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本当に面白い小説を5冊紹介します!

私が本当に面白いと思う小説を5冊紹介します! ネタバレなしです。
ジャンルはそれぞれ上から、ややビターな就活青春小説、SF&ミステリ要素のある恋愛小説、メッセージ性の強いSF、本格ミステリ、哲学系の議論小説(?)です。


一番好きな小説を挙げるなら、やっぱり「何者」は外せません。
就活の対策に集まる5人の大学生たち。しかし会話やツイッター、面接の中で発する言葉の奥に本音や自意識が見え隠れして……というストーリー。
この作品は、SNS時代の若者なら誰しも避けては通れない人間関係の嫌な部分を、うんざりするくらい丁寧に描いています。それでいて文体は非常にシンプルで描写も実にスマートなので、スラスラ読めちゃうんですよね。皮肉っぽい言い回しも少なくありませんが、それが重くなり過ぎないように配慮された文章だと思います。
そして何よりプロットが巧みすぎる。ネタバレを避けるために多くは語りませんが、物語の空気が一変するあのシーンを読むと、この小説が秘めていた恐るべきパワーに圧倒されると思います。起承転結の「起承」でめちゃくちゃ面白かったのに、その上こんな「転結」まで用意されたら、そりゃイチオシとして挙げざるを得ません。今すぐ読んでください。


ウェブ発の小説「三日間の幸福」で有名な三秋縋さんの作品。個人的には、三秋縋さんの作品の中では「君の話」が最高傑作だと思っています。
記憶改変技術が開発された世界で、主人公の青年は手違いから「青春時代、自分にとって理想的な幼馴染の女の子がいた」という偽りの記憶を脳内に植え付けられてしまいます。生活の中でことあるごとにその美しい幻の記憶がフラッシュバックして苦悩する主人公。しかしある日、存在するはずのない幼馴染の女の子が主人公の前に現れて……というストーリー。
記憶を植え付けるというSFの設定、偽りの記憶の中の人物が実際に現れるというミステリの設定、この設定が物語中ずっと効いてくるんですよね。だから続きが気になってどんどん読み進めてしまう。読み進めていって「この話はどこに着地するの……?」と思っていたら、それはもう見事に着地します。
この作品はこの設定であることに強烈な必然性があるし、ある意味世間一般でウケている恋愛作品へのカウンターとしても捉えられると思います。王道的な恋愛の描き方に欺瞞を感じてしまうような人にこそ、この作品をオススメしたいです。文章もとっても洗練されていて美しいので、まず間違いない読書体験が出来ると思います。


ハーモニーは既に作品の文章を紹介したり参考図書を並べたりしているので追加で書くことはあまりないです。
この作品を読む上で改めて分かりやすいガイドラインを提示しておくなら、「テクノロジーが社会規範と結びつく危うさ」といったところでしょうか。この作品を単純に「テクノロジー批判」の文脈で捉えてしまうと、物語の解像度が低くなってしまうと思います。
現代社会から未来を見通し、人間らしさとは何かを再考させてくれる、国内SFの大傑作です。


主人公は被害者の兄。復讐に燃える主人公は、刑事に先んじて殺人の容疑者を二人に絞り込みます。証拠品と容疑者との会話劇の中に事件のヒントが散りばめられていますが、どれも決め手に欠けます。ラストシーン付近でようやく主人公は犯人を突き止める決め手を見つけますが、なんとそれが読者に明かされないまま終わるというガチガチの本格ミステリ。(もちろん物語とは別(袋とじ)に核心的なヒントは提示されていますし、ネットで調べれば推理の手引きが詳細に解説されているので安心してください。)
この作品、本格ミステリとして一流なのはもちろん、当然のように面白さも一流なんですよね。主人公は犯人を追い詰める立場であると同時に、刑事に追い詰められる立場でもあるという、非常にスリリングな設定。刑事と主人公、容疑者と主人公が対峙したときの会話による心理戦。そして一歩一歩確実に真実に迫っていくワクワク感。フェアであることと面白いことを両立した作品です。


こちらは昨年紹介記事を書いたので、そちらを読んでいただけると嬉しいです。知的な議論や思考実験が好きな人はまず好きな作品だと思います。
紹介記事にも似たようなことを書きましたが、この作品を読むと「自分が思い付きもしなかったような鋭い意見が聞けて、とても嬉しい」みたいな、不思議な高揚感が生じてくるんですよね。こういう種類の清々しさを小説で感じられるとは思っていなかったので、深く心に残っています。
議論の難解さ、生々しさを軽減するファンタジックな世界観も妙にハマっていて好きです。年に1回は読み返したくなる作品です。

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