「コントが始まる」が刺さりすぎて涙が止まらない
『コントが始まる』は、2021年4月17日から6月19日まで日本テレビ系「土曜ドラマ」で放送されたテレビドラマ。
高岩春斗(菅田将暉)、美濃輪潤平(仲野太賀)、朝吹瞬太(神木隆之介)の3人からなるお笑いトリオ「マクベス」とマクベスのファンである中浜里穂子(有村架純)と妹の中浜つむぎ(古川琴子)を中心に描かれる5人の若者の生き様を描いた群像劇。
このドラマは「売れない芸人マクベスが売れるための物語」ではなく、「解散まで物語」です。
物語を通じて「人生という物語」「些細なきっかけが人生を動かす」「青春の終わり」「人と人の繋がり」を感じさせ、遠回りをすることは『悪いことじゃない』というメッセージを受け取り涙が止まりませんでした。
普段テレビドラマを見ない私が、何気なく見始めたマクベスの物語。ドラマが進む度に同年代の若者が人生の苦しみ、現実を見ることの辛さ、未来への絶望を感じ、足掻きながら終わりへと向かっていく姿を見て自分とシンクロさせていました。
春斗の「俺には何もない」という苦しみに自分と重ね合わせて同じく胸を痛めた。
潤平の「周りとの格差」に悩み、頼みの綱だった実家を継ぐことも上手くいかず足掻く姿に、同調し、深くため息をついた。
瞬太の「死生観」は遠い昔に私も同じような感情を抱き、苦しんだことを思い出した。春斗の何気ない一言が瞬太を救い、つむぎの優しさに生きる道を見つけた姿に涙した。
青春の終わりとは呆気なく、儚く、輝かしいもので、私も青春の終わりを感じることが何度も何度もありました。
「青春(コント)の終わり」と「人生(コント)の始まり」の物語に私の心は掻き乱され、そして勇気を貰えました。
ありがとうマクベス…!
ファンという存在
「コントが始まる」がよくある恋愛ドラマやご都合主義なストリートにならなくて本当に良かったと思います。
中浜さんは最後まで「ファン」として終わったこと。
マクベスが「奇跡的に売れる」という展開が無かったこと。
春斗と中浜さんが付き合うという展開が無かったのは本当に素晴らしいと思うばかり…
そう、中浜さんにとってマクベスは生きる糧であり、マクベスにとっても中浜さんというファンは生きる糧で、そこに「恋愛感情」は野暮なんですよ。
そこを描かれてたら私はこのドラマを酷評していたと思うし、作中でも中浜さんのファンとしての姿勢がしっかり描かれていたのは素晴らしかったです。
「何気なく使い始めたのに、いつのまにか手放せなくなったタオルケット」とマクベスを表現するシーンは特に尊くて美しかった。そう、ファンになる時って「何気なく始めたこと」で、気づけば愛着が湧いて、無いと落ち着かなくなってしまうぐらい心の中心にいるんですよ。
私は「ファンになる側」の人間ですが、この心理が非常によく分かるのでグッときてしまいました。
「些細な出来事が自分の人生を変えることがある」
「人生はコント」と大袈裟なことは言いませんが、コントのように小さな出来事が膨れ上がって大きな出来事になっていく連続が人生だなぁ…とドラマを通して感じました。
タイトルの「コントが始まる」の『コント』は『人生』の比喩だったことがドラマ最終回のラストシーンで判明したのも素晴らしかったですね。
「人生の中にある小さな伏線が後に回収されて点と点が繋がる時がある」というのも彼らの物語を通じて再認識し、行動を起こし、次に進んだ時、また新しく『コント』が始まることに気付かされました。
マクベスに出会えて本当に良かった。
私も私のコントを始めようと思います。