉です。
1. ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
『Google が掲げる 10 の事実』より引用
■YMYL ・ E-A-T
2020年12月に行われたコアアルゴリズムアップデートが行われました。
世界中のSEO専門家が様々なジャンルのKWでの順位変動がどの領域にアップデートの影響が出ているのかを報告しており、その中でも「YMYL」「E-A-T」という今後のSEO対策にとって重要項目となるキーワードが登場しました。
YMYL:「人々の幸福、健康、経済的安定、安全に影響を与える可能性のあるページ」を指し、Googleの『検索品質評価ガイドライン』で言及されている、”Your Money or Your Life”の略語
E-A-T:Googleが定める『検索品質評価ガイドライン』で「ページ品質評価の最重要項目」とされる項目の頭文字をとったもの。
「質の悪いコンテンツ」は悪い方向に社会問題を引き起こすトリガーとなることがあり、例えば医療や金融、政治やなどの人の生活に直結する内容のコンテンツは人々の幸福、健康、経済的安定、安全に悪影響を及ぼす可能性があります。
YMYL領域のコンテンツを作成する場合は「その分野における専門性の高さ」「その分野における権威性の高さ」「その分野における信頼性の高さ」が重要視され、2017年12月に起きた『医療健康アップデート』を皮切りに毎回YMYL領域の重要性はアップデートされています。
実際にWebサイトや個人ブログ、SNSで発信された医療に関する間違った情報に惑わされ、実際の医療現場のプロの言葉を疑う方も社会問題となっていることもあり、エビデンスの無い情報が人々の生活を脅かす事件も多々発生しています。
コンテンツを発信する側は「不明確な情報」を発信しないように正しいデータを元に、事実に基づいたコンテンツを作成することを心がけることが重要です。
2020年12月に起きたコアアルゴリズムアップデートでも「医療健康」領域の変動が大きくみられ、医療領域の情報を提供しているサイトに多大な影響を与えました。
2021年においてもSEO対策では「YMYL」「E-A-T」の領域は最重要項目で、Google検索エンジンの裏を突くのではなく、正攻法で対策していく必要があります。
■AMP
AMPはAccelerated Mobile Pagesの略称でWebコンテンツを高速で読み込んで表示するGoogleが推奨している手法です。
2015年10月にGoogleとTwitterを筆頭とした業界各社の協力によって生まれたプロジェクトで、AMP HTMLやAMPタグを使用したWebページはモバイル時代のユーザー体験を提供するにあたって重要度の高い技術として注目度の高い領域です。
AMPを実装することで通常のページと比較すると、モバイルページの表示速度が約4倍、データ量が約1/10になると言われており、より良いユーザー体験の提供を可能としています。
特にページの表示速度はGoogleも重要な指標であると表明しており、ページの表示が遅ければ遅いほどユーザーに与えるストレスは高くなり離脱アクションへと繋がります。
Google:Find Out How You Stack Up to New Industry Benchmarks for Mobile Page Speedより引用
ページ表示速度が1秒から3秒になると直帰率が32%増加、6秒になると106%増加、10秒まで遅くなると123%増加すると報告されています。
UX領域が今後のSEO対策で重要な要素となるため、AMPは速度改善としても改善手法として大切です。
■PWA
PWAはProgressive Web Appsの略称で、Webサイトでネイティブアプリのような動作を可能にする仕組みのことです。
MFIが基準となる2021年以降のSEOではモバイルサイトの改善においてPWAは注目されている技術です。
PWAを導入することで表示速度やUI、UX領域での改善が見込めるため、SEO対策にも直接的に繋がります。
コアウェブバイタルが導入され、2021年以降にはユーザー体験が指標として重要になります。また、Webサービスの利用は今後もますます発展していくことになり、ユーザー自身も高いクオリティのUIに慣れ、従来のWebサイトではそれだけでストレスになる可能性も考えられます。
エンゲージメントの向上、ユーザー満足度の向上はSEOの視点から見ても重要になるため、PWAについて理解を深めておくことは次世代のSEO対策には必要不可欠であると思われます。
【PWA導入のメリット】
①PWAサイトを1つ作ればすべてのデバイスで使える
②アプリに比べてインストールのハードルが低い
③ページの読み込みが速くなる
④プッシュ通知が使える
⑤ホーム画面にインストール可能
⑥閲覧時のストレスがない
⑦アップデート不要
⑧スムーズに公開が可能
⑨ユーザビリティの向上
⑩オフラインでも使用可能
PWAサイトはアプリと異なりアプリストアでは表示されないため、利用してもらうために集客をするWebサイトそのもののSEO対策やWeb広告による集客、SNSの活用が必須となります。
「PWA導入=SEOに強くなる」わけではないため注意が必要です。
■ローカルSEO
ローカルSEOとは「地域性が重要なキーワード」のSEO対策を意味し、現在最も注目されているSEO領域の一つで、店舗事業を展開している企業であれば必ず取り組むべき項目です。
検索キーワードが「地名」「施設・店舗名」「店舗や商品の営業ジャンル」「サービス名」など、地域の店舗や施設、サービスに関連があるエリアKWであると検索エンジンが判断した場合、検索画面上部に、ユーザーの位置情報に基づいた店舗や施設、サービスの検索結果が「Googleマップ」「ローカルパック」「ナレッジパネル」として表示されることをローカル検索と呼びます。
このローカル検索に対して最適化し、検索上位に表示させるのを目的とした施策が「ローカルSEO」です。
例えば「ラーメン」「東京タワー」と営業ジャンル、施設名で検索をすると以下のような検索結果になります。
ローカルパックの例
ナレッジパネルの例
ローカルSEOでは「エリアKW」によるローカル検索の結果に対して上位に表示されるように対策をする施策で、近年のSEO業界のトレンドとして注目されています。
ローカルSEOでは検索が上位になることだけが目的ではなく、ユーザーに対して店舗や施設の情報を正しく伝えることも重要となります。
また、地域性が強いこともありローカルSEOは費用対効果が高く、売り上げに直結しやすいという報告も上がっており、実店舗営業をしている事業者は必須の取り組みとなります。
ローカルSEO対策では「Googleマイビジネス」の最適化をすることが重要で、正しい情報、最新の情報を記載することでローカルパックでの露出を目指します。
またWebサイト上でも構造化マークアップを適切に行うことで店舗情報を発信し、最新の情報を伝えることが可能です。
類似の言葉でMEOと呼ばれるものがありますが、これは「Map Engine Optimization(マップエンジン最適化)」の略称でローカルパック領域での上位表示を目指す施策です。
こちらもローカルSEO対策と同等でGoogleマイビジネスを使用します。
筆者は基本「ローカルSEO」という言葉を使いますが、時と場合や文脈に合わせてMEOという言葉を使用しますが原則ローカルSEOの方が広い範囲でのローカル検索対策になるため、ローカルSEOという総称を利用しています。
■テクニカルSEO(内部施策)の重要性
2021年になってもテクニカルSEO(内部施策)の重要度は変わらないことは間違いないと思われます。
内部SEO対策と呼ばれる技術的なSEO対策は一見効果がないように見えますが、テクニカル領域を上手く活用することはWebマーケティング活動において非常に有利に働きます。
特に検索結果で掲載される情報量が増加しつつある昨今においてテクニカル領域を対策することはユーザーとの接点を増やす機会にも繋がるため、目に見えて大きな効果は出ない可能性もありますが、細かい最適化が成果へと導いてくれることも確かなことです。
Googleのジョン・ミューラー氏がSMX Virtualカンファレンスのセッションで話したSEOについてのアドバイスの中でテクニカルSEOの重要性について言及しました。
「技術的に優れている」サイト(ここではテクニカルSEOを想定しています)には利点があります。時にはそれは小さな利点ですが、ニッチによっては利点がもっと大きくなる可能性があります。その利点を得るのは良いことです。ただし、コンテンツが最も重要であることを忘れないでください。それでも、強力な技術的SEOを目指して努力することは良いことです。
ジョン・ミューラー氏はテクニカルなSEO(JavaScript・グローバルサイト・ページネーション・構造化データなど)は難しいので専門的にやるか支援してもらうと良いとアドバイスもしています。
【テクニカルSEO(内部施策)】
・構造化マックアープ
・クローラー対策
・インデックス対策
・JavaScriptの最適化
・他言語対応
・モバイル対応
・ページネーション
・インデックスの制御
・表示速度改善
・URL正規化
・メタタグの最適化
・見出しの最適化
・altタグの最適化
・パンくずリスト
・XMLサイトマップ
・内部リンクビルディング
・サーチコンソールのエラー対策
・ディレクトリ構造の最適化…など
上記のテクニカルSEOは「Webサイトの基盤」として非常に重要な要素なので、2021年も細かくチューニングしていくことはSEO対策として有益になることでしょう。
■ゼロクリックサーチ
SEOにおける課題の一つとして「クリック率の低下」が挙げられます。
これは検索結果に掲載する情報が豪華になると同時に、サイトへ訪問しなくともユーザーの知りたいことを取得できるようになり、結果としてクリックされることなく離脱してしまう動きが生まれました。
検索エンジンの進化により、検索結果をクリックしなくともユーザーが欲しい情報を取得できるように検索結果は拡張しています。
「ローカルパック」や「ナレッジパネル」、「強調スニペット」「リッチスニペット」といったユーザーにとって有益な情報である「店舗情報」「地図」「施設情報」「イベント情報」「人物情報」「検索結果の概要」「ジャンル」「カテゴリー」などを検索結果に表示するようになったことでクリックしなくとも目的を達成できるようになり、検索からの流入数は減少傾向にあります。
Google検索の50%以上がコンテンツをクリックせずに終了していることが判明したと調査結果も報告されており、2021年もゼロクリックサーチはSEO担当者を悩ませる問題かもしれません。
ゼロクリックサーチの問題を受けてSEO対策は「トラフィック重視」へとシフトしており、従来の検索順位を上げることだけが絶対的な目的ではなくなってきました。
闇雲にリーチを広げるのではなく「量が少なくてもニーズが一致する正しい繋がり」に焦点を当てることが重要視され、記事を拡散してくれるサブスクライバーへとリーチを伸ばすことが次世代のSEO対策の要となります。
サブスクライバー(Subscriber):加入者、購読者、寄付者、出資者、申込者、同意者を指す。コンテンツの存在を広めてくれる存在。
次世代のSEO対策はGoogle Discoverやウェブストーリーといった新しい接点を有効的に活用することが重要な要素となり、ますますSEO担当者の対応領域は拡大することになりました。
■Google Discover
Google Discoverとは、Googleサービスを利用したときの検索履歴や現在地情報、デバイス情報、行動データ、Googleアカウントに保存されたデータなどの個人データをもとに、興味関心のあると想定されるWebコンテンツを検索なしで表示してくれるGoogleアプリ専用の機能のことです。
2018年より実装された機能で、Discoverに掲載されたコンテンツは瞬間的に流入数が急増する傾向にあることから「Google砲」と称され、新たなユーザーとの接点として重要視されています。
Google DiscoverではSEOとの関連性が高いことから、高度なSEO対策として活用されてきました。
ユーザーにとって興味関心度合いの高いコンテンツを表示するGoogle Discoverでは、表示するコンテンツを決める際に、インデックスされたコンテンツとアルゴリズムを照合して、ユーザーがより興味関心を引く高品質コンテンツを優先的にランク付けして表示をします。
SEO対策ではユーザーのニーズを満たす高品質なコンテンツの作成が必要不可欠です。そのため、SEO対策を行うことはGoogle Discoverでの表示機会を増やすことに直結します。
Google Discoverを意図的に狙って表示させることはできないため「Google Discover最適化」は難しいですが、質の高いコンテンツを作成する副次的な要素でGoogle Discoverへの表示が行われるようにSEO対策をすることが望ましいでしょう。
■ウェブストーリー
ウェブストーリーは、動画、音声、画像、アニメーション、テキストを融合して動的な消費体験を創造する、一般的な「ストーリー」形式のWebバージョンです。(Instagramのストーリーのようなもの)
2018年2月に、Googleは「AMPストーリー」と呼ばれる技術を発表しました。AMPストーリーはテキストがメインのWeb検索に視覚的な要素で検索結果を閲覧できるモバイル体験の向上を目的に開発され、新たなSEO対策として注目されました。
2020年にAMPストーリーから名称がウェブストーリーへと変わり、AMP以外のサイトでもWeb上でストーリーが提供できるようになったことで、どのサイトでもストーリーを導入できるようになったのが特徴です。
ウェブストーリーは主に次の 5 つのパターンで Google の検索結果に表示されます。
・単一のモバイル検索結果
・グリッドビュー
・カルーセル
・画像検索
・Discover
モバイル検索が主流のSEO業界ではウェブストーリーはSEO対策として取り組む価値がある領域です。
2020年秋にWebストーリーを作成するWordPress公式プラグインをGoogleが正式公開したこともあり、2021年では本格的にウェブストーリーが重要視される年になると思われます。
■検索セントラル
サイト管理のための情報を提供するポータルサイトであった『Google Webmaster Central(Google ウェブマスター セントラル)』が『Google Search Central(Google 検索セントラル)』へ名称が変更されました。
名称変更に伴い、ウェブマスターセントラルに置かれていたコンテンツも整理整頓され、アクセスしやすいサイト構造へリニューアルされたため、SEO担当者の悩みに寄り添った形で情報提供をしてくれます。
名称が変わった理由として「Webmaster(ウェブマスター)」と名乗る人が少なくなってきたというのがあり、それに代わる新しい名称に変更することになったという背景があります。
しかし、Webmasterに代わる名称が中々見つからずに難航していた中で、以下のような理由で「Google 検索セントラル」に名称が決定したそうです。
Google 検索という話題のトピックによりフォーカスするために、ウェブサイトとソーシャル メディアの両方で使用している「Google ウェブマスター セントラル」という名称を「Google 検索セントラル」に変更します
リニューアルにより利便性が増し、今まで探しにくかったテクニカルな情報にもたどり着きやすくなったため、SEO担当者のみならずコーダーやアナリスト、広告運用担当者でも利用しやすくなったのではないでしょうか?
まとめ:次世代のSEO対策
SEO対策は以前の「ユーザーとの接点拡大のため、検索順位で上位を目指すため手法」という役割から「検索行動の中でユーザーに最適な情報を提供する体験をもたらす手法」へと役割が変化していきました。
次世代のSEO対策では「大量生産されたコンテンツ」や「他のサイトと内容の変わらない類似コンテンツ」などは淘汰され、「ユーザーのニーズを満たす質の高いコンテンツ」が重要視されていきます。
また、一部のユーザー体験(UX)も計測可能な数値として正式に指標となったことで、テクニカルな領域がより拡大し、SEO担当者が身につけるべきスキルの範囲はかなり広くなりました。
Webサイトの基本的な構造はもちろんのこと、ユーザーニーズの調査及び企画力、定量分析と定性分析による問題発見能力、SNSのような別チャネルの知見、HTML・CSS・JavaScriptのようなエンジニア領域、適切な情報を提供するための情報設計力などその範囲は多岐に渡り、1人では抱えきれないほど広範囲となります。
「検索順位が上位であれば流入数が増え、売り上げが伸びる」とも言いにくい状態になり、検索順位を上げることがWebマーケティング活動の中で効果的であるわけではなくなりました。
より複雑化し高度になってくSEO対策ですが、不変的な部分もあります。
それは「ユーザーファースト」であること、「質の高いコンテンツを誠実に提供し続けること」です。
Web常におけるユーザー行動は「検索」だけではなくなり、様々なチャネルから接点を持つようになりました。
SEO担当者は「検索」という行動をするユーザーにとって最適な回答を提供できるコンテンツを意識し、そのコンテンツを提供するための「おもてなし」をいかに充実させるかが大切です。
おまけ:SEO担当者が読んでおきたい書籍紹介
最後にSEO担当者及びWebマーケターの方が次世代のWebマーケティング活動をするにあたって読んでおくと便利な書籍を紹介します。
2015年に発刊された書籍ですが、SEOの普遍的な要素を解説しているため、2021年現在では6年ほど経過しましたが、今でも通用する考え方が学べます。
SEOのみならずWeb業界はトレンドの変化が早く、流行り廃れに振り回されてしまうことは多いです。
変わらない「考え方」を基盤に置いておけば、トレンドに振り回されることもありません。
■沈黙のWebマーケティング —Webマーケッター ボーンの逆襲—
駆け出しのWebマーケターなら読んで損はない一冊で、私も大変お世話になりました。
物語形式なので読みやすく、要点はしっかりと解説してくれるのでベテランのマーケターでも役に立つ一冊だと思います。SEO担当者の場合、顧客や社内への説明をする時の言い回しなどでもヒントがもらえる一冊です。
アップデートされたこともあり、内容も最新のものに更新されているため過去に読んだことがある方も手に取ってみてはいかがでしょうか?
■沈黙のWebライティング —Webマーケッター ボーンの激闘—
沈黙のWebマーケティングシリーズの続編でWebライティングに特化した一冊。
SEOライティングを行うライターはもちろん、個人ブロガーやアフィリエイターの方も一読の価値のある本で、ライティングの奥深さを学ぶことができます。
「質の高いコンテンツとは何か」という問いかけに対して、一つの答えを教えてくれる書籍です。
本書ではテクニカルSEOについて実装フェーズで学ぶことができる参考書です。
概念で説明をすることが多いSEOに関する書籍で、具体的な導入方法まで解説してくれる書籍は少なく、本書はコーダーはもちろんのこと、SEO担当者も知識を深める上で必読書です。
構造化マークアップや正規化など押さえておかなければいけない技術的な部分も解説してくれているので、手元に置いておきたい一冊です。
■いちばんやさしいスマートフォンSEOの教本 人気講師が教える検索に強いスマホサイトの作り方
モバイルに特化した「いちばんやさしいシリーズ」のスマートフォンSEO版。「いちばんやさしい」と冠につけてますが非常に本格的な一冊なので読む価値は大いにあります。
特にモバイル領域は次世代のSEO対策では必須項目となるため、必ず押さえておきたいところです。
アドテクノロジーはSEO担当者には一見関係のない領域に思われますが、広告とSEOの関係は切っても切り離せません。
本書はアドテクノロジーの歴史から実践まで学べる一冊で、知識として押さえておくことで広い視点でSEO対策が可能になります。
■現場のプロがやさしく書いたWebサイトの分析・改善の教科書
SEO担当者にとって「分析・改善」は切っても切り離せない最重要スキルです。本書はサイトのタイプ別に分析する際のポイントを解説してくれているので、様々な形態のサイトを担当するSEOコンサルを行っている方は手元に置いておく価値があると思います。
分析は苦手という方もいると思いますが、本書は要点を解説してくれるので分析が不慣れな方でも「どこを見るのか」が理解できるため数値を見やすくなると思います。
■2万回のA/Bテストからわかった 支持されるWebデザイン事例集
SEO担当者には「デザイン」は必要ないと思いがちですが、集客したユーザーが目標を達成するための設計もSEO担当者には重要なスキルです。
本書は2つのデザインから効果の大きかったものをクイズ形式で出題し、解説してくれる内容で、デザインを見る目を鍛えることができます。
ユーザー体験が重要視される次世代のSEOでは数値化の難しいデザイン領域も知識だけでもカバーしておくことで質の高い改善パフォーマンスを行うことができること間違いなしです。
■BtoBウェブマーケティングの新しい教科書 営業力を飛躍させる戦略と実践
BtoBのWebマーケティングは非常に難しいと言われていますが本書はBtoB領域でいかにしてWebマーケティングを行っていくかを解説してくれています。
ネットワークドメインを活用したGoogleアナリティクスでの分析は2021年現在行えないため、一部利用できない解説部分もありますが、それを差し引いても本書は非常に有益な情報を教えてくれます。
【パーソナルデータ】
名前:Uto a.k.a. ペイントペインゆらめき
職業:Webマーケティングコンサルタント
趣味:サウナ、アート鑑賞、一人旅、音楽Dig
特技:和太鼓、フットワークの軽さ
【連絡先】
メールアドレス:yy.edih.xx@gmail.com
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