バックパックで一人旅 『タイ編』|Part1「異国の地を一人無計画で訪れる」
2017年9月20日、私は新卒で入社した会社を退職した。
退職理由は「自信喪失」
退職を決めるまでの期間は現実逃避のために酒を毎日飲み、半ば自暴自棄にも近い状態だった。今思えば軽度の鬱だったのかもしれない。仕事から逃げる自分への軽蔑。自分が社会人に向いていないのではないかという焦り。
当時25歳だった私は働くことへの自信を失い、消えてしまいたいと思っていた。
精神的な限界から7月に退職の旨を伝え、9月に退職することが決まった。
「これで終わりだ」
人生とは常に今が今が一番若い。それと同時に今が一番辛く、今が一番しんどいのだ。今振り返れば仕事を辞めることなど「苦しさの頂点」ではないと思えることも、当時の自分にとっては先の見えない恐怖に打ち拉がれそうな出来事だった。
未来への不安が募るある休日にふとパスポートを更新していないことを思い出した。
導かれる様にパスポートを更新しにパスポートセンターへ向かい手続きを進めていくうちに、せっかくパスポートを取得するのだから海外に行ってみたい気持ちがふつふつと湧き出してきた。そしてその日のうちに私はタイへの片道切符を購入をした。
出発日は仕事を辞める日の3日後。
私にとって最初の一人旅が始まろうとしていた。
旅の支度
危険を冒せ。人生はすべてチャンスだ。
ふつう、一番遠くまでたどり着く者は大胆に行動する意欲のある人だ。
デール・カーネギー(1835年11月25日 – 1919年8月11日)
私は英語を喋ることはできない。
どれぐらい喋れないかというと自己紹介もギリギリだ。
小文字のbとdを間違えるレベルで英語のテストは万年赤点。
それでもなんとかなると思ったのはタイは公用語がタイ語であるから。タイ語ならもう根本的に分からないし、全然理解できないだろうから逆に大丈夫と思った。
今思えば無謀だけど、それでも当時の自分には「行ける」と思った謎の根拠だった。結果的に私の感は当たったし、タイで友達もできた。
言葉の壁などそんなものなのだ。
また、私はWi-Fiを契約しなかった。
正確には契約するということを忘れていて現地についてから「まぁ、なくても生きていけるだろう」と謎の自信からインターネットともおさらばした。
これも結果的には「よかった」と思えることだけど、今思えば初めての海外一人旅で言語も喋れない+インターネットも無い状態でよく飛び込んだなと思う。
荷物はもちろんバックパック。バックパッカーに憧れたのだからここは外せない。ただし貧乏旅行なのでサイズは機内に持ち込める様に小さめ。
中には着替えとタオル、シャンプーやボディソープ、あとトイレットペーパーを入れた。事前に仕入れた情報のほとんどは役に立たなかったけど、トイレットペーパーだけは救われたので、今でも一人旅をするときはトイレットペーパーだけは持っていく様にしている。
そしてカメラを持って準備完了。
後はタイに行くだけだ。
※これから乗車する飛行機を眺める時の一枚
タイに降り立つ
見知らぬ街で自分が孤独だと気づけることは、世界で最も歓喜することのひとつである
フレヤ・スターク(1893年1月31日 – 1993年3月9日)
飛行機の空から見下ろす
私が降りた空港はタイの首都バンコクにあるドンムアン空港。
あの時感じた高揚感は後にも先にもあの瞬間だけの特別なものだと今でも思う。
舞い上がる気持ちと自然に溢れる笑み。ポケットWi-Fiは借りずに現地のフリーWi-Fiとガイドブックのみを頼りに行動をしなければいけない恐怖感。そして異国の地に自分が一人でいるという特別すぎる環境。
今思えば私が一人旅に魅了されたのはこの「興奮」をまた味わいたいからなのかもしれない。
旅客ターミナルの2階から道案内表示に従って歩道橋を渡ると国鉄ドンムアン駅へ向かう時、初めて外の空気を吸った。
クーラーが効いていた空港内からムワッと蒸し暑い外へと足を踏み入れたあの瞬間に私は改めて自分の一人旅が始まったのだと意識をした。
※国鉄ドンムアン駅へ向かう歩道橋の上より撮影
今でも写真を見る度にあの時のワクワクを思いだす。
「切符は買えるだろうか?」
「ちゃんとバンコクまでいけるだろうか?」
「いきなり騙されたりしないだろうか?」
そんな不安を忘れさせるほど異国の地に一人で来たという達成感に酔いしれていたし、これから始まる旅への期待値でマイナスな気持ちはどこかへ消えてしまった。
時刻は朝の7時。
歩道橋下にある学校への登校はすでに始まっていたし、路上には売店があり、学校へ通う生徒や送迎そしている親御さんがバナナや水を購入していた。
バイクが行き交い、朝から活気に満ち溢れていた。
※歩道橋下の学校前より撮影
「生活」を目の当たりにして私は自分が異国へと来たことを再度認識し、自分にとって今目の前で起きている「非日常」のような「日常」の景色の中、私は駅へと歩み出した。
空港から駅へ向かう道のりは20分にも満たない僅かな時間であったが、非常に濃厚で、一気に自分がタイにいるのだと思わせてくれた瞬間であった。
続く。